【連載】師匠と僕 村木 弾 第18回
「先生の旅立ち」
巨匠、故・船村 徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出を紐解く。2017年2月16日、先生が亡くなった。若奥様からその一報を受け、僕は急いで、神奈川県藤沢市にある先生の自宅へ向かった。
2017年2月16日。僕は東京・代々木のけやきホールで、コロムビアが毎月開催する「コロムビア マンスリー歌謡ライブ」に出演していた。夕方にライブが終了し、帰り仕度をしていた時、携帯電話に不在着信があることに気づいた。それは若奥様からであった。若奥様とは、船村 徹先生のご子息・蔦 将包先生の夫人である。何か連絡事項かと思い、いつものように電話をかけ直すと、若奥様がひと言。
「先生が亡くなった」
僕は思わず、「えっ?」と聞き返した。しかし、若奥様からは同じ答えが返ってきた。そんな馬鹿な……。3日前にレッスンをしていただき、その後、いっしょにお酒をごちそうになったばかりなのに。あんなに楽しそうに会話をしていたのに……。
「とにかく、すぐ辻堂へ向かいます」
あまりに急なことに、僕は若奥様にそれだけ伝えて、けやきホールを後にした。
先生の自宅がある辻堂に着くと、兄弟子たちはすでに到着していた。驚きというか、信じられないという気持ちや、何で急に……という思いがごちゃまぜになって、家のなかを巡っていた。
先生は自宅にはいらっしゃらなかった。戻ってこられるのは、翌17日になるという。とにかく、先生を迎えてあげるための準備をしようということで、みんなが動きだした。
準備がひと段落し、先生のご家族、内弟子で集まって話をしている時、僕はふと思った。17日は「都会のカラス」のレコーディングの日であった。
先生の奥様をはじめ、兄弟子たちが、「今の気持ちの状態でレコーディングできるのか?」と心配してくれた。しかし、このスケジュールは前々から決まっていたものである。先生も「仕事に穴を開けることは絶対にするな」と言うはずだ。
「予定通り、がんばります」
そう伝えた僕を、先輩方は激励してくださった。
「先生もちゃんと見ていてくれるから、思い切ってやってこい!」
舟木一夫さんからも電話があった。
「大丈夫か? 明日、歌えるか? 無理するなよ」
そう言ってくださった舟木さんに、自分の思いを伝えたところ、「うん、わかった。じゃ、明日、スタジオで」と電話が切れた。
レコーディングを終えたら辻堂に戻ると伝え、僕は先生のいない自宅を後にした。
村木弾「都会のカラス」
船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。
2020年7月29日発売
酒場のギター演歌で勝負!
村木 弾「ほろろん演歌」
「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。
INFORMATION
私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内
◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
•新規ご入会の初年度は入会月により変動いたします。
・継続更新時(毎年4月1日)は年会費¥2,000(税込)となります。
・再度ご入会の場合は入会月を問わず年会費¥2,000となります。
◆入会特典
会員証の発行・入会記念ポートレートプレゼント
会報の発行(年間3回程度)
コンサートや出演イベント・チケット等のご案内をさせていただきます。
◆私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)ご入会ご希望の方
下記の住所までお葉書もしくはお電話にてお申し込みをお願い致します。
皆様のご入会をお待ちしております。
私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)・事務局
TEL 090-8101-8196
〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子
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Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。