
吉永加世子、ルーツ“演歌”への回帰と挑戦――師匠・吉幾三も駆けつけたサプライズ満載の「Spring Live 2026」
吉永加世子が3月7日、東京・港区のライブレストラン「六本木バードランド」にて、「吉永加世子 Spring Live 2026」を開催。今年最初のワンマンライブとなる本公演のテーマは、「吉永のルーツ、演歌に挑戦」。デビュー30周年を超え、円熟味を増した吉永が、自身の歌手人生の原点である「演歌」と真っ向から向き合う一夜となった。


春の訪れと、師匠の乱入!?
バックを支えるK.Y-BANDには今年から新たな布陣が敷かれ、なんとドラムスには吉永の実兄であり、石原裕次郎のモノマネでおなじみのタレント・ゆうたろうが参加。「チーム吉永」の結束力がより一層強まる中、ライブは幕を開けた。


ドラムスとしてK.Y-BANDに加入したゆうたろうを紹介する吉永加世子。サービス精神旺盛の兄に、「お兄ちゃん、いま、それやらなくていいから(苦笑)」
ライブ前半は、昨年末にリリースされ好評を博している「紅~べに~」のカップリング曲を中心に構成。「北新地」で大人のスイングを聴かせたかと思えば、瀬戸内を舞台にした「恋から愛へ」では瑞々しい旅情を歌い上げた。さらに「桜の季節を感じる曲も準備させていただきました」と、コブクロの名曲「桜」をカバーし、会場に一足早い春の風を吹き込んだ。


会場が温まった中盤、予期せぬサプライズが起きる。師匠・吉幾三の登場だ。


「本当はWBCが見たかったんだよ!」とボヤき節全開で現れた師匠に、会場は大爆笑。しかしマイクを握れば空気は一変。吉永のリクエストに応え、三好鉄生の「涙をふいて」をカバーすると、その哀愁漂う歌声で観客の心を鷲掴みにし、愛弟子・吉永へとバトンをつないだ。

吉幾三のエピソードトークや”ちん発言”に大爆笑する吉永加世子
ルーツへの回帰――“小林加代子”の記憶

「楽屋で着替えていたら『白衣? じゃなかったら矢沢永吉?』って言われました(笑)」
そう笑いを誘いながら、白のセットアップ姿で再登場した吉永。ここからが本日のハイライト、「演歌コーナー」の幕開けだ。



天童よしみの「珍島物語」、八代亜紀の「もう一度逢いたい」と、多くの歌手にカバーされているだけに、その実力が試される名曲を立て続けに熱唱。さらに坂本冬美の「祝い酒」を歌い終えると、ステージ上の吉永に一本の電話が入る。

電話の相手が坂本冬美だと知り、驚く吉永加世子。
なんと電話の主は、坂本冬美本人。師匠・吉幾三による粋なサプライズだった。「ちょうど今、『祝い酒』を歌わせていただきました」と話す吉永に、坂本は「私よりうまく歌わないでね」と回答。坂本からの激励に、吉永も恐縮しながら喜びを噛み締めていた。
そして会場の空気がスッと静まり返る中、吉永は静かに自身のルーツを語り始めた。
「私にも1曲だけ、『祝い酒』のような演歌の男唄があります。『女の花道』という曲です。アルバム(『デビュー30周年記念ベストアルバム』)にも入っていないので、聴いたことがない人がほとんどだと思います」
それは、1994年に彼女が「小林加代子」としてデビューした際の楽曲「涙の浜千鳥」のカップリング曲だった。

