音楽に魅せられた川奈ルミが放つ、不思議な魅力

今年歌手デビュー20周年を迎えた川奈ルミの記念曲「愛遥かに」は、一途に愛する人を思い続ける情熱的なラブバラードだ。生まれ持った魅惑のハスキーボイスで、小柄ながらもパワフルに歌い上げる姿は、音楽に魅せられ、これまで歩いてきた人生で培ってきた自信に満ち輝いている。

 

心を揺さぶられた二つの出合い

川奈ルミは不思議な魅力を持つ女性だ。少女のように純真無垢な笑顔を見せたかと思うと、妖艶な女性の顔で淡々と語る。幼少の頃は、活発でキャッチボールが大好きな、そしてちょっと早熟な女の子だった。

「私は自分でも変わった子どもだったと思います。男の子みたいで、おしゃれや女の子がするようなこと、当時人気のあったアイドルなんて全然興味がなかった」

9歳の時には、以前容姿がそっくりだと話題にもなったデヴィ夫人に憧れを抱いた。近所の銭湯でたまたま開いた雑誌に載っていた夫人に一目惚れしたという。

「綺麗な人だなというのと、ゴージャスさに目を奪われました。数年前、偶然友人が夫人と知り合いで『小さい時から大ファンなの』って話したら、私のライブに来てくださって。そしたら夫人が、『あなた、わたくし感激しましたわ』って。うれしかったですね。それから応援していただいているんです」

音楽との出合いは15歳の時に突然訪れた。川奈はある音楽に触れ、初めて心を奪われる経験をする。

「メキシコの歌『アドロ』(※1)を初めて聴いた時、なんて情熱的なんだろう! って、大きな衝撃を受けました。それまでは音楽自体にも興味がなくってね、歌もすごい下手で、人の前に出るなんてとんでもない、恥ずかしいと思っていました。本当は、いまだに恥ずかしいんですよ。ステージに出る前は、いつも怖くて怖くて……でも、それから絶対生バンドでこの曲を歌いたいって思うようになりました」

高校卒業後に上京して、「あの情熱的なラテンを歌いたい」とクラブシンガーとして活躍した。しかし当時は、だんだんとキャバレーや生演奏で音楽を聴かせる場所が存在感を失いつつあった時代。

「歌う場所もなくなっちゃうな……」。そんなことを考えていた矢先、2回目の転機となる音楽との出合いを果たす。

「青江三奈さんの歌を聴いたんです。初めて青江さんの歌を聴いた時、『アドロ』を聴いた時と同じくらい心が揺さぶられた。二度目の衝撃でした。“どうやって歌っているんだろう? ” “どういう表現しているのかな?”って、研究しましたね。私も日本の歌をあんなふうに歌える歌手になりたい。それと、オリジナルの曲を持っている歌手になりたい。そう強く思ったんです」

そこで川奈は、もう一度自分の歌、技術を見つめ直してみようと、作曲家の故・朝月廣臣(ひろおみ)氏のもとへ弟子入りしレッスンを重ねた。そして2000年に「湖愁記」で、念願の歌手としてスタートを切る。

デビューにあたり、芸名も憧れの青江三奈の「三」を縦にして「川」にし、「川奈」と自ら考えて名づけた。

「自分でもなかなかいい名前をつけたなって思っています(笑)」

 

「歌に出合ってから、いつも幸せ」

今年6月に20周年の節目を迎え、10月7日にリリースされた記念シングル「愛遥かに」は、会いたくても会うことができない愛する相手への一途な愛や思い続ける強い決意を、川奈が迷いなくまっすぐに歌い上げる、壮大なスケールで描かれた情熱的な物語だ。

