【大介兄貴が逢いたい‼】北川大介×橋 幸夫(前編)

大介兄貴が逢いたい!!
橋 幸夫×北川大介

歌手デビュー60周年を迎えた橋 幸夫。「いつまでも輝いている憧れの大先輩」と語る兄貴との対談を前編・後編の2回に渡ってお届け。今回はふたりが熱心に取り組んでいるYouTubeで盛り上がり、礼節、歌唱法についても話題が広がっていく。

 

◎ 礼節を重んじる人は、挫折を乗り越えてきているね。・・・橋 幸夫

北川 僕にとってはブラウン管の中の大スター、橋幸夫先輩です。

 もう十何年だよね、知り合ってから。でも、大介は全然変わらないよな。

北川 それは橋さんです(笑)。しかも今でもラブソングがお似合いになります。

 デビュー60周年の新曲「恋せよカトリーヌ」はラブソングで、演出家のテリー(伊藤)さんが全面プロデュースしてくれ、詞と曲も書いてくれたんです。

北川 聴かせていただきましたが、すごくいい曲ですよね。

 テリーさんからは「若返ってラブソングを歌ってほしい」とリクエストがありましたが、最初は恥ずかしい、と言っていたんだけど、「年齢は関係ない。橋幸夫は恋の伝道師なんだ」ってね(笑)。テリーさんに騙されているような気もするけど、「できますよ! やれますよ!」と言われているうちにその気になってきた(笑)。

北川 先輩と一緒に青春時代を謳歌された世代の方は、先輩の若さと、挑戦していることに感動されていると思います。

 そうだったらうれしいね(笑)。

北川 挑戦といえば、先輩はYouTubeを始めたそうですね。僕は2月から公式チャンネルを開設し、ほぼ毎日10分ぐらいの動画を上げています。

 立派なものだね。僕も「橋幸夫ちゃん!ネル」を始めたところだけど、気軽にできるのがいいところだね。今、テリーさんと企画を考えているけど、面白い動画をどんどんアップしていくつもりだよ。

北川 チャンネル登録しておきますね(笑)。

 当たり前だろう、頼むよ(笑)。

北川 YouTubeを観ている方は、出演者の素の姿を楽しんでいるところがあると思います。

 逆に言えば、素がちゃんとしてないとダメということだよな。大介は20年以上も活動していきているから、これから男としての生き様を問われると思うよ。

北川 だからこそ先輩にお聞きしたいのですが、60年間の歌手生活で大切にされてきたことは何だったのでしょう?

 いろいろあるけれど、礼節だよね。昔の芸能界にはちゃんと残っていたんだけど、いまは礼節なんて言葉は古い、陳腐だというのが風潮になっている。先輩を重んじる必要はないんだ、若さがあればいいんだって。でも、スポーツ界にはちゃんと礼節は残っているんだよな。

北川 僕もずっとスポーツをやってきたのでよくわかります。

 節目節目に礼節を感じられる人は、挫折した時にもふっと乗り越えているんです。先輩に相談することもできるしね。でも、礼節を忘れてしまうとどうなるのか。他人のことを軽んじ、相手のことは関係ない、俺は俺で生きているんだ、という利己主義がはびこってしまう。

北川 本来、中堅の自分が継承して、後輩にビシっと伝えるべきことですね。でもキャリアや実績が十分じゃない自分が何を言っても説得力がないというか……。

 ヒット曲が足りないということか?

北川 そうですね。大ヒットがあれば違うかなと。

 それは苦しいよな。そんな時にどうすればいいかといえば、人間の内面を磨いていけばいいんだよ。礼節を言い換えると、人間らしさ。僕はヒット曲が少ないですが、こういう夢や希望があり、こんな生き方をしてきた、という脈々とした人間性があれば、後輩は必ずついてくると思うよ。

北川 ありがたい言葉です。今回、ぜひお聞きしたいことがあったんです。先輩はステージでも崩して歌うことは絶対にしませんが、なぜなんですか?

 崩すと恩師の𠮷田(正)先生に怒られたからね(笑)。先生は「歌はうまくなるな。うますぎると売れなくなる」と教えてくださったんだけど、この言葉を初めて聞いた時は面食らった。矛盾していませんか? とお聞きしたら、違うと。「歌は技巧に走った途端にダメになる。我々は歌曲をやっているんじゃない。それよりも譜面に忠実に歌いなさい」というのが先生の教えだった。これは深く心に留まったね。

北川 先輩の歌を聴けば、その教えを60年間ずっと守り続けてきたことがわかります。そこも尊敬できるところです。

 作家の方が曲をつくる時、この音を短くしようとか長くしようとか、譜割りをちゃんと考えているんだよ。それを自己流で勝手に音を伸ばしたりするのは一番よくないし、聴きづらい。そんな𠮷田先生の教えが身体に染みついているから何回歌っても崩れない。実際、譜面に忠実に歌うと、お客様の耳にきれいに入っていくんだよ。(後編へつづく)

(文=川原田剛 写真=渡辺秀之)
 
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2020年7月1日発売
橋 幸夫 歌手デビュー60周年記念曲
「恋せよカトリーヌ」

「恋せよカトリーヌ」
作詞・作曲/テリー伊藤 編曲/萩田光雄
c/w「この世のおまけ」
作詞/荒木とよひさ 作曲/橋 幸夫 編曲/矢田部 正
「60周年ご挨拶」(橋 幸夫からのメッセージ)
(BGM「潮来笠」 作詞/佐伯孝夫 作曲・編曲:𠮷田 正)

歌手デビュー60周年を迎えた橋 幸夫が、演出家・テリー伊藤氏によるプロデュースで、記念曲「恋せよカトリーヌ」をリリース。テリー氏が作詞・作曲し、「いつまでも、恋をしよう!」をテーマにした世代を超えて心躍る作品。カップリング曲「この世のおまけ」は表題曲とは対照的に、橋と同世代の声を代弁した歌。今に感謝して、あるがままに生きようと訴えている。

 

Profile

橋 幸夫(はし・ゆきお)
1943年5月3日、東京都生まれ。遠藤 実氏と𠮷田 正氏を師匠に持ち、1960年に「潮来笠」でデビュー。「いつでも夢を」「霧氷」で2度のレコード大賞を受賞。さらに「恋のメキシカン・ロック」「子連れ狼」など、数々のヒット曲を出し、日本歌謡界で不動の位置を占める。今年7月に歌手生活60周年を迎える。毎日、声や身体を維持するため、運動だけでなく食生活にも気を付けているという。「食事は野菜中心にして、週に1回ぐらいは肉を食べます。とにかくバランスよく食べることを心掛けています」(橋)。

橋 幸夫 公式YouTubeチャンネル



北川大介
(きたがわ・だいすけ)
1970年9月8日、神奈川県生まれ。1999年、「前橋ブルース」でデビュー。昨年は五木ひろし氏が作曲した「倖せの隠れ場所」をヒットさせた。2020年はYouTubeデビューし、「元気がでる だいちゃんねる」を開設。トークあり、歌唱あり、料理コーナーありと盛りだくさんの内容。また、この秋に新曲「星空のツイスト」をリリース予定。北川自身、初挑戦となるテイストの作品で、”胸キュン”など、懐かしい流行語が歌詞に散りばめられているという。

 

 
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