田川寿美

田川寿美が新たに表現する“白”の世界~新曲「白秋」で大人の純愛を歌う~

今年、歌手デビュー満30周年を迎えた田川寿美の新曲「白秋」は、長く師事しているヒットメーカー、幸耕平氏の作曲。作詞は「心化粧」「楓」など田川の近年のヒット曲を手がけたさいとう大三氏によるもの。人生の半ばを生きてきた女性が戸惑いながらも恋に落ちていく女心を、タイトルとなった“白秋”というキーワードに乗せて表現した大人の純愛物語だ。彼女の艶やかな声が聴く者の心を温かくする作品だ。

時代に寄り添いつつ、半歩先の歌を

――「女・・・ひとり旅」でデビューして30年。当時は“演歌界のアイドル”でした。

田川 デビュー当時は16歳でしたから、月日って恐ろしいですよね(笑)。こんなにも長く歌わせていただけてとてもありがたいことです。常に時代に寄り添いつつも、これからは少し半歩先の歌を提供していけるような歌い手でありたいと思っています。もっと大きな夢を言うのであれば、「この一曲で歌謡界の流れが変わったね」と言われるような歌を歌いたいと夢見ています。そういう意味では、新曲「白秋」が第一歩として成長してくれたらうれしいですね。

――新曲「白秋」はこれまでとは一味違う大人の純愛を歌っています。

田川 この曲をいただいた時にまず思ったのは、等身大の歌だということでした。まるで、自分の体に沿った洋服を着ているような感覚でした。今まで港演歌とか、ド演歌とか様々な作品を歌ってきましたが、やはり人様から見る私は、清潔感があり、歳を重ねてもあまり女々しくしていないというイメージだったと思います。

――作品の中の主人公が田川さん自身のイメージとなってしまっていた?

田川 そうですね。でも、(作詞の)さいとう先生が「人生の年齢を四季で表現すると、50代以降を“白秋”というんだよ」と教えてくださり、大人になったからこそ、真実の相手や恋に出会える、という歌世界を描いてくださいました。私自身も今の年齢だからこそ、理解できる作品です。

――それが「等身大で歌える」ということですね。

田川 「白秋」の歌詞はとても素敵で、心にスッと入ってきました。“白秋”という言葉も美しいですしね。かといって、あまり文芸寄りになっていなくて、誰もが共感できるわかりやすい言葉で表現されながらも、最後に“迷子の子供”とか“小さな巣箱”といった、言葉遊びのような印象的な言葉を書いてくださっています。「さすがだなぁ」って思いました。

――まさしく、新しい田川寿美の世界ですね。

田川 はい。そして、アレンジをしてくださったのが、德永英明さんのアルバムなどを手がけておられる坂本昌之さんでしたので、演歌・歌謡曲の世界に新しい風を吹き込んでくださったような気がしています。本当にチャレンジ第一弾ともいうべき新曲に巡り会えました。

パズルのピースがピタッとはまるように

――歌入れはスムーズにいきましたか?

田川 今回はとてもスムーズでしたね。今までの幸先生の作品は、歌うのに少しむずかしい部分もありましたが、そこがツボになり、印象的でもありました。でも、今回は先生が心の流れで作ってくださったメロディだなって思いました。ですから、パズルのピースがピタッとはまるように、私の心も、先生方の想いもひとつになったと思います。

――幸先生から何かアドバイスはございましたか?

田川 毎回、先生は「あまり歌い過ぎないように。語り部のように物語を説明する感じで歌いなさい」と言われています。たとえば1番に“優しい恋ですか”という歌詞があります。最初は強く歌っていたのですが、レッスンを重ねる中で問いかけるように歌うようになりました。私はこの曲のツボは、“あぁ恋にそっと 落ちていく”だと思っていたのですが、幸先生から“優しい恋ですか”のところがサビだと指摘され、その時初めて気づきました。ですので、“優しい恋ですか”の部分を大切に訴えかけるように歌っています。

――坂本昌之さんのアレンジはいかがでしたか?

田川 素晴らしかったです。レコーディングの時に完成したカラオケを実際に聴いて、震えるぐらいに感動しました。中々、こういう感情になることってないんですよ。自分の心はさておき、私は演じる役割ですから、与えられた歌をそれなりの平均点をとって表現すること。そこが重要だと思っています。でも、今回はイントロを聴いただけでゾクゾクっとしました。

キャンペーンなどで歌わせていただいていても、毎回この曲イントロが流れる度に何かの賞を受賞したかのような、歓喜に包まれた気持ちになれて幸せです。「女人高野」(作詞/五木寛之 作曲/幸耕平。2002年の作品)を歌った時のように、自信を持って歌とひとつになれた喜びを感じています。

早く皆さんの「白秋」になってもらえるように

――新曲「白秋」をどのように聴いてもらいたいですか?

