福田こうへいが歌う2つの物語~2022年の勝負曲「ふるさと山河/一番マグロの謳」~
例年同様、年始めの元日に新曲をリリースした福田こうへい。今回はデビュー10周年記念曲第3弾として、両A面シングルとなる「ふるさと山河」「一番マグロの謳」を世に送る。
「ふるさと山河」は雄大な岩手山をはじめとした東北ならではの風景を舞台に、ふるさとを想い、また懐かしい友へも心を馳せたメジャー調の作品。福田の伸びやかな高音が心地よく耳に届く。
一方の「一番マグロの謳(うた)」は、新たな1年の始まりにふさわしく、力強くパンチの効いた声が聴く者の背中をグイと押す。それもそのはず。作詞は本州最北端の町、青森県下北郡大間の現役マグロ漁師で、第一八千代丸の熊谷義宣氏。偶然の出会いから、今ではプライベートでも親交を深めている間柄だ。同曲はマグロ漁師の1本釣りに賭けた生き様を描いているが、それは同時に「歌い手としての自分の生き様と重なる」と福田は言う。
大間のマグロ漁師の声援を受け、2022年の勝負曲にふさわしい一曲。それは、新たなファン獲得にもつながりそうな予感だ。
ふるさと山河~みんなどうしているかな?~
東京から盛岡へ帰り、岩手山を見ると「帰ってきたな」という安心感が生まれます。「おかえり」と言われているようで、東北を故郷に持つ人の多くはいつもそんな気持ちなのではないかなと思います。
オーソドックスな歌詞ではありますが、メロディーがついたらいろいろな感情が沸いてきました。ふるさとを想うと同時に、以前そこにいたはずの「人」に心が向いていく。俺も45歳になりましたが、子どもの頃に一緒に遊んでいた仲間は各々の道を歩み、さまざまな理由で故郷から離れた人もたくさんいます。ちょうど人生の折り返し地点といえる年齢。ここでふと足を止めて「みんなどうしているだろうか」「ふるさとを忘れてはいないだろうか」と、そんな思いを抱かせるような曲が「ふるさと山河」だと思っています。
望郷演歌とはちょっと違う、問いかけの歌になるでしょうか。だから、歌い方も声を張り過ぎず、余韻を残して。いつものように作曲の岡千秋先生からは、「こうへいちゃんの歌いたいように歌って」と言われ、そのとき感じたイメージを大事にレコーディングに臨みました。本来自分の持っているキーから少し下げて、20年後、30年後にまた同じキーで歌えるようにしています。その頃の年齢になったら、今とはまた違う感情で故郷や「友」のことを想うのではないでしょうか。
同窓会、同級会のときなど、皆さんで歌うのもいいのではないかと思います。
一番マグロの謳~きっかけはマグロ漁師との出会い~
大間のマグロ漁師さんたちとは、数年前から親しくさせてもらっています。出会いはまさに一期一会でした。俺はデビュー前から大間のマグロ漁師さんのファンで、ドキュメンタリー番組もよく見ていたんですが、あるときテレビで見たことのある漁師さんがコンサートの客席にいるじゃないですか。なんと熊谷義宣さんと菊池一夫さんのお二人が! びっくりして声をかけましてね。向こうもびっくりしていましたが、お二人は来られなくなった方の代わりに来たそうで、この“たまたま”がなければ本来は出会うはずのない人でした。すごい縁でしたね。以来、定期的に大間にお邪魔するようになり、たくさんの漁師さんとも知り合うことができました。
「一番マグロの謳(うた)」は、漁師の中でもとくに有名な熊谷義宣さんが詩を書いています。船の上で書き留めた詩があるというので送ってもらったら、それがちょうどレコーディングの打ち合せの最中。その場にいた四方章人先生と南郷達也先生に曲づくりをお願いたところ快諾してくださって、1週間もたたないうちに曲が出来上がってきたんです。できた音源を持って現地に出向き、後日ライブも行ってとても喜んでもらいました。絆もさらに深まりましたね。
一番マグロの謳~俺自身の生き様を重ねて~
この曲はとても気に入っておりまして、両A面ですが、自然と力が入ります。マグロの釣れる大間の海は、湾の中と比べて波の高さが半端なく、5~10mくらい違うんです。そんな荒れ狂う海に立ち向かうのだから、本当にすごい。プロとはこうなんだというのをいつも教えられます。
大物を釣れば大金で売れるマグロも、その後また釣れるかといえば保障はない。努力していないと絶対に釣果は出ない大変な仕事で、俺自身もデビュー曲がヒットしましたが、同じようにその後の努力なくして次のヒットはあり得ません。
また、漁師の親方は自分の子どもであっても仕掛けを教えないそうです。自ら考え、気づいて感覚を身につけなさいと。それはうちのオヤジ(民謡歌手の福田岩月さん)が俺に歌を教えなかったのと同じで、見て学び、自分のものにしろと言われていました。共通するものがすごくあるんです。
漁師の生き様を描いた歌詞は、歌い手としての自分自身の生き様とも重なります。だから大切に、末永く歌っていきたい。コンサートでもこの歌を生かせるような構成で、漁師さんに負けないステージに仕上げたいですね。
少し難しいかもしれませんが、のど自慢の方はぜひ挑戦してください。
(文=藤井利香)
2022年1月1日発売
デビュー10周年記念曲第3弾
福田こうへい「ふるさと山河/一番マグロの謳」
【CD+DVD】「ふるさと山河/一番マグロの謳」
DVDには「ふるさと山河」「一番マグロの謳」のミュージックビデオに加え、特典としてメイキング映像が収録される。
※ジャケット写真は表面と裏面。
【CD】「ふるさと山河/一番マグロの謳」
※ジャケット写真は表面と裏面。
profile
福田こうへい(ふくだ・こうへい)
1976年9月21日、岩手県生まれ。2012年、日本民謡フェスティバルにおいてグランプリを獲得。同年10月、キングレコードから「南部蝉しぐれ」で演歌歌手としてデビューする。同曲は元々、今は亡き福田の父、福田岩月のために作られた曲だった。都会の谷間で心が折れそうになる若者が、遠い故郷を思い出しながら頑張ろうとする姿を描いた作品。息子である福田が2010年にレコーディングしCD発売していたが、メジャーデビューをきっかけにロングヒット。2013年には「輝く! 日本レコード大賞」新人賞を受賞し、年末の『NHK紅白歌合戦』に初出場した。また2014年には第35回松尾芸能賞 新人賞を受賞。北島三郎に「あの歌声は歌謡界の宝だ」と言わしめる歌唱と、気さくな語りが人気。2021年はデビュー10年目を迎え、1月1日には市川由紀乃との共作アルバム「演歌 夢の競演」と、12作目となるシングルとして、デビュー10周年記念曲第1弾「かんべんナ」をリリース。7月にはデビュー10周年記念曲第2弾「男の残雪」を発売し、秋には東京・大阪・岩手(盛岡)の3カ所で、「福田こうへいコンサート2021 10周年記念スペシャル」を開催した。2022年1月1日、デビュー10周年記念曲第3弾「ふるさと山河/一番マグロの謳」をリリース。