「よく朝月先生に「どなるな」って、「親の仇みたいに歌うのはやめろ。喧嘩腰に歌うのはやめろ」と言われていました。性格なんですかね、主張が強いから(笑)。それが歌に出るんでしょうね。その強さを、今回はできるかぎり抑えるようにして歌いました。サビの“たとえ〜強く抱かれた”のところは思いきり声を出しましたけど、あとはやっぱり寂しい歌なのであまり親の仇は良くないので(笑)、一生懸命抑えたつもりです。情熱的な愛の歌で、盛り上がるところもあって、語るところもあって、歌自慢の方には楽しく歌っていただけるんじゃないかと思います。いつも“私の歌は難しい”って言われるのですが、それがとても残念です。難しい歌ではないのでぜひ皆さん、覚えて歌ってください」

 

3年ほど前からはこちらも縁あって出会い、長いこと親交を深めてきた日本を代表するギタリストで歌手のアントニオ古賀に師事し、自らの歌唱力に磨きをかける傍ら、ともに愛するラテン音楽の普及に寄与する活動も行っている。

「私は歌に出合ってから、いつも幸せ。歌を歌っていたからこそ、いろんな方々との出会いがありました。子どもの頃から好きだったデヴィ夫人やアントニオ古賀さんとも近しくさせていただけるというのも、歌のおかげ。そして、これまで20年も歌い続けられたことは、私の歌を応援してくださる方がいたから。だからその皆さんに喜んでいただくには、やはり曲をヒットさせること。そのことを胸に、しっかりとこの新曲を歌っていきたいと思います」

また、少女のようにあどけない笑顔を見せた。

 

※1)「アドロ」は、メキシコの作曲家アルマンド・マンサネーロの代表曲のひとつで、1967年に発表されたラテン曲。スペイン語で歌われ、日本ではアルゼンチンの歌手、グラシェラ・スサーナの歌唱で有名。動詞《adorar》の一人称現在形で「熱愛する」といった意味がある。

 


2020年10月7日発売
魅惑のハスキーボイスで歌い上げる
川奈ルミ「愛遥かに」

「愛遥かに」  
作詞/かず 翼 作曲/南乃星太 編曲/佐野博美 
c/w「愛の休日(ホリデー)」  
作詞/山川啓介 作曲/杉本真人 編曲/佐野博美  
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91302 ¥1,227+税

デビュー20周年を飾る記念曲「愛遥かに」は、愛する人に一途に思いを届ける情熱的なラブバラード。パワフルな中に切なさや健気な心情が込められた川奈のボーカルが印象的な一曲。「距離があって会えないのか、もう亡くなってしまって愛する人と会えないのか……。いろいろ想像できるシチュエーションですが、私は亡くなってしまったとは思わないようにしています。寂しくなっちゃうから。前半の二行の語りの部分と歌うところの強弱をつけてドラマチックに。あとはもう好きな人を思い出して歌っていただければ」(川奈)。c/w「愛の休日(ホリデー)」は、1979年に雪村いづみが発表した作品を川奈のリクエストでカバーした。「雪村いづみさんが歌われたコマーシャルソングで、子どもの頃に聴いたこの曲をいい歌だなって思ってすごく覚えていて。すごく幸せそうな、希望があふれている歌詞がすごく好きです。私の願望かな? 曲も最高なんです。雪村さんみたいに素敵には歌えませんけど、私なりに一生懸命がんばって、この曲をもっと多くの方に知っていただきたいなと思います」(川奈)

 


Profile
川奈ルミ(かわな・るみ)
12月12日、大阪府生まれ。15歳の時にテレビから流れてきたメキシコのラテン曲「アドロ」に衝撃を受け、歌手を志すようになる。高校卒業後に上京し、クラブシンガーとして活動。元歌手であり作曲家の朝月廣臣氏に師事し、2000年に「湖愁記」でデビュー。魅力的なハスキーボイスと類まれな歌唱力で、ラテンやカンツォーネから昭和歌謡までジャンルレスに活躍する。今でもステージに上がる前は緊張するというが、「厚化粧してつけまつげをつけるとスイッチが入る。人が変わっちゃうみたい(笑)」(川奈)。メイクの師匠は敬愛するデヴィ夫人。顔立ちももともと似ており、「夫人からも『あなた、わたくしに顔似てますわね』って言われるんです(笑)。本当に大好きです」(川奈)。