【連載】師匠と僕 村木 弾 第11回
「不安と緊張の新歌舞伎座公演」
巨匠、故・船村徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出の日々を紐解く。新歌舞伎座公演初日に緊張で発熱。そんな僕のメンタルの弱さを見抜いた舟木一夫さんは――。
初めてのキャンペーンを終えた僕は、3月初旬、大阪へ向かった。村木 弾のプロデュース&作詞を手がけてくださった舟木一夫さんの新歌舞伎座 一カ月公演に出演させてもらうためである。
ここで説明をさせてもらいたい。大先輩である舟木一夫さん。僕はこの連載のなかで、たびたび「舟木さん」と書いている。本来ならば”舟木先””、または”舟木先輩”と書かなくてはならないのであるが、ここは舟木さんと僕の信頼関係によるものであるから、このように表記させてもらっている。
舟木さんは、デビュー1年目の僕をご自身の一カ月公演に出演させてくださった。思い返せば、舟木さんと僕が初めて会ったのは、船村先生の付き人の時、八王子オリンパスホールで西條八十先生作品を唄う番組の収録であった。船村先生にあいさつするため、楽屋を訪ねてきた舟木さん。”青いセーター”を着て入ってきた「舟木一夫」という大スターのオーラは、今でも鮮明に覚えている。この”ご縁”があったからこそ、今の自分がいる。
この3月の大阪公演に入る前、僕は船村先生の元へ行き、舟木さんのおかげで出演させていただくことになったと報告した。その時、先生は「よかったな。舟木くんの言うことをしっかり聞いて、勉強させてもらうんだゾ」と言ってくださった。
3月4日に初日を迎えた新歌舞伎座公演。千秋楽までの1カ月間は、不安と緊張の毎日であった。
実を言うと、初日を迎えた夜に熱が上がり、体温計で計ると39度を超えていた。柄にもなく、風邪をひいてしまったのである。何とも情けない自分だなと改めて思った。連日1000人以上のお客様の前で、超一流のバンドメンバーやスタッフの方々をそろえ、最高のステージで唄わせてもらえる「場」をつくってくださったのに、である。僕は遠足に行く前の日に、緊張して熱を出してしまう子どものようなメンタルの弱い人間だったのだ。
だが、そんな自分の弱さをいち早く見抜いた舟木さんは、毎日、僕にアドバイスをくれた。「”プロ”としての自覚を持つことはもちろん、とにかく楽しく唄うこと。ステージを楽しむこと。この1カ月は、そのことを意識しろ」と。あれこれ言われるとパニックになる自分にとって、舟木さんからのこの助言は、大阪公演を乗り切る最強の力となった。
デビューして間もない村木 弾というひとりの唄い手を、ご自分の大事な一カ月公演に出演させてくださった舟木さんのおかげで、今でも大阪でキャンペーンをした際、応援に駆けつけてくださる方々がいる。
新人。デビュー1年目。そんな自分にあのような素晴らしい舞台を与え、経験させてくださった舟木さんに感謝である。
船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。
2020年7月29日発売
酒場のギター演歌で勝負!
村木 弾「ほろろん演歌」
「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。
INFORMATION
私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内
◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
•新規ご入会の初年度は入会月により変動いたします。
・継続更新時(毎年4月1日)は年会費¥2,000(税込)となります。
・再度ご入会の場合は入会月を問わず年会費¥2,000となります。
◆入会特典
会員証の発行・入会記念ポートレートプレゼント
会報の発行(年間3回程度)
コンサートや出演イベント・チケット等のご案内をさせていただきます。
◆私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)ご入会ご希望の方
下記の住所までお葉書もしくはお電話にてお申し込みをお願い致します。
皆様のご入会をお待ちしております。
私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)・事務局
TEL 090-8101-8196
〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子
○
Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。