【連載】師匠と僕「村木 弾」第2回
「3人のニャーゴ先輩」
巨匠、故・船村徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出の日々を紐解く。第2回目は修業時代の舞台となる「楽想館」での生活と、ニャーゴやワンニャンとの関わり合い。
冬の楽想館はかなり冷え込むが、夏の夜は過ごしやすい。夏の時期、船村徹先生は外のテラスで夕食を召し上がることが多かった。樹木の枝にランプをつり下げ、虫の鳴き声に耳を傾けながらグラスを傾けるのであった。
先生の召し上がる食事を作るのも弟子たちの大切な仕事だ。内弟子になったばかりの頃、先輩たちがシェフと見間違うほどの手さばきで、次々と料理を作る様子を見て驚いた記憶がある。“ひとりの歌い手である前に、ひとりのりっぱな人間(日本人)であれ”というのが先生の教えだ。食材ひとつ取っても調理方法はいろいろある。また食には“旬”というものも存在する。そういうものを知ることも、日本人として知らなければならない大切知識だということを、内弟子時代に教えられた。
広い庭をもつ楽想館には、時に外から“ちん入者”もあった。野良のワンニャン(犬)、ニャーゴ(猫)らである。船村先生は、犬・猫という言葉は使わない。先生の弟子になった頃、うっかり「犬」という言葉を使ってしまい、ひどく怒られたことを覚えている。獣医を生業にしていた父親のもとで育った船村先生は、生き物に対する思いやりや情がひと一倍深かった。
ある時、いつもの様に先生がテラスで一杯やっていると、ひとりのニャーゴ(♀)が近づいてきた。先生によく懐き、離れなかった。翌日もそのニャーゴはテラスに来て、先生が家の中に入るまでずっとそばで座っていた。
「ミャーちん」。先生はそのニャーゴに名前をつけた。
2カ月後、ミャーちんは楽想館の庭内で4人の子どもを産んだ。ひとりはどこかへ行ってしまったが、ミャーちんと3人の子どもたちは毎日庭内で遊んでいた。その後、早くにミャーちんは死んでしまい、残された3人のニャーゴをかわいそうに思った先生は、楽想館で飼おうと言い出した。翌日、宇都宮市内の動物病院に連れて行き、健康診断や検査をして、晴れて3人は楽想館の一員となった。
白毛のいたずら小僧“チロ”(♂)、長毛でおっちょこちょいの“デブ”(♂)、虎毛きかんぼ娘の“クー”(♀)。命名者はもちろん先生である。当時、楽想館にはパピヨンの“ポロ子”(♀)というワンちゃんがいた。ピラミッドの頂点にいるのは当然、船村先生で、その下にポロ子がいて、僕たち内弟子はいちばん下だった。そしてこの日、僕らの上にさらに3人の“先輩”が加わったのであった。
船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。
2020年7月29日発売
酒場のギター演歌で勝負!
村木 弾「ほろろん演歌」
「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。
INFORMATION
私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内
◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
・年会費2,000円(税込) 毎年期間4月1日~3月31日
•新規ご入会の初年度は入会月により変動いたします。
・継続更新時(毎年4月1日)は年会費¥2,000(税込)となります。
・再度ご入会の場合は入会月を問わず年会費¥2,000となります。
◆入会特典
会員証の発行・入会記念ポートレートプレゼント
会報の発行(年間3回程度)
コンサートや出演イベント・チケット等のご案内をさせていただきます。
◆私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)ご入会ご希望の方
下記の住所までお葉書もしくはお電話にてお申し込みをお願い致します。
皆様のご入会をお待ちしております。
私設「村木弾ファンクラプ」(弾む会)・事務局
TEL 090-8101-8196
〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子
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Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。