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一条貫太

【ロングレポート】一条貫太が故郷・千葉で示した“覚悟”の船出。10周年の節目に向けた魂の熱唱、そして目指すは令和型本格演歌の旗手!

2018年のデビューから8周年を迎え、2年後の10周年という大きな節目を見据える一条貫太が10月4日、故郷・千葉市の千葉市民会館大ホールでリサイタルを開催した。サブタイトルに「~昭和100年 貫太が昭和を歌いまくる~」と掲げられたこの日は、昭和の名曲へのリスペクトと、令和の演歌を担う覚悟が交差する、彼の現在地が凝縮されたステージとなった。

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オープニングを飾ったのは、デビュー曲「ふたりの始発駅」だ。温かい拍手に迎えられた一条は、続いてオリコン週間演歌・歌謡シングルランキングで自身初の1位を獲得した記念碑的な作品「いのちの花」、同ランキング1位とともに、日本作曲家協会音楽祭・奨励賞を受賞した「旅路の先に」の2曲を披露した。

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着実にキャリアを積み重ねてきた軌跡を力強い歌声で示すと、一条は、「昨年は3月にこちら(千葉市民会館)でコンサートをやらせていただきましたが、(東京でのコンサートが続いたことで)『もう地元ではやらないのかな』、『一条貫太も、東京でしかやらないのかな』と、そんな声をいただいておりました。でも、ようやく今日、故郷で歌うことができます。その喜びを噛みしめ、とても楽しみにしていました」と挨拶すると、地元開催に笑顔をみせた。

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コンサートのタイトルは「一条貫太リサイタル~昭和100年 貫太が昭和を歌いまくる~」。この日、披露する予定の約30曲のセットリストはスタッフと一緒に考えたというが、「サブタイトルはほぼ無視する形になりまして、僕が歌いたい歌を選曲しました(苦笑)」とも告白。前半は自身のオリジナル曲で魅了していった。

一条貫太

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表題曲として初めてメジャー演歌に挑戦した「酒場の花」を挟み、「潮風列車」「真っ赤な友情」「走れ!桃太郎」などカップリング曲を中心としたメドレーで、“一条貫太”という歌い手の幅広さをアピールした。

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鎮魂歌として選曲したのは、ちあきなおみの「紅とんぼ」だった。吉田旺が作詞し、船村徹が作曲した同曲は、“紅とんぼ”という小さな飲み屋を営んでいた女将が、店をたたみ田舎へ帰っていく情景が歌われている。

アコースティックギターを抱えた一条は、故郷の母を思う「男の夜曲」を歌うと、最近、人の縁や別れについて深く考えるようになったと、心境の変化を語り始めた。

「あの~、実家の近くに寿司屋さんがありまして、その女将さんが、僕がデビューする前から応援してくださってたんです。でも、お店を閉めてしまったんです。女将さんが癌になってしまいまして・・・。寂しかったですね・・・。今は天国におられます」

一条貫太

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大切な人との別れを経験し、人の世の儚さや温かさを思う、そんな「今の心境を表す歌」として彼が選んだのが「紅とんぼ」だった。

「女将さんに送るとしたら、この曲かなと。恐縮しながら歌わせていただきたいと思います」

そう静かに語り、一条が奏で始めたギターの音色と歌声は、技巧を超え、大切な人への想いを乗せて会場を優しく包み込んだ。

一条貫太

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照れからだろうか、一条は歌い終わると、「寝ている人はいませんか?」と客席を和ませると、「いつもなら、ここで尊敬する井沢八郎さんの『北海満月』を歌わせていただくことが多いのですが」と前置きし、「その楽曲の源流になったとも言われるこの曲を今日は歌わせていただきます」と、「イヨマンテの夜」(伊藤久男)を紹介。荘厳な歌声で歌い上げた後は、一条の“海のシリーズ”の幕開けとなった「男の漁場」で力強い歌声を轟かせ、前半のステージを後にした。

一条貫太

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休憩を挟み、後半は観客の度肝を抜く太鼓の演舞で幕を開けた。一心不乱に叩き込む姿から繰り出されるばちさばきは、わずか数回の練習だったとは思えぬほどだった。

この日のために一条に太鼓を教えたのは、千葉市若葉区で和太鼓「童座」を主宰する和太鼓奏者の西田洸だった。大太鼓日本一決定戦での入賞経験も持つ西田は、一条とは同級生の間柄。故郷でのリサイタルならではの挑戦だった。

