美貴じゅん子

美貴じゅん子が涙を封印。デビュー30周年に師匠・細川たかしも祝福。「夢ある限り、この道を歩み続ける」

美貴じゅん子が6月22日、東京・千代田区のホテルニューオータニ「芙蓉の間」でデビュー30周年を記念するパーティーを盛大に開催した。司会は徳光和夫が務め、師匠の細川たかしをはじめ、作曲家の岡千秋氏、作詞家の石原信一氏や麻こよみ氏、山川豊など縁の深いゲストが祝福に駆けつけた。

デビュー25年目の2021年に古巣テイチクへ復帰するまで、17年にも及ぶ長い”冬眠期間”を過ごした美貴。22歳でデビューし、順風満帆な歌手人生を夢見ていたが、「世の中はそんなに甘くなかった」と振り返る。だからこそ、こうしてステージに立てる喜びを噛みしめながら、支えてくれたすべての人々への感謝と未来への決意をこの日も歌声に乗せた。

美貴じゅん子

「涙は流さない、恩返しができるステージで初めて泣きたい」

パーティーの開演を前に、美貴じゅん子はメディア取材に応じた。30周年という大きな節目を迎えた心境を問われると、力強い眼差しでこう語った。

「30年と申しましても、毎年コンスタントに新曲を出して活動できた30年ではありません。本当に十数年という長い冬眠期間がありましたので、今日この日を万感の思いで歌うという気持ちでもございません。歌手・美貴じゅん子として、また一人の人間・美貴じゅん子としての30年間の歩みを表現したい。(生活のため)アルバイトをしていた頃のお客様も今日、たくさん来てくださいました。歌だけでなく、私の30年を支えてくださったすべての皆様に感謝の気持ちを届けたいと思います」

美貴じゅん子

デビュー30周年記念パーティーでは普段あまり着ない振袖を着用した。

歌手としてステージに立てない苦しい時代があったからこそ、彼女の言葉には実感がこもる。その感謝の気持ちを伝えるため、この日のステージでは「涙は流さない」と固い決意を明かした。

「今日、涙は流しません。うるうるとしてはいますが、今、涙を流すのは違うな、と思うからです。本当に自分の歌がヒットして、例えばNHK紅白歌合戦のような大きなステージに立たせていただける時が来たら、その時に初めて、応援してくださった皆さんへの恩返しの涙を流したい。そう心に誓っています」

逆境を乗り越えてきた彼女ならではの強さと、未来への揺るぎない覚悟が感じられた。

30年の軌跡と感謝を込めたステージへ

美貴じゅん子は半年前から、構成作家の宮下康仁氏と二人三脚で準備を進めた。宮下氏は美貴の25周年公演の演出も担当しており、この5年間の成長を見てくれていたひとりだ。

「カラオケボックスで様々な歌を歌いながら、どんなステージにしようかと。先生は私の25周年公演でも演出を担当してくださいましたので、この5年間の成長も表現できるように構成を考えてくださいました。普段のキャンペーンやステージでは歌わないようなポップス作品も披露する予定です」

美貴じゅん子

美貴じゅん子、徳光和夫

美貴じゅん子、徳光和夫

「美貴じゅん子デビュー30周年記念パーティー」は、司会の徳光和夫による「スターを夢見てデビューした少女は、長い冬眠期間を経て再びこのステージに帰ってきた」という心のこもったナレーションで幕を開けた。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

普段はほとんど着ない振袖姿で登場した美貴は、オリジナル曲『海峡流れ星』を情感豊かに歌い上げ、第1部のステージをスタートさせた。

「本日はようこそお越しくださいました。改めまして美貴じゅん子でございます」と、美貴が深々と一礼すると、ステージに登場した徳光は、「30周年、誠におめでとうございます。しかし、30年間ずっと順風満帆だったわけではない。苦難の道のりがあったからこそ今日の輝きがあるのですね」と労いの言葉をかけた。

