【大介兄貴が逢いたい‼】北川大介×神野美伽(4)
大介兄貴が逢いたい!!
神野美伽×北川大介
神野美伽さんは無理していた時期があったと告白されます。でも、いろんなことがあって、ひとりで頑張ってもダメだと気づいたんだそうです。他力本願の本当の意味を知った人は強いですよね。大介兄貴はますます神野先輩のことを「尊敬しました」と言います。
文=川原田剛
◎結婚も離婚も病気も、すべてが歌につながっていった。・・・神野美伽
北川 先輩は歌に関していろんな顔を持っています。艶っぽい演歌や唸り節を披露したかと思ったら、ジャズやロックテイストの曲まで歌います。歌手として、そこまでいろんな歌を歌いこなす人はいないと思います。美空ひばりさんぐらいじゃないですか?
神野 ありがとうございます(笑)。いろんなことを経験してきて、今は自分のことも、自分の歌もようやく楽しめるようになったんだよね。自分が楽しんでいることをお客さんも楽しんでくれる。これが理想だよね。最初にあなたに「(人懐っこくで、物おじしないのは)本当の自分? 無理してないよね」と聞いたのは、どっか無理して、苦しみながら演じているのを見るのはしんどいから。
北川 楽しそうな人を見ていると楽しくなる。緊張している人の歌を聞いていると見ている人も緊張する。そういうことですよね
神野 そうね。私自身もかなり無理をしていた時期があったから。今振り返ると、一緒にいて楽しい女性じゃなかったと思う。私は3人姉妹の長女だったから、結構、頑張って生きてきた。父と母が離婚したり、いろんなことがあった家庭だったりしたので、妹たちに弱いところや不安がっている姿を見せられなかった。ずっと頼もしいお姉ちゃんでなければならなかったから、そんな気持ちが、20代や30代は強かったかもしれない。でも、今は妹の前でも平気でオロオロしちゃう(笑)。それに自分で会社を持って、責任者であり、歌手でもあるという立場になった。以前の自分だったら社員を不安がらせたくないと思って、ひとりで頑張っていたと思う。でも、今は周りのスタッフや家族に頼っています。
北川 何がきっかけで、そんなに劇的に変われたのですか?
神野 やっぱり病気がきっかけかな。今年の3月に頸椎化膿性脊椎炎(けいついかのうせいせきついえん)のため手術を受けましたが、その前の年には両足の甲の骨に穴が開き、手術を受けた。どうやら先天的に骨が弱いみたい。プロの歌手になってから6回も大きな手術を受けているの。病気になったのは嫌でしたが、「ひとりで頑張っても誰もついてきてくれないよ」と神様が言ってくれているのかなって感じる。手術直後は物が落ちても何も拾えない、自分ひとりで起きることもできない、髪も洗えない。そういうのを何度か経験すると、もういい加減に変わらないとダメだと気づかされたのよね。
北川 若い頃はどんな気持ちで歌っておられたのですか?
神野 20代、30代の頃は、なんで歌手になったのかと自問していたの。向いていない仕事だから、どうやったらやめられるのかと、ずっと思っていた。本当に毎日が苦しかった。コミュニケーションをとるのもすごく下手だったし、人と話すこと、取材が一番嫌でしたね。
北川 今はこんなに話すのに!?
神野 今は人と話すのがすごく好き。でも、以前は人と話すのが苦手だった。私は10歳の時に、たまたま私の歌を聴いた大手プロダクションの方にスカウトされたけど、別に歌手になりたいわけではなかった。だからずっと断って逃げていたけど、そのスカウトの方がある日、帰り際に「誰が好きなの?」と聞いてきたので、「岩崎宏美さん」と答えたら、「宏美はうちの事務所だから会わせるよ」って。
北川 それがきっかけで事務所に入ることになったんですか?
神野 そう。でも、岩崎宏美さんのような歌手になれるんだと思っていたら、フタを開けてみたら演歌だった。だから、若い頃は自分のやりたいことと実力のギャップに悩んで葛藤し続けた。なんでもっと売れないんだろう、もっと認められないんだろうとか、人のせいにしてみたり、人と比べてみたり、それでどんどん自分を潰してしまった。
北川 世間一般には、神野美伽さんは明るくてパワフルというイメージがあります。でも内面ではつらいことがたくさんあったんですね。
神野 歌をやめたいけど、私の生業はこれしか知らない。それに自分がやめたら母や妹たちの生活が立ち行かなくなる……。そう考えると、やめたくてもやめられなかった。なんで私はみんなのために歌わなければならないんだろうと、ずっと思っていた。でも、そんな気持ちで歌っている人の曲を誰も心地よく感じないし、売れるわけがないよね。たまたま「男船」(1985年)は売れたけど、そのあとは苦しくて苦しくて。そういう時に、(荒木)とよひさ先生と知り合って、結婚することになった。「これで演歌界から堂々とフェードアウトできる。やっと歌わなくてもいい」と思った。でも、結婚してしばらくしたら、歌わないことがこんなにも悲しいことだと気がついた。
北川 それでどうしたんですか?