「私は14歳の頃から、弦哲也先生の事務所でお茶汲みなどをしながら修行させていただき、19歳の時に“小林加代子”としてデビューしました。その頃は、テレビでよく拝見する都はるみさん、石川さゆりさん、五木ひろしさんといった大先輩方が、弦先生の元で新曲の打ち合わせをされているのを間近で見ていました」
幼い頃から一流の現場の空気を吸いながら研鑽し、デビューをつかんだ吉永。30年の時を超え、再びその曲と向き合った。
「ふざけんじゃないよ。上手すぎるよ!」
「『女の花道』を歌うのは約30年ぶりです。少し歌い方を忘れてしまいましたが、演歌は年齢を重ねるごとに心に響き、涙がこぼれるような曲が多いと感じます。弦先生の元を離れてから20数年が経ちました。弦先生が生みの親、そして吉幾三師匠が子育ての親だと感じています」


“生みの親”への敬意と、“育ての親”への感謝。二人の偉大な師匠の遺伝子を受け継ぐ吉永が歌う「女の花道」は、30年前とは違う、人生の酸いも甘いも噛み分けた説得力を持って響き渡った。
「演歌を歌うことで気持ちが引き締まり、改めて頑張ろうという気持ちになりました」と語る彼女の目には、新たな決意の光が宿っていた。

その後も石川さゆりの「天城越え」、美空ひばりの「悲しい酒」と演歌の金字塔に挑戦。そしてコーナーの締めくくりは、師匠・吉幾三の名曲「海峡」だ。
歌い終えた吉永が客席の師匠に「いかがでしたか?」と問いかけると、吉からは「ふざけんじゃないよ。上手すぎるよ!」と最大の賛辞が返ってきた。さらに兄・ゆうたろうのドラムに対しても「切れがいい」とべた褒めし、師弟、そして兄妹の絆が会場を和ませた。
ジャンルを超越する“歌の力”と、最新曲「紅~べに~」


終盤は「挑戦」のコーナーへ。今回は手話を交えながら竹内まりやの「いのちの歌」を披露。間奏で見せたオリジナルの手話には、「大切な仲間、皆さんと知り合ったことで、私の宝物ができた」というファンへの感謝のメッセージが込められていた。


さらに、「もう一曲、挑戦曲を聴いてください」と続いたのは、ホイットニー・ヒューストンの「I will always love you」。ド演歌の唸りから一転、圧倒的な声量で洋楽のバラードを歌い上げるその振り幅に度肝を抜かれた。

本編の最後を飾ったのは、最新シングル「紅~べに~」。
師匠・吉幾三が2015年に発表した女唄を継承したこの楽曲は、化粧という女性の日常の所作に、愛と憎しみが交錯する複雑な心模様を重ね合わせたドラマティックな作品だ。


「女が紅をつける時 昔惚れた人を想うの」――。
昭和の香りを残しつつ、現代の女性の情念をも内包したこの曲は、まさに吉永加世子の新たな代表曲。「演歌」というルーツを再確認したこの日のライブだからこそ、その歌声はより一層深く、艶やかに響いた。


アンコールでは、会場である六本木にちなんで「六本木心中」でロックに弾け、ラストは前作の「夜汽車」で客席を練り歩きながらファンと一体になって盛り上がった。

「今年はこのメンバーと走りぬきたいと思っています。次回は夏にお会いしましょう。シティーポップにトライします!」
演歌から洋楽、そして次はシティーポップへ。自身のルーツを大切にしながらも、決してそこに留まることなく進化を続ける吉永加世子だった。
なお、吉永加世子は3月19日、東京・渋谷九のけやきホール(古賀政男記念館)で開催される「第35回 ザ・令和ライブ」に、寺本圭佑、羽山みずき、石原まさしと共に出演する。企画・構成は湯浅 明。歌心にあふれた歌手にスポットを当てたライブイベントだ。

2025年11月12日発売
吉永加世子「紅~べに~」

「紅~べに~」
作詞・作曲/吉幾三 編曲/竹内弘一
c/w「恋から愛へ」
作詞・作曲/吉幾三 編曲/若草恵
c/w「北新地」
作詞・作曲/吉幾三 編曲/野村豊
題字/吉幾三
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91661 1,500(税込)