美貴じゅん子

「本当に長い冬眠期間がありました。その間も支えてくださった方々、また復帰のきっかけを作ってくださった応援団長の細川たかし師匠には感謝しかありません」

美貴じゅん子

(C)Tomoko Hidaki

美貴はそう語ると、復帰後のスマッシュヒット曲となった『土下座』を披露。続いて『放浪(さすらい)かもめ』、作曲の岡千秋氏が最高傑作だと評価する『桜色のオ・ヴォア』を歌い上げ、『雪の海』では30年の重みを乗せた圧巻の歌唱で観客を魅了した。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

多彩なカバーステージと豪華ゲストの祝福

第2部は昭和の歌謡ポップスをカバーするステージで始まった。これは「じゅん子ちゃんのポップスが聴きたい」という徳光のリクエストに応えたもの。生バンドの演奏に乗せて、島倉千代子の『愛のさざなみ』、伊東ゆかりの『小指の想い出』、弘田三枝子の『人形の家』を艶やかに歌い上げ、会場を懐かしい雰囲気で包み込んだ。

古閑正美

美貴じゅん子と同じテイチクへ移籍し、ソロとして初のシングル『月夜のメモリー』をリリースした古閑正美。

続いて、元・敏いとうとハッピー&ブルーのリードボーカル・古閑正美がゲストとして登場。ムード歌謡のヒット曲をメドレーで披露すると、テイチク移籍第1弾となるソロ初のシングル『月夜のメモリー』を紹介。テンポのあるムード歌謡で会場を沸かせた。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

ステージは第3部へ。大人っぽくロマンチックな淡いブルーのロングドレスに身を包んだ美貴じゅん子が登場すると会場はどよめいた。「憧れの歌手の曲を歌わせていただきます」と、テレサ・テンの『別れの予感』を披露すると、高橋真梨子や中山美穂への熱い思いを語り、高橋真梨子の『五番街のマリーへ』と、中山美穂&WANDSの『世界中の誰よりきっと』という時代を彩った名曲を自身の世界観で表現した。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

歌唱途中から客席へ降りた美貴は、いしだあゆみの『ブルー・ライト・ヨコハマ』へと歌い継ぎながらファンとの絆を確認し合う。

再びステージに戻るとシャンソンの名曲『愛の讃歌』を熱唱した。同じ細川一門の杜このみとジョイントライブを開催した際に同曲を歌唱したところ、「感動したから歌い続けて」と勧められたそうだが、美貴は歌唱力の幅広さを見せつけた。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

ステージ上のスクリーンには、長山洋子とはるな愛からの心温まるビデオメッセージが映し出された。長山は「じゅんちゃんとは裸の付き合いから始まりました。スーパー銭湯で偶然出会って」とユニークなエピソードを明かし、はるな愛は「彼女の歌への情熱に心を打たれた」と語り、美貴の30周年を祝福した。

長山洋子

長山洋子は美貴じゅん子との”裸の付き合い”について明かし、他の歌仲間とは違う親しみを感じているとコメントを寄せた。

はるな愛

はるな愛は美貴じゅん子にエネルギーをもらっていると話し、「哀愁漂う歌声で皆さんを魅了してください」と呼びかけた。

ここで山川豊が大きな花束を手にステージに現れた。「30周年おめでとう。これからもその素晴らしい歌声を響かせてください」と美貴にエールを送ると、自身の代表曲『アメリカ橋』を熱唱。パーティーを盛り上げた。

美貴じゅん子、山川豊

山川豊

師匠・細川たかしの眼差しと絆

30周年記念パーティーはクライマックスの第4部へ。美貴の恩師でもある作曲家の岡千秋氏と、作詞家の石原信一氏がステージに上がった。6月18日に発売された美貴の新曲『流氷たずね人』を手掛けた二人でもある。

美貴じゅん子、岡千秋、石原信一

岡氏は、石原氏とのコンビで美貴に提供した『放浪(さすらい)かもめ』、そして今度の新曲の歌詞にも”カモメ”が象徴的に登場することから、「年々素晴らしく成長している。カモメが似合う歌手だ」と絶賛。石原氏は、新曲のレコーディング時に美貴が「この歌の主人公はいつ幸せになれるんですか」と尋ねてきたエピソードを披露し、「歌のヒロインになりきっている姿に手応えを感じた」と語った。

