【大介兄貴が逢いたい‼】北川大介×橋 幸夫(後編)

大介兄貴が逢いたい!!
橋 幸夫×北川大介

デビュー60周年を迎えた演歌・歌謡界の大先輩、橋幸夫を招いてのスペシャル対談。前編では最近ふたりが力を入れているYouTubeで盛り上がったが、後編は兄貴がぜひ聞きたかったという“御三家”の話題から始まり、橋の素顔にも迫っていく

 

◎「好きな歌を歌いたい」という気持ちが大事だね・・・橋 幸夫

北川 先輩にとって、舟木一夫さんと西郷輝彦さんとの御三家”は、今では歴史の1ページという感じなのですか?

 そうだね。当時はプロダクションがすごくがんばっている時代で、レコード会社の戦いもあった。そんな時代に、三人の中では、僕がいちばん先にデビューしていたんだよ。舟木が日本コロンビアからデビューしたのは僕の3年後(1963年)。で、舟木に対抗するように、翌年の1964年に西郷がクラウンから出てきて、(僕の所属する)ビクターも三田明をデビューさせたんです。当初は舟木、西郷、三田で”御三家”を構成するはずだったけど、(当時の)マネージャーが「橋をのぞいて何が御三家だ、橋はいちばんの先輩なんだぞ!」と奮闘してくれた。それで僕が入ることになったけど、当時はあまり、個人的に話をすることはなかったね。

北川 みんな仲良く切磋琢磨して、という感じではなかったんですね。

 そうだね。僕はふたりを弟分だと思っていたんだけど、向こうにとって僕はライバルだから。絶対に橋を倒せ、と会社から言われていた。でも、長い年月を経て、また3人でステージをやることになって、1999年から2000年にかけて北海道から九州まで全国を縦断し、100カ所以上の公演をしました。その時は、夜にはみんなで食事をして、いろいろ話しましたね。

北川 若い頃はいろいろありますよね。僕も「イケメン3」(※)というユニットで活動し、最年長の立場だったので気持ちは少しわかります。ところで、先輩は人生最後の晩餐は何を食べたいですか?

 僕は好き嫌いがないんだよ。ただ、食卓に欠かさなかったのはおしんこかな。おふくろがずっとつくってくれていたので、橋家の家庭の中には染み付いている。夏のきゅうりや白菜の浅漬けがたくさんあって、それに合うようなおかず、最後はお茶をかけてサラっと食べられるようなものがあれば十分だね。

北川 では、好きな言葉はありますか?

 昔は「根性」という言葉が好きだった。特にボクシングをやっていたので、芸能界も根性がないとやっていけないと思っていたから。今、好きな言葉は「夢」かな。僕の歌に「いつでも夢を」というのがあるけど、やっぱり人生では夢を持つことが大事だし、大切だと思う。

北川 言い換えると、欲張りですよね。僕は欲張りという言葉が好きでよく使うのですが、前向きに夢に向かって挑戦していくという意味なんですけど。

 そうだね。それはすごく大事だね。

北川 先輩は日本の歌謡界だけでなく、同世代の方のリーダー的な存在です。だから先輩が輝いて夢に向かって突き進んでいらっしゃる姿がみんなの励みになります。

 そうなら、余計にがんばらないといけないといけないね(笑)。でも、老いとの戦いは大変だよ。

北川 僕たち後輩は、みんな、橋先輩のことが大好きなんですよ。

 そんなこと聞いたことないなあ(笑)。

北川 歌謡界のトップにいらっしゃる橋さんとお会いして、お話しができる機会なんて滅多にないですから。それでも、お会いした時にご挨拶に行くと「おお、元気か。健康を大事にしろよ」とか「がんばっているか」と声をかけてくださいます。

 そんな意識はないんだよね。がんばってほしいから、自然に声が出ているだけなんだけどなあ。

北川 大スターからすごく優しく声をかけていただけるのは、心から励みになります。ぜひ、北川大介にひとことアドバイスをいただければと思います。

 大介は毎回、新曲を出す時はヒットさせたいと思うだろうけど、それは聴くお客さんが決めること。時流があるし、運もある。それに今はヒット曲を出すのが本当に大変な時代だよな。だから考え方を変えて、好きな歌を僕は歌いたいんだという気持ちを大事にしてほしいと思う。「お客さん、気に入ったら応援してくださいね」という軽いノリのほうがいいかもしれない。

北川 昔の苦節何年とか、今の人の心にはあまり響きません。カッコいいことではなくなってしまっています。

 苦労して下積みなんて、もう今の若い人たちの辞書にはないと思う。それが新しい時代というのなら、気楽に歌うのもひとつの手だと思う。でも、礼節を忘れず、歌うという気持ちを大切にして自分らしく生きていけば、必ず大介を好きになる人が増えてくれるから。大丈夫だよ。

北川
 先輩とお話しさせていただき、また励まされました。ありがとうございます!

※北川大介、竹島宏、山内惠介による音楽ユニット。2009年に「恋の摩天楼」をリリース。

(文=川原田 剛 写真=渡辺秀之)

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2020年7月1日発売
橋 幸夫 歌手デビュー60周年記念曲
「恋せよカトリーヌ」

「恋せよカトリーヌ」
作詞・作曲/テリー伊藤 編曲/萩田光雄
c/w「この世のおまけ」
作詞/荒木とよひさ 作曲/橋 幸夫 編曲/矢田部 正
「60周年ご挨拶」(橋 幸夫からのメッセージ)
(BGM「潮来笠」 作詞/佐伯孝夫 作曲・編曲:𠮷田 正)

歌手デビュー60周年を迎えた橋 幸夫が、演出家・テリー伊藤氏によるプロデュースで、記念曲「恋せよカトリーヌ」をリリース。テリー氏が作詞・作曲し、「いつまでも、恋をしよう!」をテーマにした世代を超えて心躍る作品。カップリング曲「この世のおまけ」は表題曲とは対照的に、橋と同世代の声を代弁した歌。今に感謝して、あるがままに生きようと訴えている。


Profile

橋 幸夫(はし・ゆきお)
1943年5月3日、東京都生まれ。遠藤 実氏と𠮷田 正氏を師匠に持ち、1960年に「潮来笠」でデビュー。「いつでも夢を」「霧氷」で2度のレコード大賞を受賞。さらに「恋のメキシカン・ロック」「子連れ狼」など、数々のヒット曲を出し、日本歌謡界で不動の位置を占める。今年7月に歌手生活60周年を迎える。毎日、声や身体を維持するため、運動だけでなく食生活にも気を付けているという。「食事は野菜中心にして、週に1回ぐらいは肉を食べます。とにかくバランスよく食べることを心掛けています」(橋)。

橋 幸夫 公式YouTubeチャンネル



北川大介
(きたがわ・だいすけ)
1970年9月8日、神奈川県生まれ。1999年、「前橋ブルース」でデビュー。昨年は五木ひろし氏が作曲した「倖せの隠れ場所」をヒットさせた。2020年はYouTubeデビューし、「元気がでる だいちゃんねる」を開設。トークあり、歌唱あり、料理コーナーありと盛りだくさんの内容。また、この秋に新曲「星空のツイスト」をリリース予定。北川自身、初挑戦となるテイストの作品で、”胸キュン”など、懐かしい流行語が歌詞に散りばめられているという。

 

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