【連載】師匠と僕 村木 弾 第16回

「”カァ~”で初レッスン」

巨匠、故・船村 徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出を紐解く。第2弾シングル「都会のカラス」の歌い出しに先生が怒っていた。初めてのレッスンで、「カァ~」「もう一回!」が繰り返される。

 

2017年2月13日、船村 徹先生から連絡を受け、神奈川・辻堂駅で降りた僕は、先生の自宅へ向かっていた。その間、この前のレコーディングはまずかったのかな……と考える一方で、先生の内弟子になってからデビューするまで、一度も行われたことのなかったレッスン。その初めてのレッスンとは、どのようなものになるのだろう? と思っていた。

そして、先生の自宅へ到着。お会いした先生は、まだ体調が万全ではなかった。微熱が続いているというなかで自分にレッスンをつけてくださる先生に、本当にありがたい気持ちでいっぱいだった。なんとしても先生の思い描いているように歌わなければと思った。

船村先生による「都会のカラス」直筆譜面

レッスンが始まった。「都会のカラス」のイントロが流れ、歌い出しに入った。「カァ~」と僕が歌った瞬間、先生が言った。

「はい、ストップ! もう一回、最初から」

僕は音を外してしまったかな? と思い、気を取り直して、ふたたび歌い出した。

「カァ~」

すると、先生はまた「ダメ、やり直し」。僕は頭のなかが真っ白になっていた。えっ? なんで? 何が悪いんだろう? と思いながら、「カァ」と鳴いては「やり直し!」のやり取りが続いた。

しばらくして、先生が言った。

「君ね。カァくん(カラスのこと)たちだって、いろんなカァくんがいるだろ? 機嫌のいいカァくん、悲しんでいるカァくん、怒っているカァくん。一人ひとり、鳴き方っていうのは違うんだヨ。君は、僕んところに12年半もいた。その間、腹が立った時もあったろうし、楽しかった時もあったろう? 兄弟子たちがデビューしていって不安になったり、悔しかった時だってあっただろう? お前のその胸のなかにある、いろんな気持ちをこの『カァ』にぶつけるんだよヨ!! ただ一本調子に『カァ』って言うだけじゃ、ダメなんだよ!! 12年半の間、僕のところで何を勉強してきたんだ!!」

先生は自分の握りこぶしをテーブルに叩きつけ、目をかっと見開きながら、僕を見ていた。怖かった。あんな先生を見たのは初めてだった。

「都会のカラス」発売後のキャンペーンにて

 

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船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。

 

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2020年7月29日発売
酒場のギター演歌で勝負!
村木 弾「ほろろん演歌」

村木弾ほろろん演歌

「ほろろん演歌」
作詞/菅麻貴子 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
c/w「男さすらい」
作詞/高田ひろお 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
日本コロムビア COCA-17784 ¥1,227+税

「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。


INFORMATION
私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内

◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
•新規ご入会の初年度は入会月により変動いたします。
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・再度ご入会の場合は入会月を問わず年会費¥2,000となります。

◆入会特典
会員証の発行・入会記念ポートレートプレゼント
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私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)・事務局
TEL 090-8101-8196
〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子




Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。

日本コロムビア 村木弾ページ
村木弾 公式Twitter