三山ひろし 絆を歌う

三山ひろしが恩師・中村典正氏の一周忌に合わせて、新しいアルバムを発売する。中村氏の作品を集めた作品集「絆の譜(ふ)~恩師・中村典正を歌う~」だ。この作品を第一弾として、恩師との絆を歌い継いでいく決意だという。その思いを聞いた。

 

恩師・中村典正氏の一周忌にあたる8月16日、三山ひろしが新たなアルバムをリリースする。「絆の譜(ふ)~恩師・中村典正を歌う~」だ。三山は2013年に、やはり中村作品を集めた「縁歌集」を出しているが、師匠亡き後、さらに多くの作品を自ら歌ってCD化したいとかねてより話していた。

「師匠はあまりに表に出たがらない方だったので、たくさんの名曲を手がけながら、それが世間にあまり知られていないと感じてきました。今回のアルバムを改めて師匠を知っていただくための第一弾と考え、これという曲はきっちり押さえています。縁歌集をお持ちでない方でも楽しめる構成です」

代表作のひとつ、北島三郎の「仁義」は中村のデビュー2作目の作品。鳥羽一郎「男の港」、門脇陸男「祝い船」、藤あや子「むらさき雨情」などのほか、三山自身の「お岩木山」。さらに新録した5曲が入り、全16曲が収録される。

「新録の中でも僕がいいなと思うのが『父娘(おやこ)』です。娘を嫁に出し、自分の手元を離れていく寂しさ、切なさ。奇抜なメロディーラインではなく、人間くささが漂う、聴けば聴くほど温かさを感じる曲で、師匠の人となりが浮かんできます。また、自分がつくった曲はすべて自分の子どものようだと話していましたが、その曲が歌い手の手に渡り手元から離れていく。それに対しての思いも込められているんじゃないかなと、僕は思っています」

新録の「浮草慕情」は、中村夫人である歌手・松前ひろ子の代表作だ。夫婦愛を歌い、松前が今も大事にしている1曲で、「中村典正」ではなく「山口ひろし」の名で作曲した作品だ。

「どんなにつらい思いをしても、夫婦そろってがんばって生きていきましょうという歌。僕は師匠との時間は短かったけれど、父親がいなかったせいか、何か特別な感情を持って接していた気がします。この曲からも家族ならではの絆、温もりを感じないではいられません」

じつは今回選曲からは漏れてしまったが、三山がぜひ入れたかったという曲がある。作曲家デビューを果たした「田舎へ帰れよ」だ。北島三郎が歌った「三郎太鼓」のB面に採用されて、“中村貞夫”という本名で作曲している。

「先生のデビュー曲だけに、思い入れをもってつくっておられたはずなんです。『田舎へ帰れよ それがいい』というフレーズがあるのですが、メロディーに何とも言えないよさがあり、僕は大好きですね。中村先生の作曲家としての原点ですので、北島先生にお許しをいただければ、ぜひ歌っていきたいと思っています。第二弾の制作が可能になった時には、いの一番にリクエストを出したいですね」

自分を世に送り出してくれた師匠の生き様を、今後も作品をとおして伝えていきたいという三山。感謝の思いを込めて、歌い継ぐ。

(文=藤井利香 写真=井上孝明)


中村典正(なかむら・てんしょう)1935年12月12日、山口県生まれ。歌手を目指して上京したが、作曲家の道へ。1963年に北島三郎がリリースした「三郎太鼓」のB面「田舎へ帰れよ」を、本名の中村貞夫の名前で作曲した。同じく北島の「仁義」、藤あや子の「むらさき雨情」、門脇陸男の「祝い船」など多数の楽曲を手がける。中村貞夫、中村千里、山口ひろし名でも作品を残す。2019年8月16日、永眠。

 

2020年8月16日発売
~感謝・思い出、いつまでも~
三山ひろし
「絆の譜~恩師・中村典正を歌う~

日本クラウン CRCN-41343 ¥2,818+税

北島三郎の「仁義」、鳥羽一郎の「男の港」、門脇陸男の「祝い船」など多くのヒット曲を送り出した今は亡き中村典正氏の代表作を凝縮したアルバム。中村氏の一周忌にあたる8月16日に発売予定。

【収録曲】
「お岩木山」(三山ひろし, 2015)
「こころ酒」(藤あや子, 1995)※
「熊野灘」(鳥羽一郎, 1988)※
「浮草慕情」(松前ひろ子, 1982)※
「父娘(おやこ)」(門脇陸男,1990)※
「大阪夜曲」(三門忠司, 2005)※
「むらさき雨情」(藤あや子, 1995)
「男の港」(鳥羽一郎, 1986)
「終着駅は始発駅」(北島三郎, 1977)
「祝い船」(門脇陸男, 1982)
「これから峠」(門脇陸男, 1989)
「花街一代」(松前ひろ子, 1999)
「男の燈台」(三門忠司, 2006)
「仁義」(北島三郎, 1969)
「祝いしぐれ」(松前ひろ子,1990)
「男の路地裏」(三山ひろし, 2018)

全16曲/曲順未定 ( )内はオリジナル歌手名と、発売年。中村典正氏が「中村千里」、「山口ひろし」名で作曲した作品を含む。※は新録


profile
三山ひろし(みやま・ひろし)
1980年9月17日、高知県生まれ。作曲家・中村典正氏のもとで修業し、2009年、「人恋酒場」でデビュー。芸名の「三山ひろし」は、中村氏の別名「山口ひろし」から名前もらったもの。2015年、『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、以来、連続出場。2020年7月8日に新曲「北のおんな町」の【感謝盤】をリリース。中村氏の一周忌にあたる8月16日にはアルバム「絆の譜~恩師・中村典正を歌う~」を発売予定。