美貴じゅん子、細川たかし

美貴じゅん子、細川たかし

そして大きな拍手の中、師匠の細川たかしが登場する。「デビュー当初の高音のキンキンした感じが取れ、本当に歌が上手くなった」と、愛弟子の成長に目を細めた。細川一門の歌唱法の特徴(!?)である「シャープする傾向」についてユーモアたっぷりに語り、会場の笑いを誘うと、二人は『浪花節だよ人生は』をデュエット。師弟の絆を感じさせる力強い歌声が会場に響き渡った。

感動のフィナーレへ~夢ある限り~

いよいよフィナーレへ。美貴じゅん子は、30年前に歌手人生をスタートさせたデビュー曲『ほおずき』を歌い始めた。しかし、込み上げる感情からか、途中で歌詞が飛んでしまうというハプニングが・・・。

美貴じゅん子

(C)Tomoko Hidaki

すると客席から見守っていた細川がマイクを握ると、「師匠が歌詞を間違うもんで弟子も間違ってしまった(笑)」とフォロー。会場を笑わせると、会場からは「頑張れ!」という温かい声援が飛んだ。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

師匠の優しさや客席の声に後押しされるように気を取り直した美貴は見事に『ほおずき』を歌い切った。その姿は彼女が歩んできた道のりと、不屈の精神を象徴しているようでもあった。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

美貴じゅん子

「バラの香水」を経て美貴は、『放浪かもめ』『海峡流れ星』に続く三部作ともいえるドラマチック演歌『流氷たずね人』を大熱唱した。

”あなたと逢える日 信じて生きる”と、一途に愛する人を捜し求める女性の切ない気持ちを歌う美貴のニューシングルだ。

美貴じゅん子

そしてラストは自身の歌手人生を歌った『夢ある限り』を熱唱した。ベストアルバム『美貴じゅん子30周年記念アルバム~夢ある限り~』のリード曲であり、客席からは作詞の円香乃氏、作曲の大谷明裕氏、編曲の伊戸のりお氏も見守っていた。

美貴じゅん子

美貴じゅん子

鳴り止まない拍手の中、美貴は改めて決意の言葉を述べた。

「歌手人生に復帰してまだ4年目、未熟者ではございますが、歌えなかった時代を取り戻すかのように、これからも駆け抜けてまいります」

美貴じゅん子

未来へ向けて・・・。「歌えなかった30代を取り戻すように」

開演前、美貴じゅん子が語っていた抱負がこの日のステージに凝縮されていた。

「華の30代だと思っていた時代に、私は歌うことができませんでした。その10年間、遠回りしたかもしれませんが、その分、50代、60代と衰えることなく、さらに良い歌をお届けしたい。体も喉も鍛えれば、必ず今よりもっといい歌が歌えると信じています。30周年の今日よりも40周年のステージがもっとすごいね、と言っていただけるようにこれからも精進してまいります」

美貴じゅん子

長い冬眠期間を経て、大輪の花を咲かせつつある美貴じゅん子。最後に披露した『夢ある限り』の一節、「まるで夢をみているよう 信じたこの道を歩き続ける」は、まさに今の美貴の心境そのものだろう。

“冬眠”という長い夜を越えて光り輝くステージに立てる喜びと、それを支えてくれたすべての人々への感謝。彼女はその想いを歌声に乗せ、これからも“夢ある限り”信じた歌の道を歩んでいく。

 


2025年6月18日発売
美貴じゅん子「流氷たずね人」
美貴じゅん子

「流氷たずね人」
作詞/石原信一 作曲/岡千秋 編曲/猪股義周
c/w「待ちわびて…人生」
作詞 石原信一 作曲/岡千秋 編曲/ 猪股義周
テイチクエンタテインメント TECA-25025 ¥1,550(税込)

【Amazon】美貴じゅん子「流氷たずね人」


2025年3月19日発売
『美貴じゅん子30周年記念アルバム~夢ある限り~』
美貴じゅん子

テイチクエンタテインメント TECE-3742 ¥3,300(税込)

【Amazon】『美貴じゅん子30周年記念アルバム~夢ある限り~』

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