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その熱気を引き継ぐように、セカンドシングル「やんちゃ船」、地元千葉の勇壮な祭りを歌った「大原はだか祭り」、そして“海のシリーズ”第2弾「大漁太鼓」と、海と祭りをテーマにした楽曲で後半を走り出した。

一条貫太

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ここからは昭和の名曲カバーが続いた。まずはリズム演歌・ビート演歌から「夜空」(五木ひろし)、「黒潮列車」(新沼謙治)、「夢街道」(山本譲二)、そして「人生一路」(美空ひばり)を選曲。昭和を彩ったヒット曲を、躍動感あふれる歌声で立て続けに披露すると、故郷の歌・海の歌のコーナーへ。

一条貫太

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「おさらば故郷さん」(加賀城みゆき)、「あゝ上野駅」(井沢八郎)、「おんな岬」(細川たかし)、そして「無法松の一生」(村田英雄)を熱唱した。演歌の真髄ともいえる楽曲群を歌い上げ、一条貫太という歌手の骨格を成す音楽的ルーツを存分に見せつけた。

一条貫太

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歌い終わると、本編の最後を飾る曲を前に、静かに語り始めた。

「デビューしてからいろんなことがありましたけれども、大きかったのはコロナだと思います。いつ活動が再開できるのだろうと思う日々が続きました」

当時の悔しさを滲ませつつ、彼は再来年に迎える10周年に向けての決意を口にする。

リサイタルの5日前、一条は昭和歌謡界の巨匠・星野哲郎氏の生誕100年を記念する大舞台、「令和・歌の祭典2025~作詞家 星野哲郎生誕100年記念~時代を彩る名曲の数々」に出演した。北島三郎、水前寺清子をはじめ歌謡史を彩ってきた錚々たる歌手が集う中、一条も星野作品を未来へ歌い継ぐ一人として、その栄えあるステージに立った。

「水前寺さんからもお声をいただきました。『あなたはね、パッと出る人じゃない。パッと出て紅白に出る人じゃない』って、はっきり言われました(苦笑)。でも、『あなたの場合はね、一歩ずつ頑張れば大丈夫だよ』と、温かい言葉をかけていただきました。ですから、今日もその10周年に向けた新たな一歩だと、そんなふうに思っております」

一条貫太

メンバーが増え、厚みが増したバンド編成。事前のリハーサルでは5時間をかけたという。

一条貫太

バンドメンバーの最年少は15歳の少年。コンダクターでありピアノ奏者の猪川史子と、ドラム奏者・井出幸彦の実子だという。自らの意志で出演を希望し、カホンを叩いた。一条が「すごいよね! サラブレッドだよね。将来の目標は?」と問いかけると、現在、高校一年生の彼は「一条さん」と回答。「それ、言えって言われたの?」と、一条も苦笑いしていた。

10周年に向けてやりたいこと、挑戦したいことは山ほどあるが、自分の置かれた状況の中で「一言一言を大切にして、一歩ずつ、じわじわと進んでいきたい」という決意表明だった。

「それでは最後の曲を聴いていただきたいと思います。この曲が出た直後にコロナ禍になってしまって、2カ月ぐらいしかキャンペーンやイベントで歌う機会がなかったんですが、大切な曲となりました」

一条貫太

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2020年1月8日リリースのサードシングル「北海の篝火」。いまや一条貫太の人気曲であり、代表曲となった。一条は天を衝くような高音で情感豊かに歌い上げると、万雷の拍手を浴びた。

鳴り止まない拍手に応えて再び登場した一条貫太は、デビューした翌年に千葉県八千代市でファーストコンサートを開催したことに触れ、「あの時は途中のトイレ休憩が10分で済みました。でも、今は20分ですよ(笑)」と振り返った。

それだけ大勢のファンが来場してくれているという喜びの報告だった。そして、水前寺からは「パッと紅白に出る人ではない」と指摘はされたが、「最後の31日まで頑張ります」と、歌手である以上、毎年、大みそかの大舞台を目指したいという気概もみせた。

