福田こうへいが歌う「男の残雪」~何歳になっても少年の心を~
デビュー10周年記念第二弾として、「男の残雪」をリリースした福田こうへい。元旦に発売した第一弾「かんべんナ」に続く同曲は、福田の本流でもある自然と人生の有り様を、スケール感大きく歌ったメジャー調の作品だ。不器用ながら、生涯の伴侶に何とか楽をさせてやりたいと、重い雪を背負うかのように一歩ずつ進もうとする男のストーリー。福田自身、主人公のようにいつまでも少年の心を持っていたいとかみしめた。
デビュー10周年記念第2弾「男の残雪」
第一弾の「かんべんナ」は、タイトルからしてどんな演歌なんだろう・・・と、ファンの方の間でいろいろ憶測があったようですが、聞き心地のいい、ゆったりと覚えやすい歌だという反応が多かったですね。自分もそうですが、肉親を亡くしたあとというのは、もっと何かしてあげられたのではと後悔の念を抱くものです。とくに最近お身内を亡くされた方からは、「思い出してほろりときました」と、そんな声が届きました。
10周年第二弾となる「男の残雪」は、曲を聴いた時は、北島三郎先生が歌うようなメロディーだなと感じましたね。歌詞も含めて、落ち着いた王道演歌が来たなと。メロディーの上がり下がりが激して、「かんべんナ」よりは歌うのが少し難しんですが、そこは歌っていて面白みがあります。ただ、それだけに歌詞が入ってこないような歌い方だけはしないように気をつけました。
サビの「あぁあぁ 男の残雪」というところは、今までの曲になかった歌詞。“あぁあぁ~♪”と歌うのは初めてで、(北島)御大っぽいな~と思う部分ですね。民謡調に歌いつつも、節は回し過ぎず、本来のド演歌に必要な音階の節で歌っています。自分はキーが高いので、カラオケでは全体としてできるだけ皆さんが収めやすい、歌いやすい音の流れを意識しました。
今回、作曲を四方(章人)先生に、編曲を南郷(達也)先生にお願いしています。レコーディングではお二人の熱い仕事ぶりに感動しましたね。スケール感を出すための作業を南郷先生が進めながら、その横で四方先生が「音を足そうか」など、とても細かい作業をされていた。いつもそうなんですが、デモ音源を聴いた時とはまた異なる曲ができあっていく過程に、あらためて唸らされました。
何歳になっても少年の心を持っていたい
作詞は坂口(照幸)先生で、「おまえに楽を させたくて」という1番の歌詞にあるように、家庭を持った男の心情を描いた作品です。3番の冒頭「バカじゃできない 利巧はやらぬ」という歌詞もインパクトあって好きですね。バカをいろいろやってきたけど、すべては妻という支えがあってやれたこと。それを自覚しながらも、利巧で収まる気はないというのは、少年のような心が捨てられない気持ちの表れでしょうか。男っていつまでも、子どもでいたいという思いがありますから。
自分も若い頃は好奇心旺盛で、何でも自分でやりたがっては失敗する。そうやって初めていろいろ気づくんですが、いつもおじいちゃん、おばあちゃんがそれを叱るでもなく見守ってくれました。ぎりぎりまで口を出さず、親とは一歩離れた目線で見ていてくれたことを懐かしく思い出します。
今、自分も44歳になり、人生の折り返し地点と言えるかもしれません。そう思うと、あまり無理をせずに一度立ち止まって先々を考えてもいいのかなと思います。でも、何歳になっても少年の心は持っていたい。まだまだ、これから。教科書どおりには行かない人なので、変わらぬ好奇心でがんばります(笑)。
そして、2番の歌詞は、全体的に女性がよく口にするセリフではないかと思うんです。テレビで歌う時は1、3番だけで2番を歌わないことが多いので、コンサートではぜひ歌わねばいけませんね。新しい曲を出したばかりというのは、正直その曲をまだ味わうところまではいっていません。これから時間をかけてかみしめて、よりよい歌にしていきたいと思います。
この歌詞のような女性が身近にいたら・・・
「男の残雪」のカップリングは曲は「女舟」。今回、オリジナル作品として女唄に初めて挑戦した。恋に破れ、悲しみを抱えた女性の未練心を歌っているが、「何となく照れる」と正直に胸の内を明かす福田。さて、ファンの反応はいかに!?
カップリングの「女舟」は初の女唄ですが、いやいや、照れるなぁ。裏声が使えないので、女心を地声でどう表現するかちょっと悩みましたが、10周年ならではのチャレンジと思って歌っています。「男の残雪」よりは難しいという印象です。歌い込むのに、この歌詞のような女性が身近にいたら思い描けるかなと思いましたが、残念ながらまったく浮かばず、でした(苦笑)。
カラオケで歌う際は、裏声を上手に使える人なら切なさがより表現できると思います。でも、自分みたいにストレートに声を出す場合は、できるだけ優しく歌ってもらえたら。低いキーのほうが歌いやすいのではないかと思います。
カップリング曲をコンサートでほとんど披露しない方がいるかもしれませんが、俺はワンコーラスずつでもいいから歌うようにしたいと考えていて、ファンの方からも「それがとてもうれしい」という声をいただいています。今後のコンサートで、しっとりとした衣装でも着ながら(笑)、「女舟」もぜひ歌いたいと思っています。
2021年7月14日
10周年記念曲第2弾
福田こうへい「男の残雪」
profile
福田こうへい(ふくだ・こうへい)
1976年9月21日、岩手県生まれ。2012年、日本民謡フェスティバルにおいてグランプリを獲得。同年10月、キングレコードから「南部蝉しぐれ」で演歌歌手としてデビューする。同曲は元々、今は亡き福田の父、福田岩月のために作られた曲だった。都会の谷間で心が折れそうになる若者が、遠い故郷を思い出しながら頑張ろうとする姿を描いた作品。息子である福田が2010年にレコーディングしCD発売していたが、メジャーデビューをきっかけにロングヒット。2013年には「輝く! 日本レコード大賞」新人賞を受賞し、年末の『NHK紅白歌合戦』に初出場した。また2014年には第35回松尾芸能賞 新人賞を受賞。北島三郎に「あの歌声は歌謡界の宝だ」と言わしめる歌唱と、気さくな語りが人気。2021年はデビュー10年目を迎え、1月1日には市川由紀乃との共作アルバム「演歌 夢の競演」と、12作目となるシングルとして、デビュー10周年記念曲第1弾「かんべんナ」をリリース。7月にはデビュー10周年記念曲第2弾「男の残雪」を発売した。