
加川明が新曲「口紅」で演じる健気で寂しい”いい女”
加川明が3月3日に徳間ジャパン移籍第3弾シングル「口紅」を発売した。一途に愛する人を待ちながら、健気にひとり口紅を引く寂しいけれど”いい女”。シンプルかつリズミカルなメロディーに、役者として培った演技力や表現力を生かしたムードある語り口の加川の歌唱が光る。
女性を象徴する口紅をモチーフとした切ない歌謡曲
Q 2015年に現在の徳間ジャパンに移籍をされて、今回の新曲「口紅」が第3作目のシングルですね。およそ3年半ぶりの発売となりました。
加川 本当はね、昨年新曲を発売する予定だったんだけど、このコロナ禍で延期になってしまいました。でももうこれ以上待てないだろうということで、昨年の秋ぐらいから制作を始めました。
Q 愛する男性に翻弄される女性の姿を歌った、第1作目の「指輪」を踏襲されたような作品で、口紅という女性を象徴するモチーフが印象的な切ない曲ですね。
加川 そうなんです。「指輪」と同じ作詞が麻こよみ先生、作曲が宮下健治先生の楽曲で、前作「恋のダンスがとまらない」がノリノリの作品だったので、今回はもう一度僕の得意とする女唄を歌いましょういうことになりました。麻先生が、本当は「香水」をモチーフにした作品も考えたんだけど、今人気の若い男の子の曲がすごすぎてかぶっちゃうから、それはさすがにと思って「口紅」で詞を書いてくださったと言っていましたよ(笑)。
○
Q とてもシンプルで耳馴染みのいい曲ですね。
加川 うん。僕もね、最初数回聴いただけで体にスッと入ってきたので、カラオケファンの皆さんもきっと歌いやすいんじゃないかなと思います。これは僕の中では成功かなと手応えを感じていますね。いい曲に仕上がりました。
Q そして、一番気になるところですが、この主人公の男女は……いけない恋の関係なんですかね(笑)?
加川 麻先生が「この男悪いやつよね〜」って自分で書かれているのにおっしゃっていましたよ(笑)。僕が思うには、色々な女性に手を出してて、みんなに上手いことを言える男性かなという気がするんだよね。いい時になったら帰ってきて優しくして、またそっと出ていって。ひとりの女性に定めない昭和のプレイボーイの男というかね。
Q 主人公は健気な女性ですよね。ひとりで愛する男性のために口紅を引いて待っているというのが切ないです。
加川 その男性を待ちながらメイクをして口紅を塗りながら彼のことを考えている。彼は来た時、その瞬間は優しくしてくれるんだけども、心はどこに行っているのかわからないしまた違うところに行ってしまうかもしれない。待つ女だもんね。やっぱり女性も昔の昭和のイメージだよね。最近の女の子で彼のために口紅を引くって子はいるのかね……?
Q おそらく……自分のためにで、彼のためにはしませんね(笑)。
加川 そうだよね(笑)。
Q レコーディングの際に、先生方から歌う上でアドバイスなどはありましたか?
加川 宮下先生にはレッスンもしていただいているだけど、その時もレコーディングの時も「こういう切ない女心の歌だけども、逆に明るく歌ってよ」って言われましたね。僕も「なるほどな」と思いました。悲しい女心の歌をかえって感情込めすぎて暗く歌うと、聴いている人はもっと辛くなっちゃうから。麻先生は「ジャケット写真はいやらしい感じではない雰囲気で撮ってね」とおっしゃっていました。女唄なんだけどもどこか爽やかさが残っている男のイメージの写真の方がいいわねと。
Q 加川さんご自身が歌う時に工夫されたり、心がけられたところはありますか?
加川 サビの部分で、「こんなに〜好きなのに」のところは気をつけながら歌いました。僕の特徴というか、鼻に抜ける高音が個人的に好きなので、そこは三番まで気持ちよく歌わせていただきましたね。あと、最後に「あゝ 離せない あゝ 離せない」と二回繰り返すところがあるんですよ。ここは最初は一回だったんですけど、レコーディングの時に先生方が「最後もう一回入れて、”離せない”んだという強い女心を表現したほうがいいんじゃない」ということで二回になったんですけど、最後は高音がスコーン!と抜けるので僕も気持ちよく歌っています。
Q カラオケで歌う時のワンポイントアドバイスはありますか?
加川 この曲は本当にシンプルでそんなに難しい曲じゃないので、とにかく力まないでリラックスしながら前半は語るように歌ってください。サビの部分からちょっとリズムに乗って自分で楽しみながら、あまり暗くならないようにね、気持ちよく歌ってくださればいいと思います。そうすれば歌に表情が出て、聴いている皆さんも褒めてくれるんではないでしょうか(笑)!