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「“海の歌は貫太に任せた”と、鳥羽一郎さんから言っていただいたんです。でも、先日お会いした時にその話をしたら、『俺、そんなこと言ったか?』って言われちゃいまして(苦笑)」と、鳥羽ならではのユーモアある返しのエピソードで会場を沸かせると、「それでも、僕は海の歌をしっかりと引き継いでいきたい」と、まずは小金沢昇司の海を舞台にした作品をカバーした。

「鳥羽一郎さんが一代目なら、僕は『北の三代目』で行きたいと思います」

鳥羽の実子である木村徹二のデビュー曲が「二代目」であることを意識した選曲だった。

一条貫太

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そして、大ラスは「凪か 嵐か」。今年2月にリリースされた“海のシリーズ”第3弾だ。人生という大海原へ漕ぎ出すすべての人へ贈る覚悟の歌でもあった。

楽曲は、荒波を予感させるドラマティックなイントロから幕を開ける。宮下健二氏が作曲し、猪股義周氏がアレンジした現代的なビート感が躍動するサウンドは、まさに疾走感という言葉がふさわしい。

“夢に向かって 生きるには 避けて通れぬ いばら道”。万城たかし氏による歌詞は小手先の慰めではなく、人生の厳しさを真正面から描き出す。それでもなお“でたとこ勝負 覚悟の船出”と前へ進む意志を鼓舞する。

一条貫太

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この楽曲の核となるのは、一条貫太の歌声そのものだ。彼の声には、若さゆえの迷いや不安を振り払うかのような、一点の曇りもない潔さがある。サビで高らかに歌い上げる“男の海は 凪か嵐か”のフレーズはこの作品の肝だ。

さらに運命に身を委ねる祈りにも似た “あゝ龍神よ 天地をさらせ”という一節には、一歩足を踏み出してみなければ、何も始まらないというメッセージが込められており、彼の表現者としての姿勢が凝縮されていた、というと言い過ぎか。

新曲「凪か 嵐か」は、まさに一条の決意表明そのもの。水前寺清子から贈られた「一歩ずつ」という言葉は足元の波を見極め、次に来る大きなうねりへと着実に備えるための、一条貫太という歌い手の誠実な航海術そのものだった。

この日のリサイタルの模様は後日、映像化が予定されているという。記録されたのは単なる会場の熱気ではない。一人の青年が歌と真摯に向き合う姿、そして演歌の未来を担う覚悟を示した、その瞬間のドキュメントとなるはずだ。目指せ、令和型本格演歌の旗手へ!

一条貫太

なお、一条貫太は11月8日には大阪・長堀橋にてワンマンライブを、11月22日には東京・渋谷区のライブレストラン「ラドンナ原宿」でバースデーライブを開催する予定だ。また、2026年2月28日には東京・台東区の浅草公会堂でのリサイタル開催も決まった。

 


2025年2月19日発売
“海のシリーズ”第三弾!
一条貫太「凪か 嵐か」
一条貫太 凪か 嵐か

「凪か 嵐か」
作詩/万城たかし 作曲/宮下健治 編曲/猪股義周
「貫太のどっこいソーラン」
作詩/万城たかし 作曲/宮下健治 編曲/猪股義周
日本クラウン CRCN-8730 ¥1,500(税込)

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2025年6月4日発売
一条貫太初の映像作品(DVD)
『一条貫太リサイタル~魅力のすべて~』
一条貫太リサイタル~魅力のすべて~

日本クラウン CRBN-144 ¥5,800(税込)

収録内容
1. 貫太のどっこいソーラン(浅草ロング・ヴァージョン)
2. 北海の篝火
3. 北海の満月
4. 独航船
5. 演歌船
6. 龍馬残影
7. 石松金比羅道中
8. 夢淡き東京
9. ああ上野駅
10. ふたりの始発駅
11. 望郷恋しんぼ
12. 桃太郎一代記
13. 走れ!桃太郎
14. 走れコウタロー
15. 受験生ブルース
16. 心とも友だち
17. 銚子大漁太鼓(ひびき連合)
18. 大漁太鼓
19. やんちゃ船
20. 男の漁場
21. いのち知らずにゃ敵がない
22. 誠
23. 人生一路
24. 無法松の一生(度胸千両入り)
25. 大漁太鼓
【ボーナス映像】(2019年4月6日 一条貫太 ファーストコンサートより(八千代市民会館))
26.ふたりの始発駅
27.潮風列車
28.真っ赤な友情
29.やんちゃ船

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