三山ひろし 情景を歌う
2020年の後半戦に向けた、三山ひろしの新曲「北のおんな町」の感謝盤。カップリングにはポップス調の明るい作品と、“ありんこ”に人生を投影した興味深いタイトルの2曲が収録されている。「北のおんな町」への期待とともに、新曲への思いを聞いた。
三山ひろしが2020年の勝負曲「北のおんな町」をリリースして半年。7月には新たに2曲のオリジナル曲を加えた「感謝盤」を発表し、後半戦に勝負をかけている。カップリング曲に選ばれたのは、これまでの三山のイメージを打ち砕き、新たなファン層の獲得を予感させるものだ。
まず「SATOUMI~幸せは、あさこいよさこい~」は、三山の故郷・高知県にある人気の水族館「足摺海洋館」がリニューアルされるにあたり、応援ソングとしてつくられた楽曲である。軽快なポップス調で、演歌歌手であることを忘れさせるほど、三山が爽やかに歌唱している。
「幅広い世代の方が来館される場所。誰にも違和感なく聴いていただけて、思わず口ずさみたくなるようにと歌っています。いつものコブシを回さず、声のトーンをひとつふたつあげて、僕自身も若返った気分です(笑)」
レコーディングでは、歌いながら足摺の青い空と雄大な海が自然に目に浮かんできたという。オープニングセレモニーが行われた7月18日には現地を訪れ、曲を披露した。
もう一方の「ありんこ一匹」は、タイトルからして今までにない作品。シングルでの発売も検討された人生演歌で、作曲は師匠である故・中村典正氏。詞は「望郷山河」のカップリング曲「杉の大杉」などを手がけている原 文彦氏だが、これまでの世界観とはまた異なる肩ひじ張らない歌詞が印象的だ。
「ありは、いつもひとりじゃない、助け合いながらみんなで懸命に生きています。それは田舎から上京し、多くの人に支えられて今がある僕自身と重なる部分があり、タイトルからは連想できない奥深さのある詞になっています。正直このタイトルにはびっくりしましたが、ありでなく“ありんこ”と表現するところに健気ながらも生きる力を感じますし、イントロからは、ありがリズムよく歩く姿がイメージできます。コロナ禍のこのような時代だからこそ、この曲が、みんなで力を合わせて頑張ろうというメッセージになればうれしいですね」
柔らかくわかりやすい内容なので、子どもたちにも親しんでもらえたらという。かつて流行った「一円玉の旅がらす」(※)のようにアニメ映像とともに曲が流れたら楽しいし、舞台では驚きの衣装(!?)で歌ってみても面白いかもと、今後に向けて思いが膨らんでいる。
そして、もちろんメインは「北のおんな町」。コンサート活動はまだ思うようには開催できないが、YouTubeでの無観客ライブ配信などに力を入れながら精力的に歌を届けている。
「この曲は教科書どおりに歌ってはいけない、型にはめずに自由に歌唱するのがポイント。僕も遊び心を持って歌っていますが、皆さんにも港町の情景や負けん気の強そうな女性像を思い浮かべながら、それぞれに気持ちよく歌ってほしいなと思っています」
※1991年に発表された晴山さおりのデビューシングル。荒木とよひさ氏が作詞を、弦 哲也氏が作曲を担当。1989年に消費税が導入され、買い物などの際に一円玉がよく使われ、一円玉の行く末が演歌調に歌われた。NHK『みんなの歌』で放送され、ヒットした。
(文=藤井利香 写真=井上孝明)
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懐かしい昭和歌謡のメロディーを三山が遊び心を持って、情感たっぷりに歌い上げる「北のおんな町」に、新たに2曲のオリジナル曲を加えた感謝盤が登場する。「SATOUMI~幸せは、あさこいよさこい~」は高知県の水族館、「足摺岬海洋館」が「SATOUMI」という愛称で7月にリニューアルオープンするのに合わせてつくられた応援ソング。「クレヨンしんちゃん」などのテーマソングなどを手がけた小杉保夫氏による作曲だ。「ありんこ一匹」は“小さな一匹のありんこ”をモチーフに「みんなで汗をかいて、みんなで幸せをつかみたい」という思いを歌った人生演歌となっている。
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profile
三山ひろし(みやま・ひろし)
1980年9月17日、高知県生まれ。作曲家・中村典正氏のもとで修業し、2009年、「人恋酒場」でデビュー。芸名の「三山ひろし」は、中村氏の別名「山口ひろし」から名前もらったもの。2015年、『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、以来、連続出場。2020年7月8日に新曲「北のおんな町」の【感謝盤】をリリース。中村氏の一周忌にあたる8月16日にはアルバム「絆の譜~恩師・中村典正を歌う~」を発売。