松阪ゆうき

【インタビュー】松阪ゆうき、新曲「まにまにのまに」で魅せる官能のグルーヴと情熱のボーカル

“スーパーハイブリッドシンガー”松阪ゆうきが、デビュー10年周年に放つ通算9枚目のシングル「まにまにのまに」。この一枚は、彼のアーティストとしての現在地と、未来への野心的な挑戦状を見事にパッケージした傑作だ。表題曲「まにまにのまに」で都会の夜の危険な香りを漂わせる一方、カップリング「恋花火」では誰もが胸に秘める夏の日の郷愁を歌い上げる。この鮮やかなコントラストこそ、彼の真骨頂と言えるだろう。

 

松阪ゆうき

「何だろう?」と思わせる、ユニークなタイトルと刺激的な歌詞の世界

「まにまにのまに」は許されない恋の渦中で揺れ動く心を、洗練されたシティポップに乗せて歌う挑戦的な一曲。うねるベースラインと軽快なギターが織りなすグルーヴは、聴く者の体を自然と揺らす。これまでのイメージを覆す情熱的で疾走感あふれるボーカルで、松阪ゆうきの官能的な世界が堪能できる。

――通算9枚目となる新曲「まにまにのまに」。前作「黄昏のシルエット」で好評だったシティポップ路線を、さらに突き詰めた感じですね。

松阪 最初はカップリング曲の「恋花火」がA面(表題曲)だと伺っていたので、タイトルのイメージから「いい歌だろうな」と想像していたんです。でも、いざ表題曲が「まにまにのまに」になったと聞いて、「ん?」と(笑)。最初は何の歌だろう、どうなってるんだ? と思いました。当初はカップリング曲候補だったので、もしかしたらコミックソングかな?くらいの感じで、あまり深く考えていなかったんです。

しかも、前作で “松阪ゆうきの新境地”と言っていただいたのに、また“新境地”をやるのか!みたいな(笑)。でも、すごく面白い挑戦だなと思いました。

――制作はどのように進んだのでしょうか?

松阪 実は「恋花火」の方が先にできていたんです。そこから次をどうしようかという話になった時に、「まにまにのまに」のメロディが生まれました。作曲の大谷明裕先生が、前作の流れを汲んで、もっとポップな感じも良いんじゃないかと作ってくださったんです。ただ、曲はできたものの、なかなか歌詞がつかなくて。

そこで、作詞はテレビ番組でご一緒したシンガーソングライターの大柴広己さんにお願いしました。大柴さんは若い世代に人気の「すとぷり」(2.5次元アイドルグループ)にも楽曲提供されているようなポップスの方で、事務所の社長から大柴さんに「こういう曲があるんだけど、歌詞を書いてもらえませんか?」とお願いさせていただいたところ、本当に2日くらいでこの歌詞が上がってきたんです。驚きましたね。

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「前かがみで突っ込むように」――情熱的なボーカルで表現する疾走感

――「まにまにのまに」というタイトルもユニークです。

松阪 そうなんですよ。最初は漢字で「まにまにの間に」というイメージだったのを、全部ひらがなにしたので、どこで切って読めばいいのか一瞬わからなくなりますよね。でも、その「何だろう?」と思わせるのも、狙いの一つかもしれません。

――歌詞が出来上がって曲の印象は変わりましたか?

松阪 「ああ、こういう世界観になるんですね!」と。いきなり“薬指のリングを 外して”(冒頭歌詞)ですからね。「外すんですね!」って思いました(笑)。今までの僕の曲にはない、まさに断片的な、映画のワンシーンが次々と切り替わっていくような歌詞で、すごく新鮮でした。主人公の揺れ動く恋心が、まさに「まにまに」という言葉にぴったりだなと。

――歌う上で意識したことや、ディレクションで印象に残っていることはありますか?

松阪 普通の歌謡曲とはまったく違う歌い方がいいんだろうなと思いました。デモを歌ってくださった大柴さんの歌い方も、ちょっと癖のある感じだったので、僕も「あー」と伸ばすところを「うわー」と叫ぶようにしてみたり。

演歌や歌謡曲だと、少し「ためて」歌うことが多いんですが、この曲は大柴さんから「疾走感を出したいから、どんどん前かがみで突っ込むように歌ってほしい」と言われました。過去を振り返るのではなく、「今、まさに進行している」感じを出したかったそうです。

――まさにスーパーハイブリッドシンガーとしての新たな挑戦ですね。

松阪 これまで僕が歌ってきた世界とはまったく違うので、どう料理しようかと悩みましたけど、すごく楽しかったです。大柴さんのような40代前半の方からディレクションを受けるのも初めてで、演歌・歌謡曲の先生方とはまた違う、新しい風を吹き込んでもらった感じがしますね。

ステージで歌う時は、もう西城秀樹さんばりの情熱でやらないとダメな曲だと思っています(笑)。レコーディングの時は身振り手振りを交えながら歌ったんですが、まだ突っ込んで歌うことに慣れていないので、人前だともう少し大人しくなっちゃうかな(笑)。これからもっと激しく歌っていきたいですね。

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カップリング「恋花火」は心に響く、普遍のサマー・バラード

一転してカップリング曲の「恋花火」は、夏の夜空に咲いては消える花火に、甘く切ない青春の思い出を重ねた王道の歌謡バラード。浴衣姿の君、祭りの喧騒――誰もが胸に秘めるノスタルジックな情景が、美しいメロディーと共に蘇る。

――カップリング曲「恋花火」は、表題曲とは対照的な一曲ですね。

松阪 こちらは本当にストレートな歌謡曲で、聴いてくださる方がそれぞれの花火の思い出を重ねて、情景を思い浮かべながら聴いてほしいなと思っています。舞台が外苑前なので、神宮の花火(神宮外苑花火大会)をイメージされる方もいるかもしれませんが、ご自身の地元の花火大会なんかを思い出してもらってもいいと思います。

――この曲を聴くファンの方に、どんな風に楽しんでほしいですか?

