【連載】師匠と僕 村木 弾 第8回

「忘れられない最後の旅」

巨匠、故・船村徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出の日々を紐解く。第8回目は、師匠と行った最後の旅、北陸・金沢での日々。

 

2010年から、船村 徹先生はJASRAC(日本音楽著作権協会)の名誉会長を務めていた。JASRACには、カメラを趣味とする人たちが集まった写真部というものがあり、先生は毎年、この写真部の人たちと行く、撮影を兼ねた1泊2日の旅行会を恒例としていた。

村木 弾・初レコーディングの数日後、前年から決めていた北陸・金沢への旅となった。金沢は、船村先生の奥様の故郷でもある。

十数名のJASRAC写真部一行は、それぞれ目的の場所で撮影や観光を楽しみ、先生と僕は一行とは別行動で撮影した。夜は、これまた恒例の大宴会となり、カメラ談義や先生の幼少期の話を聞いたりで、大いに盛り上がった。大人数に囲まれて酒を飲む先生の笑顔は、本当にうれしそうで、二次会も夜遅くまで続いた。

翌朝、朝食も全員でごちそうになり、先生の一声で“迎え酒”が始まった。まだ11月の中頃だったが、忘年会のような楽しい宴会が再びスタートした。

昼が近づき、写真部一行は翌日からの仕事があるため、帰京する時間となった。僕も先生の部屋の荷物をまとめようと宴会場を出ようとしたとき、「もう一泊していくか」と先生は言った。先生のスケジュールも宿側の方も問題がなかったので、金沢連泊となった。

写真部の一行が帰り、先生と僕の二人になり、別室に移動して遅い昼食をとった後、先生は一度部屋に戻り、ひと休みすることになった。先生から、「夕食まで時間があるから、風呂でも入ってゆっくりしてなさい」と言われたので、誰もいない大浴場に行き、金沢の湯をひとりじめしていた。

夕方になり、先生との二人宴会となった。酒は加賀の名酒「加賀鳶」、料理は金沢名物の香箱ガニから始まり、治部煮~ブリ大根~鯛のアラ煮などなど素晴らしいものだった。先生、僕ともに日本酒がグイグイ進み、先生の若い頃、高野先生と2人で苦労した話やゴルフの話、小説の話など会話が尽きることはなかった。

3時間ほどの宴会も終わりに近づいたとき、先生がふいに一言言った。「デビューしてからが大変なんだから、とにかく身体には気をつけてがんばるんだゾ」。ありがたい一言だった。

この2泊3日の金沢旅行は、先生と行った最後の忘れられない旅である。

初レコーディングと金沢旅行を終えて、2015年12月末の忘年会での一枚

 

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船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。

 

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村木 弾「ほろろん演歌」

村木弾ほろろん演歌

「ほろろん演歌」
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c/w「男さすらい」
作詞/高田ひろお 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
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「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。


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私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内

◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
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私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)・事務局
TEL 090-8101-8196
〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子




Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。

日本コロムビア 村木弾ページ
村木弾 公式Twitter