神野 とよひさ先生に謝ったの。「どうしても歌をやめられません。私の歌を子どもだと思って一緒に育てませんか」と生意気なことを言ってしまって(笑)。
北川 カッコいいですね(笑)。先輩らしいです。
神野 「子どもがほしいので仕事をやめます」って私が言うので、とよひさ先生は喜んでいてくれたのに、「歌を私たちの子どもだと思って、どこまで私が伸びるのか一緒にやってみませんか」と言ったんだから(笑)。でも、とよひさ先生は予想していたみたいで、「そう言うと思っていたよ」って。
北川 いろいろあったんですね。
神野 そうね。でも振り返ると、すべてが歌につながっている。結婚も離婚も病気も、私が歌い続け、生きていくために必要なことだったんだと感じます。いつも楽屋ではふざけてばかりで、こんなに長いことを話したことがなかったけど、私が話した中で何か、これはいいなあと思ってもらえたらうれしいです。
北川 本当にためになりましたし、今日お話させていただき、あらためて先輩への尊敬の気持ちが強くなりました。こんなにカッコいい先輩はいないと思います。これからも背中を追いかけさせていただきます!
大介兄貴が逢いたい!!「神野美伽」①
大介兄貴が逢いたい!!「神野美伽」②
大介兄貴が逢いたい!!「神野美伽」③
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【連載】大介兄貴が逢いたい!「橋 幸夫」
2020年9月23日発売
大人の恋心を描くバラード
神野美伽「泣き上手」
神野美伽のシングル作品としては初めてのタッグとなる松井五郎氏と都志見 隆氏による意欲作。哀愁と温かみにあふれたラブソングで、「泣くのは上手さ 泣くのは平気さ」という歌詞が何度も登場する大人の恋心を描いたバラードとなっている。
「新曲の作詞は松井(五郎)先生にお願いしました。カップリングの「こころに灯す火があれば」は具体的にこんなふうにしてほしいとイメージを伝えましたが、新曲の「泣き上手」と「どうしてますか」は、100%、松井先生が閃いて書いてくださった曲です。松井先生と私は同世代です。仕事をご一緒するうえで、自分のことを理解してほしいという気持ちもあったので、いろいろとメールをさせていただき、今、自分が不安に思っていることや、こんなふうに生きていきたいという思いを伝えさせていただきました。それを松井先生が作品にしてくださいました」(神野)
【プロモーションビデオ】神野美伽『泣き上手』
キングレコード公式【インタビュー】神野美伽「泣き上手」
泣き上手~Piano Version~
2020年10月7日発売
「神野美伽全曲集2021」
【収録曲】泣き上手/男船/春夏秋冬屋形船/酔守唄/浮雲ふたり/男の海峡/帰れないんだよ/若狭の女/鴎を売る女/みさお酒/黒髪/おんなの波止場/愛のワルツ/冬の月/男節/あんたの大阪
Profile
神野美伽(しんの・みか)
1965年、大阪府生まれ。1977年、「東西対抗チビッコ歌まね大賞」(テレビ東京)に出演したことがきっかけでスカウトされ、1984年、高校卒業を待って「カモメお前なら」でデビュー。作曲家の市川昭介に師事し、デビュー3作目の「男船」(1985年)が大ヒット。1987年に「浪花そだち」で『NHK紅白歌合戦』に初出場。以降、ジャンルにとらわれず、幅広いフィールドで活動。海外でも精力的にライブを行っている。趣味も多彩で、少林寺拳法二段、書道二段、日舞名取(花柳糸美之)、ハングル能力検定3級、小型船舶操縦免許1級などの資格を持つ。
「私は人よりも探求心が旺盛で、やろうと思ったら、すぐにやらないと気が済まない。明日にできない性格なんです。でも、何を挑戦するにしても遅いということはないと思います。私がニューヨークで歌ってみたいと活動し始めたのは48歳の時です。今も必死になって英語を勉強しています。妹にはせっかちすぎる、姉ちゃんと一緒にいると疲れると言われますけどね(笑)」
神野美伽オフィシャルYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCIzN8X2kENyX2mzffq-nUDg/featured
神野美伽B面-MIKA SHINNO side-B-
http://bit.ly/2WN9Fx9
コロナ禍にあって神野美伽はB面side-B-チャンネル内に「お家de音楽会」というコーナーを設置。ピアニストの小原孝氏とのコラボや、R&Bシンガーとのセッションなどを公開している。
2020年10月7日発売
北川大介「星空のツイスト」
北川大介が60’sロカビリー歌謡に初挑戦! これまでのムード歌謡調のソフトな歌謡曲とは打って変わって、60’sを思い出させるツイスト調のライブ感覚のあふれる作品で新たな一面を魅せる。
10月7日発売 北川大介 新曲「星空のツイスト」のジャケット撮影シーンを大公開!
10月7日発売の新曲「星空のツイスト」レコーディング現場に潜入しました【 昭和 の 演歌 歌手 北川大介 の だいちゃんねる 】
2020年9月2日発売
「北川大介全曲集~倖せの隠れ場所・菜七子~」
【収録曲】倖せの隠れ場所/アカシアの女/おまえだけなのさ/前橋ブルース※/男と女/横濱のブルース/水芭蕉/おまえを連れて/横濱の踊り子/横浜ルージュ/菜七子/心の真んなか母がいる/君の住む町で/本当のしあわせ/噂の湘南漁師町/愛をありがとう
(全16曲) ※は新録
profile
北川大介(きたがわ・だいすけ)
1970年9月8日、神奈川県生まれ。1999年、「前橋ブルース」でデビュー。昨年は五木ひろし氏が作曲した「倖せの隠れ場所」をヒットさせた。2020年はYouTubeデビューし、「元気がでる だいちゃんねる」を開設。トークあり、歌唱あり、料理コーナーありと盛りだくさんの内容。また、10月7日に新曲「星空のツイスト」をリリース予定。北川自身、初挑戦となるテイストの作品で、“胸キュン”など、懐かしい流行語が歌詞に散りばめられている。