松阪 もう、皆さんそれぞれの妄想を膨らませてほしいです(笑)。「僕とデートに出かけた」と思って聴いてもらってもいいですよ。「あの時、ゆうきくんは優しかったのにな・・・」なんて思いながら。切ないけれど美しい、そんな夏の思い出に浸ってもらえたらうれしいですね。自分自身が主人公になって、この曲の世界観に入り込んで聴いてほしいです。

――表題曲とカップリング曲で、ここまでカラーが違うと、歌う側としても気持ちの切り替えが大変ではないですか。

松阪 そうかもしれませんね(笑)。特にこの2曲は、主人公の感情のベクトルがまったく違うので。でも、いろんなジャンルを歌えるというのが、僕自身の個性の一つだと思っています。演歌や歌謡曲が好きな方には「恋花火」を、そして新しいものに触れたい方には「まにまにのまに」を、と両方楽しんでいただけるのが、今回のシングルの面白いところかなと思います。

――ジャケット写真も、これまでの雰囲気とはガラリと変わりましたね。

松阪 そうなんです。原宿の夜に撮影しました。曲のイメージに合わせて、正面を向くのではなく、夜の街でちょっと怪しげな雰囲気で撮りたいという話になって。実はこれ、締め切りを過ぎてから撮り直したんですよ(笑)。「正面を向いてるのしかないので、ちょっと待ってください!」って。

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”脱いでもすごい(!)”体づくりと、歌への飽くなき探求心

――幅広いレパートリーを歌いこなす“スーパーハイブリッドシンガー”として大活躍ですが、プライベートでも多趣味ですよね。 最近ハマっていることはありますか?

松阪 実は最近、ジムに入会しました。パーソナルトレーニングを一度受けたら、「伸びしろしかありませんよ!」って言われて(笑)。まあ、やってないんだから当然なんですけど。痩せたいと相談したら、足の筋肉をつけると代謝が上がるから良いと。それで、お金を払えば行くようになるだろうと思って、意図的に自分にスイッチを入れるために始めました。今は週に2回くらい、有酸素運動をしてから筋トレをしています。

――すごいですね!

松阪 脱いでもすごい、みたいな身体になりたいなと(笑)。まだなってないですけど、それを目指して。ゴールドジムのTシャツをしまむらで買って、形から入ってます。冗談はさておき、やっぱり年齢を重ねると体力も落ちてくるので、こういうトレーニングが歌にもつながればいいなと思っています。

――2015年10月21日に「ふるさと帰り」でデビューしてまもなく丸10年を迎えますね。これからも挑戦は続きますか?

松阪 デビューした時は袴をはいて、民謡がベースの演歌を歌っていたので、まさか10年後にこんなにアップテンポな不倫の歌を、前かがみで歌うとは思ってもいませんでした(笑)。でも、いろんなジャンルの曲に挑戦させていただく中で、自分では想像もしていなかった世界観を歌えるのは本当に面白いですね。

もちろん、新しいことに挑戦するのは大変です。「こんなのやったことない!」って枕を抱える時もあります(笑)。でも、歩みを止めたら終わりだと思うので。これからも挑戦し続けることで、15年、20年と歌い続けていきたいです。この曲をきっかけに、今まで僕を知らなかった人にも僕の歌が届いたらうれしいですね。

 


2025年6月11日発売
松阪ゆうき「まにまにのまに」
松阪ゆうき

「まにまにのまに」
作詞/大柴広己 作曲/大谷明裕 編曲/西村真吾
c/w「恋花火」
作詞/友利歩未 作曲/大谷明裕 編曲/西村真吾
徳間ジャパンコミュニケーションズ KCA-91625 ¥1,500(税込)

【Amazon】松阪ゆうき「まにまにのまに/恋花火」


松阪ゆうき

profile
松阪ゆうき(まつざか・ゆうき)
10月12日生まれ、三重県鈴鹿市出身。幼い頃から祖父の影響で民謡に親しみ、音楽大学で声楽を学ぶ。卒業後はミュージカルの舞台などで活躍後、2015年に「ふるさと帰り」で演歌歌手としてデビュー。民謡で培った確かな歌唱力と、クラシックで磨いた表現力を武器に、演歌・歌謡曲からオペラ、POPSまで幅広いジャンルを歌いこなす“スーパーハイブリッドシンガー”として注目を集める。2019年には「日本作曲家協会音楽祭2019奨励賞」を受賞。特技はピアノ、書道(三段)、ものまね。介護福祉士や温泉ソムリエ、旅客機・エアライン検定など多彩な資格も持つ。

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