松前ひろ子、涙とサプライズ。知内町観光大使を委嘱され、新曲「矢越岬／命みちづれ」のヒットを決意。恩師・北島三郎先生を喜ばせたい！

2025.06.24

デビュー55周年イヤーの松前ひろ子が新曲「矢越岬／命みちづれ」の発売を翌日に控えた6月24日、東京・港区のライブレストラン青山で新曲発表会を開催した。発表会では、新曲「矢越岬」の舞台である北海道・知内町からサプライズで「知内町観光大使」が委嘱され、松前は驚きと喜びの涙を浮かべた。

新曲は昨年1月の「おんなの恋路」、昨年9月の「漁り火情歌／波止場で汽笛が鳴く夜は」に続くデビュー55周年記念シングル第3弾。「矢越岬」は松前の故郷・北海道知内町への思いを馳せる心情が描かれた望郷演歌であり、人生応援歌でもある。

一方、「命みちづれ」は松前の代名詞ともいえる夫婦演歌の真骨頂だ。共に作詞を麻こよみ氏、作曲を恩師・北島三郎氏が手掛け、両A面シングルとしてリリースされる。

「55周年と言っていただきますが、デビューしてすぐに交通事故に遭い、8年間もお休みした期間があります。だから、こうして節目を迎えられたのは、一人で歩いてきたのではなく、本当に多くの方々に支えていただいたおかげです」

改めてこれまで支えてくれたファンや関係者への感謝の言葉を述べた松前は、「矢越岬」は「私の人生そのものの作品です」と語った。

「麻先生が詩を書いてくださったんですが、一度も打ち合わせしたことがありませんでした」

だが、何度も松前のコンサートに足を運び、その都度、松前の苦労を聞き涙していた麻氏に打ち合わせは必要なかった。

作詞を手掛けた麻こよみ氏も発表会に駆けつけ、「レコーディングで北島先生がどんなアドバイスをされても、松前さんは『はい、わかりました』と、すべてを受け入れて歌いこなす。その姿に感動しました」と制作秘話を明かした。

「もう一曲の『命みちづれ』は、私から久しぶりに“夫婦演歌”を歌いたいとお願いしましたが、どちらも北島先生が私のために作曲してくださいました。レコーディングの時も、90歳というお体でわざわざ立ち会ってくださり、『ひろ子、ここはこうだぞ』と本当に細かく指導してくださいました。今でも心配してお電話をくださるんです。そんな先生を、この曲をヒットさせて喜ばせたい。先生の喜ぶお顔が見たいんです」

その言葉には、ただの師弟関係を超えた、深い愛情と尊敬の念が込められていた。

知内町商工林業振興課の南和敏課長、同課商工観光係の佐藤剛係長から「知内町観光大使」を委嘱された松前ひろ子。

発表会の中盤、突如、司会者から「故郷・知内町からお客様がいらっしゃっています」とアナウンスされた。ステージには知内町役場の担当者が登壇し、西山和夫町長の代理として、松前に「知内町観光大使」の委嘱状が手渡されるというサプライズが待っていた。

歌手を夢見て家出をした松前ひろ子。従妹でもあった北島三郎の弟子となり歌手デビューを果たしたが、順風満帆ではなかった。知内町観光大使を拝命し、感無量だった。

「え、え、全然知らなかった……。本当にびっくりです」

予期せぬ出来事に目を丸くする松前は委嘱状を受け取ると、目頭を熱くした。

「（同じ知内町出身の）北島先生が観光大使をされているので、自分には縁がないものとずっと思っていました。55年かかりましたが、本当にうれしいです。これからは知内町の牡蠣やニラ、『青の洞窟』の素晴らしさを、この歌と共に全国に伝えていきたいです」

念願だった故郷からの大役に松前は観光大使としての決意を述べた。

新曲発表会では、「矢越岬」「命みちづれ」、55周年記念曲第2弾「漁り火情話」が披露されたが、最後にもう一度、「矢越岬」がフルコーラスで歌われた。会場に流されたミュージックビデオは知内町で撮影され、地元の風景が多数登場していた。

「今日は絶対に泣かないと決めてステージに上がったんですけれど……」

そう語っていた松前だが、故郷への感謝、恩師や支えてくれたすべての人々への気持ちを思うと、終盤、涙を抑えることができなかった。苦難の道を乗り越えてきた55年間の重みと、感謝の気持ちが凝縮された、美しく輝く涙だった。

「55周年を走り切ります！」

波乱万丈の歌手人生を歩み、今なお多くの人に愛され続ける松前ひろ子。55周年を迎え、新たに故郷の観光大使という役目も担い、その歩みはさらに力強さを増していく。

なお、松前は10月、11月、12月に新曲「矢越岬」「命みちづれ」を課題曲としたカラオケ大会を開催する予定だ。また、7月から9月にかけては全国8会場で「松前ひろ子歌手人生55周年記念コンサート～出会いと縁に感謝を～」を開催する。このコンサートには、愛弟子の三山ひろしが特別出演し、師弟の絆でステージを盛り上げる。