北山たけし、念願の浜圭介作品で新しい風を吹かせる!〜新曲「風物語」〜
話をする北山たけしから、興奮が伝わってきた。新曲「風物語」は、歌い手としてこれまで培ってきたものを0(ゼロ)にリセットして臨むことを要求された、北山自身が熱望していた浜圭介氏の作品である。浜氏によって引き出された新たな”北山たけし”の意欲作。その熱い思いを語ってもらおう。
「浜圭介先生から曲をいただけるかもしれない」
昨年新曲のお話をいただいた時、ディレクターからそう言われました。デビューをしてから、これまで錚々たる先生方からたくさんの素晴らしい作品をいただいてきました。その一曲一曲から教わることはとても多くて、一つひとつ大切に歌ってきた僕の宝物です。
子どもの頃、僕は北島師匠の曲「漁歌」がとても好きでした。他にも「舟唄」や「石狩挽歌」。どれも浜圭介先生の作曲された作品です。子どもながらに、これらの曲が持つ世界観が好きだなと感じたのを覚えています。
そんな中、今回ようやく念願かなって浜先生の曲をいただきました。
「もし作っていただけるのでしたら、”これぞ浜先生だ、という曲をいただきたい”と、それだけは先生に伝えていただけますか」
子どもながらに僕の心に残っているあのメロディー、浜先生の作られる世界観たっぷりの曲を歌いたい。
今年になり浜先生に初めてお会いした時、先生はおっしゃいました。
「時代とともに曲も曲調も変わっていく。昔の僕の作ったあの曲たちも、あの当時は良かった。でも今は時代とともに曲も変わるから、俺も変えてきたんだ。でも北山くんが言うから、俺の懐かしい風をちょっと入れたよ……」
新曲「風物語」は、まさに僕が歌いたいと望んでいた世界観というものそのままの作品でした。スケール感があり、寂しいところと、いきなりガーっと転調してマイナーからメジャーに変わるという、ひとつの曲の中で大きく動いていきます。
物語は、北海道でニシン漁に命を懸けて生活をしている人々の歌です。今は“人生100年時代”と言いますが、人間にとっては100年ってとてつもない時間ですよね。その間にいくつ時代は変わっても、風は変わらず今も同じように吹いている。変わらない風を感じるという壮大なテーマがあります。
ニシン漁はすごく過酷で命がけで、昔大漁の時期にはニシン御殿が建てられるくらいだったそうです。今も大漁を夢に見て生活をされている皆さんの姿を歌わせていただくということで、僕なりに勉強してよりいっそうこの歌の大きさというか、伝えていかなくてはいけない歌なんだなということを感じました。
タイトルもいいですよね、「風物語」。ちょっと演歌ぽくはないタイトルで優しい感じもする。でも聴いていただいたら皆さん驚かれると思いますが、とても力強い歌です。風がうわっと吹いたと思うとすっと風が弱まったり、サビになるとまた吹き出す、というような歌の中でさまざまな風が吹いているんです。ぜひ皆さんにも感じて欲しいですね。
もちろんテレビなどでは拝見していましたが、浜先生とは今回初めてキー合わせの際にお会いしました。
寡黙な方で、いきなりギターをバッと広げて、「今日はキー合わせとこの曲を歌うにあたっての歌唱法を伝える。今回はこれまでの北山くんの歌を0(ゼロ)にしてくれ。リセットして俺の世界観の歌い方で歌ってくれ。“新しい北山たけし”を出したいんだ」。
出だしの「男はよ」から、全部頭打ちで力強く来いと。命がけの歌だから力強く、閉めて絞り出すような感じで歌いました。「女はよ」のところは優しく歌いたいだろうけど、命がけで漁に行く男を待つ女性は強いんだと。課題をいただいて、全体的に強く、頭を強く歌うことを意識してレコーディングまでのどを作りました。少しのどはやられました(笑)けど、さらに強くなったと思います。
そして臨んだレコーディングでしたが、30分も歌わずにとてもスムーズに終わりました。先生は集中型のようで、一回に集中して爆発させるような感じでした。アレンジがついて音が流れてきて、僕も先生が言われた通りガッと歌ったら、どんどん先生のテンションも上がってきて、「これは年末行けるな」という話にまで盛り上がりました。結構クールな先生ですが、当日は熱かったですね。先生の思いがとても伝わってきて、うれしかったです。
なかなか収束が見えないコロナ禍。そんな中でも僕のことを心配し応援してくださる皆さんには、本当に感謝でいっぱいです。この新曲「風物語」は、念願だった浜先生の楽曲でありますし、先生が引き出してくださった“新しい北山”の歌い方、歌唱法にチャレンジした曲でもあります。北山たけしの新しい風を、そしてニシン漁で命がけで働く皆さんの熱い風を、この曲を通して感じてください!
2021年4月21日発売
風は100年前と変わらずここで吹き続ける
北山たけし「風物語」
2021年に北山たけしが歌う新曲「風物語」は、自身が10年越しで熱望していた作曲家・浜圭介氏の手により手がけられた作品。北海道のニシン漁に携わる人々の姿や時代は変わろうとも不変なもの、大切な心を北山が新たな歌唱法に挑戦し力強く歌う。「命がけで漁をしている皆さんの叫びみたいな感じの曲ですので、熱く強く。サビは100年の風をいっぱい浴びながらそこに向かって歌っているような雰囲気で叫んでいただきたいなと思います」(北山)
Profile
北山たけし(きたやま・たけし)
1974年2月25日、福岡県生まれ。音楽教室を営む父の影響で、4歳ごろから歌い始める。1995年、北島三郎の内弟子となり、8年間修業。2004年「片道切符」で歌手デビューを果たす。2005年「男の出船」で『第56回 NHK 紅白歌合戦』に初出場。2009年まで、5年連続で『NHK 紅白歌合戦』に出場。2018年からは弟弟子である大江裕とユニット”北島兄弟”を結成し活動をスタート。同年末には『第60回 輝く!日本レコード大賞』で企画賞を受賞し、『第69回 NHK 紅白歌合戦』の特別枠として出場を果たす。