顔が時代劇に向いていると言われ役者へ(笑)。でも、その経験は今に
Q c/w曲の「幸せのみちしるべ」は加川さんの作詞作曲ですよね。
加川 もう6作くらい前から自分でc/w曲を書かせてもらっていて、今回も3曲ほど作りました。内容としては年配の夫婦かな、年取ってくると男も女もみんなあちこち悪くなってくるしね。そんな中で順風満帆に夫婦生活が終わるってことはないし、どちらかが先に天国に行くわけじゃない。これまで色々なことがあったけど、残りの人生はお前と幸せのみちしるべを見つけながら生きていこうじゃないか、という感じですね。
Q 加川さんの実体験じゃないですけれど、反映されているところはないんでしょうか?
加川 これまでには自分の実体験の中から詞を書いたのも何曲かあるけど、今回はないね。どちらかというとギター弾きながら想像していたら、メロディーも自然にできてきたよ。
Q 作詞作曲されるのはお好きなんですか?
加川 好き!もう中学生くらいからギターをつまびき始めて、仲間と小さなバンドを組んだりしながら音楽をやってたの。1978年に『スター誕生!』に出るまでは、長男坊だし実家の跡を継いで寿司屋になるつもりが、オーディション番組に出たらチャンピオンになっちゃって歌手デビュー。デビューして、一番最初の事務所でたまたま芝居やれって言われて役者を長くやっていた期間もありましたけどね。顔が時代劇に向いてるって京都に飛ばされて(笑)。でも今思うといい経験で、役者も16年間やっていたんで今先生たちに詞をもらった時も、すぐその情景が映像が出てくるんだよね。それを想像しながら歌うんだけど、役者をやってきたことで生きている部分のひとつです。
Q 一昨年、2019年に歌手生活40周年を迎えられ、今年42年目ですがこれまでを振り返られて長かったですか?
加川 あっという間だよ。全然長く感じない。舞台の先輩たちから「まだまだひよっこだ」って言われることもいっぱいあるよ(笑)。でも、僕もなんだかんだ言いながらよくここまでやってきたと思う。不思議でしょうがないけどね。あきらめないでコツコツとという感じだったけど、舞台に立つ、歌を歌うことが好きなんだよね。一番は生で歌ったり芝居することだけど、好きで仕方がないの。小さな店であっても、どこでもいいの。人ももともと好きだから全然苦にもならない。僕の歌を聴いてもらえるだけで感謝感謝。それがひょっとしたらこれまでやってこられた理由なのかもしれないね。
Q 以前のような状況に戻るのにはまだまだかかりそうですが、今ファンの皆さんへ伝えたい思いやメッセージはありますか?
加川 本当はね、1日も早く全国を周りたいですよ。生の歌を聴いていただいて、また僕を見かけたら「明ちゃん」と気軽に声をかけてもらいたいですけど、それが今はできないので……寂しいです。だからそれまでは、この曲を聴いて覚えていただいて、感染予防の対策をしながらどこででも歌ってくださればそれが一番うれしいかな。また必ず皆さんのところへうかがいますから、待っていてください。
2021年3月3日発売
加川明「口紅」

「口紅」
作詞/麻こよみ 作曲/宮下健治 編曲/伊戸のりお
c/w「幸せの道しるべ」
作詞・作曲/加川明 編曲/Deep寿
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91326 ¥1,227+税
シンプルながらもリズミカルなメロディーに乗せて、愛する男性を口紅を引いて待ちわびる切ない女性の姿と心情を歌い上げるムード歌謡タイプの「口紅」。c/w「幸せの道しるべ」は、加川明自身が作詞作曲を書き下ろした作品。一緒に年を重ねてきた男女が、残り少ない人生を互いに思いやりながら生きていこうと誓うほのぼのとした温もりを感じさせる。
Profile
加川明(かがわ・あきら)
1958年5月20日、東京生まれ。寿司屋の長男として育ち、後を継ぐつもりで働いていたが、1978年、日本テレビ『スター誕生!』に出場し、第25回のグランドチャンピオンに輝き、人生が一一変。翌年「ひとりにしてくれ」で本名の”川崎公明”で歌手デビューを果たす。その後、1980年から1996年まで歌手活動を休止し、映画やテレビ、舞台を中心とした俳優として活躍。1996年、”京壮亮”に改名し「泣かせないで」を発売。2004年、”加川明”に再改名。2015年に徳間ジャパンへ移籍し「指輪」を発売。趣味はアウトドア。釣り、スキー、ゴルフとアクティブにこなす。