【連載】師匠と僕 村木 弾 第12回

「演歌巡礼 継承の決意」

巨匠、故・船村徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出の日々を紐解く。全国を唄い歩く「演歌巡礼」。船村先生の負担を考え、内弟子5人はそれを引き継いでいくことを決心した。

 

デビュー1年目の月日は、あっという間に過ぎた。舟木一夫さんのおかげで経験させていただいた大阪一カ月公演を終え帰京した後、日本全国、北から南までテレビ番組やラジオ収録、キャンペーンで各地を回った。

船村 徹先生の元にいた時は、人前で唄うということがそんなに多くはなかった。デビューして、大勢のお客様の前で大好きな歌を唄う機会を与えていただき、”唄う”という喜びが日ごとに大きくなっていくのを感じた。

地方を回ると、その土地土地でお客様も変わる。今まで会ったことのない人たちとの出会いも地方キャンペーンの楽しみのひとつであり、全国各地を旅できるというのも、この職業の魅力だと思う。

先ほど、地方を回るということを書いた。船村先生は何十年もの間、日本全国をギター1本で唄い歩く「演歌巡礼」というものを続けてきた。自身で作曲した曲を、ギターの弾き語りで行く土地の人たちに聴かせ、またその際、曲想が浮かんだものを作曲しながら次の場所へと旅に出る。この「演歌巡礼」を1年のうちの半分以上を全国各地で行ってきた。現場への移動~コンサート、そしてまた移動の繰り返しであるから、先生の身体にかかる負担も年々大きくなっていた。

そこで、船村 徹同門会会長・鳥羽一郎兄を筆頭に、内弟子・静 太郎兄、天草二郎兄、走 裕介兄、村木 弾の5名で「内弟子五人会」というものを結成し、船村先生の名代として「演歌巡礼」を引き継いでいくことになった。

2016年4月に発生した熊本地震。熊本・大分両県で相次いで大きな揺れを起こし、甚大な被害を各地にもたらした。鳥羽兄の「熊本でチャリティーをやって、みんなを元気にしよう!」という一声で内弟子が集まり、10月の下旬、天草兄の故郷・熊本県天草で「チャリティーコンサート 演歌巡礼」を開いた。大勢の方々に集まっていただき、素晴らしい会になった。熊本をはじめ、隣県の皆様にも元気を与えることができたと思う。

2016年10月、熊本県天草で開催された「チャリティーコンサート 演歌巡礼」にて。左から村木 弾、天草二郎兄、鳥羽一郎兄、静 太郎兄、走 裕介兄

その後、内弟子5人で船村先生に熊本チャリティーの様子を報告したところ、大変喜んでくださった。鳥羽兄が、これから師匠の続けてきた「演歌巡礼」を、内弟子5人で引き継いでいく旨を先生に伝え、僕らも立派に継承していくという強い決意を心に刻んだ。

それから数日後、大変うれしい知らせが届いた。船村先生が”文化勲章”を受章することになったというものであった。

 

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船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。

 

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村木 弾「ほろろん演歌」

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作詞/高田ひろお 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
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「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。


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私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内

◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
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〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子




Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。

日本コロムビア 村木弾ページ
村木弾 公式Twitter