【連載】師匠と僕 村木 弾 第20回

「先生を送る日」

巨匠、故・船村 徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出を紐解く。ついに先生を送り出す日がやってきた。「とにかく明るく笑って」。そう決めた内弟子たちは涙声になりながらたくさんの歌で送り出した。

 

2017年2月17日。なんとかレコーディングを終え、夕方に神奈川県・辻堂へ到着すると、船村 徹先生は帰ってきていた。ついさっき録音してきた「都会のカラス」を先生に聴いていただいた。当然、先生からの感想はない。寝顔の表情は「ん~」なのか、「まぁ、こんなもんだろ」のどちらであったのだろうか。

この日はとにかく泣いた。人はこんなにも涙が出るのかと思うくらい泣いた。今まで生きてきたなかでいちばん泣いた。

次の日には納棺となり、その夜も内弟子が集まった。その時、「先生もみんなが泣いて湿っぽいのは嫌だろう。みんなで歌おう!」という話になり、蔦 将包先生がギターを持ち出して、弟子がひとりずつ歌った。僕は「東京は船着場」を歌ったがまた涙声になり、兄貴たちもまた同じだった。

普段から弟子の歌をあまり聴かなかった先生だったが、この時ばかりは大変だろうなとみんなでお酒を飲みながら笑った。そして、「とにかく明るく笑って、先生を送り出そう!」ということで意見が一致した。

2月21日、内弟子たちに抱えられ、辻堂の自宅を出発する船村先生

2月22日と23日、東京都・護国寺で通夜と葬儀が行われた。たくさんの方々が参列してくださった。葬儀場のなかへ入れない人たちも、外で手を合わせてくださっていた。先生を霊柩車へ乗せる際、舟木一夫さん、鳥羽一郎兄をはじめ、内弟子のみんなで棺を運んだ。

子でも孫でも ない他人(ひと)の子を
火の粉背おって 育ててくれた
仰げば尊し 師匠(おやじ)の拳(こぶし)
あまりの痛さに 怨んだ日々が
いまじゃ恋しく 懐かしい

作曲 船村 徹
作詞 星野哲郎
歌  鳥羽一郎

鳥羽兄のデビュー10周年記念曲「師匠(おやじ)」である。船村 徹同門会のテーマ曲でもあるこの歌を、内弟子たちが歌いながら、先生を送り出した。たくさんの方々に温かく見守られ、船村 徹先生は遠くへ旅立っていった。

2月23日、葬儀を終えて出棺の時。多くの人たちに見送られながら、舟木さんや内弟子たちで船村先生の棺を運んだ

 

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船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。

 

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2020年7月29日発売
酒場のギター演歌で勝負!
村木 弾「ほろろん演歌」

村木弾ほろろん演歌

「ほろろん演歌」
作詞/菅麻貴子 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
c/w「男さすらい」
作詞/高田ひろお 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
日本コロムビア COCA-17784 ¥1,227+税

「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。


INFORMATION
私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内

◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
•新規ご入会の初年度は入会月により変動いたします。
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◆入会特典
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私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)・事務局
TEL 090-8101-8196
〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子




Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。

日本コロムビア 村木弾ページ
村木弾 公式Twitter