5周年を前に集大成。一条貫太が地元・千葉でコンサート。幻の衣裳で登場し、貫太らしく演歌の本道へ
昨年12月14日に発売した8枚目の新曲「なぁ親父」がオリコン演歌・歌謡曲チャートで1位を獲得した一条貫太が1月9日、千葉県の千葉市民会館に約900名の観客を集め、「一条貫太2023コンサート」を開催した。地元・千葉でのコンサートは2年ぶりとなった。
「なぁ親父」のカップリング曲「風の追分渡り鳥」と、「桃太郎一代記」の2曲を歌って登場した一条は「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。一条貫太、2025コンサートということで、えっ!? 2023だ!」と、言い間違える愛嬌も見せながら、歌に真っ直ぐ、演歌の本道を行く一条貫太らしく、心を込めて全力で歌を聴かせた。
幕開けの「風の追分渡り鳥」は“一之城 駿(いちのじょう・しゅん)”名義で一条自らが作曲に挑戦した歌。「桃太郎一代記」は彼を応援する桃太郎便(丸和運輸機関)の創業50周年記念ソングとして2021年に制作された社歌。共に生き様が描かれた作品だった。
1月9日が歌い始めだという一条。この日は“男を謳うリサイタル”として、熱いメッセージを持つ作品を多く披露した。少しずつ明かりが見えてきたとは言え、まだまだ余談の許さないコロナ禍に「負けちゃいけないよ」という想いを、歌でファンと共有した。
コンサートの前半。まずは「潮風列車」「真赤な友情」「大原はだか祭り」「女のいのち」「北の流れ星」「走れ!桃太郎」と、あまり歌う機会のないカップリング曲をメドレーで聴かせると、新御三家メドレー、北島三郎&鳥羽一郎メドレーへと歌い継いだ。
「気になった方がたくさんいらっしゃるかと思いますが、デビュー曲『ふたりの始発駅』のジャケット写真で着る予定だった衣裳です。Gジャンじゃなくて。本当だったらこれでデビューする予定だったんです。でも、皆さんに親しんでもらえるほうがいいだろうと、Gジャンで歌わせていただいたわけです。この衣裳を着て、バンドさんにあいさつしましたら、マジックでもできるの?って言われました。ひとつもできません!」(一条貫太)
新御三家からは西城秀樹の「情熱の嵐」、郷ひろみの「ハリウッド・スキャンダル」、野口五郎の「グッドラック」を歌唱。「高校生の時、子どもはいるの? って聞かれた僕ですが、アイドルになった気持ちです(笑)」と軽口でも観客を楽しませると、所属する日本クラウンの大先輩の作品から、北島三郎の「北の漁場」など、鳥羽一郎の「男の港」など“海もの演歌”を歌い、最後はセカンドシングル「やんちゃ船」で前半を締めくくった。
平成生まれの「昭和なヴォイス」をキャッチフレーズに2018年にデビューした一条。デビュー曲では、北の町から旅立つ純な男女を歌い、親しみやすい世界が演出されたが、彼に歌わせたいジャンルとして、“海”をテーマにした作品も候補に挙がっていたという。そんな一条が歌う“海もの演歌”が心にしみた。
ある時、鳥羽一郎はデビュー間もない一条について、「貫太は今のままでいい。余計なことはしなくていい」と話していたことがある。ステージでは緩急分けたトークでも観客を笑わせる鳥羽に対して、一条は一生懸命に自分の歌を歌うだけだった。
たが、今の一条は違う。まるで鳥羽の背中を追いかけるように、コンサートをエンターテインメントとして構成し、MCでは漫談のようなトークや、ファンとのふれあいを大切にした。観客を笑わせ、そして和ませ、歌で酔わせる。しかもまだデビュー4年目。その成長を支えているのは、歌に実直だと言うことではないか。
一条は幼なじみの“小林くん”のお父さんが買った美川憲一のCDを聞いて、演歌が好きになり、今でも古いレコードを探して聴いている。
ミュージシャンとしても活躍した一条の父・一條克成さんもその実直な姿勢を、「今も毎日欠かさず、夜遅くまでレコードやCDを聴いて先輩歌手の歌を勉強しています」と、昨年、ステージで親子共演が実現した際に明かしていた。
コンサートではギターの弾き語りを披露することもあるが、この日の一条はとにかく歌に集中していた。
デビュー曲「ふたりの始発駅」で後半をスタートすると、「酒場の花」「いのちの花」「旅路の先に」と、万城たかし氏が作詞してくれたオリジナル曲を次々と披露していく。客席からは万城氏が見守っていた。
「カラオケに行った時に調べました。万城先生はいろんな方に作品を提供されていますが、僕は(提供された作品数が)2番目でした。先生にたくさんの作品を書いていただき、1番を目指せるように頑張ります」
ラストの2曲は一条のナレーションで始まった。育ててくれた両親への感謝の言葉だった。
まずは「遠く離れていても、母の優しい眼差しとその愛は海よりも深く、そしてその心は大地よりも広く、そしていつもぬくもりで包んでくれる。これからは俺が守ってあげる。たったひとりの母ちゃんなんだから」(抜粋)と、故郷の母を想う「男の夜曲」を歌い上げると、新曲へとつなげた。
「父の背中は大きくて男らしい。照れ屋で恥ずかしがり屋な親父だから。『今までありがとう』。俺には日本一の親父だよ。なぁ親父よ」(抜粋)。
作詞・万城たかし、作曲・星つかさ。息子から父親への感謝を歌う「なぁ親父よ」を、一条は三拍子の優しいメロディに乗せて聴かせた。
「今年3月からはデビュー5周年になります。まだまだ先の見えない世の中ですが、いつも皆さんに感謝の気持ちをお届けできるよう、その気持ちを胸に、これからも一生懸命歌っていきます」
デビュー日となる3月7日からは、5周年記念の全国縦断キャンペーンを行う一条貫太。その5周年を前にした最後の大舞台を、観客は大きな拍手で讃えた。
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「頼んでもないのにアンコールをしていただいて(笑)、ありがとうございました!」
再びステージに戻ってきた一条は、デビューして丸4年。そのうち半分以上の月日はコロナ禍だと、苦しい胸の内を語った。
「本当に苦しい日々が続くんですが、ちょっとした明かりが見えてきた気がします。(コロナが)なくなることはずっとないかもしれませんが、それはそれとして、その時代でどう頑張って歌って行くかだと思います」
一条は自らを鼓舞するような決意を述べると、「負けちゃいけないよ」を熱唱した。尊敬する歌手の布施明が1978年にリリースした「君の歌が聞こえる」のカップリング曲として収録された、布施自らが作詞・作曲した作品。学生の頃に聴いて「いい歌だな」と思っていたという。2021年のコンサートで初披露し好評だった曲だ。サビでは歌詞の一部を変え、アカペラで会場に魂を響かせた。
「負けちゃいけないよ、コロナになんて。負けちゃいけないよ。ゴールはまだ遠い」
一条は、世の中がコロナ一色となった2020年に発売した「北海の篝火」をエンディング曲に歌うと、会場出口でファンひとりひとりを見送り、感謝を伝えていた。
2022年12月14日発売
一条貫太「なぁ親父よ」
8枚目となるシングル「なぁ親父よ」は、一条貫太の個性でもある“昭和なヴォイス”は残しつつ、普遍的なものである“父親”をテーマに制作された。威厳のある詩に三拍子の優しいメロディを付けた、息子から親父に対してのメッセージソングとなっている。カップリング曲は、股旅物に、初の試みとなる一条貫太(ペンネーム:一之城 駿)本人がメロディを付けた意欲作。