田川 “白”って、子供の純粋な心の白もあれば、思春期の白もあります。でも、大人になっていろんな色がついてしまったけど、改めてそれをそぎ落とした白もあると思うんです。この曲で“大人の白”を感じていただけたらうれしいですね。

出会ったこととか、見た風景とか、それを染み渡らせて後半の人生を生きていきたいので、もしよろしければ皆さんもこの「白秋」でピュアな気持ちを一緒に感じていただきたいですね。「楽しいことはこの先もまだまだあるよ」って。

――最後に、満30周年を迎えて、長く応援してくださっているファンの方への想いを聞かせてください。

田川 本当に皆さん飽きもせずに深く愛してくださるなって、逆に頭が下がる思いです。ファンの皆さんは、私の思いをきちんと受け止めてくださいます。いつも愛を感じますし、本当にすごく力になります。とくにコロナ禍では、全国各地の神社にヒット祈願詣でをしてくださり、驚きと感動をもらえて、「この人たちがいるからこそ、私は頑張れるんだ!」という糧になっています。

長年にわたり応援してくださっている方たちは、家族を超えて私との人生を共に生きているような感覚で、純粋に真っ直ぐに私を見てくださっています。それに報いるように歌っていきたいと思っています。

新曲「白秋」では、新しい田川寿美の1ページとして、ファンの皆さんにより多く染み渡るように伝えていけるように頑張ります。そして、たくさんの方に聴いていただくことで、歌に命が吹き込まれるように思います。歌が勝手に成長して、自分の手を離れていきます。ですので、早く皆さんの「白秋」になってもらえるようにいっぱい歌いたいと思います。

(文=小西康隆)

 

Side story【取材後記】

歌一筋の30年間。「たかが歌、されど歌」

「歌は一生勉強だと思っています」という田川寿美さん。まさに歌一筋の30年だったようです。今はもう少し自分のためにも歌うことが大切かなとおっしゃっていました。

「ようやく大人の年齢に差し掛かり、歌手年齢としても30年を経て、今はもう少し自分のために歌うことも大切なのかなと思っています。自分を癒しながらですね。いつも歌を歌う時は何か見えないものとの戦いのような気がしていて、必死にそこに執着してきました。それが若いエネルギーでもあったんですけどね。よく先輩方が『たかが歌、されど歌』とおっしゃっています。ですので、いい意味で『たかが歌』だと思い、もう少し肩の力を抜いて、歌を愛する存在として、歌と対峙していけたらいいなと思っています」(田川寿美)

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2022年7月6日発売
デビュー満30周年の新たな挑戦
田川寿美「白秋」
田川寿美

「白秋」
作詞/さいとう大三 作曲/幸 耕平 編曲/坂本昌之
c/w「ふたりの花」
作詞/さいとう大三 作曲:幸 耕平 編曲/石倉重信
日本コロムビア COCA-18023 ¥1,350(税込)

デビュー満30周年を向けた田川寿美の新たな魅力を引き出した「白秋」のカップリング曲は「ふたりの花」。実らぬ恋を歌った演歌で、従来からの田川ファンにしっかりと訴えかける楽曲となってる。
「『ふたりの花』は、いつか二人になれたらいいなあ、といういじらしい女心の歌で、王道演歌です。『白秋』という歌謡曲と、演歌作品の『ふたりの花』で2色の色合いを楽しんでいただけるCDになりました。『ふたりの花』の世界観も好きです。こちらをA面にしてもいいぐらいの作品です」(田川)

Profile
田川寿美(たがわ・としみ)
11月22日、和歌山県生まれ。13歳の時、MBS毎日放送の代表として「第13回 長崎歌謡祭」に出場し、グランプリを獲得。また翌年、「スターは君だ、ヤング歌謡大賞チャンピオン大会」に出場し、第6代目グランドチャンピオンに輝く。作詞家・悠木圭子氏の勧めで中学校卒業と同時に上京し、作曲家・鈴木淳氏に師事。1992年4月、「女…ひとり旅」でデビュー。日本歌謡大賞や日本レコード大賞を始め数々の新人賞を受賞。1994年、同曲で『NHK 紅白歌合戦』に初出場。2018年、作詞・さいとう大三氏、作曲・幸耕平氏による「心化粧」で、「平成29年度 藤田まさと賞」を受賞。2021年9月、デビュー30周年記念曲「雨あがり」をリリースし、同年11月に「デビュー30周年記念コンサート」を開催。2022年、デビュー満30周年記念曲「白秋」で新たな1ページを拓く作品に挑戦。

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