白石恭子が表現する女心~「少しは私に愛を下さい」で小椋佳の世界を令和に
様々なジャンルの歌を歌いながら、“歌謡曲歌手”としてオリジナル作品を発表してきた白石恭子が小椋佳の作品をカバーする。「少しは私に愛を下さい」。1974年の発表以来、歌い継がれてきた作品を、白石はオーケストラ・アレンジで届ける。究極の女心=愛の物語が令和に引き継がれる。
新曲「少しは私に愛を下さい」は小椋佳さんが1974年に発表された作品ですね。
白石 はい。そんな小椋佳さんの約50年前のヒット曲をオーケストラ・アレンジでカバーさせていただくこととなりました。究極の「女心=愛」を歌わせていただきました。さらに光栄なことに、太宰治原作の映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』のメインタイトルバック(オープニングテーマ)に決定しております。シングルには映画用に改めてレコーディングしたバージョン(映画『斜陽』タイトルバックVer.)も収録されています。
同曲をカバーすることになった時はどんな気持ちでしたか?
白石 こんなにも素晴らしい作品を歌わせていただけるなんて、夢じゃないだろうか・・・なんという幸せ者だろうか、などと考えていたら、感動とともに、ご尽力くださった皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいになり、涙が出てきました。曲のアレンジは初体験となるリズム隊なしのオーケストラ・サウンドですから、ハードルは高そうだと思いました。でも、宝物のようなお話をいただたわけですから、私の歌でこの楽曲の素晴らしさをお伝えできるまで、必死で頑張ろうと心に誓いました。
レコーディングはいかがでしたか?
白石 音楽プロデューサーさんから“フォークソングなので語るように歌って”というご指示がありました。じつはずっとソウル系の黒人の喉に憧れて歌ってきたので、少し戸惑いはありましたが、今までの歌唱法はいったん忘れて、新たな白石恭子の世界を出せるよう努めました。
具体的には、息をたくさん吐いてハスキーに、ビブラートはなるべく少なく、種類も意識的に変えました。ビブラートの種類を変えるのは困難かと思いましたが、できてみると歌のアプローチが大きく変わりまして、自分にまだこんな伸び代があったのかと、少し驚きました。自分の世界を壊すというのも、時には大切なことですね。
雰囲気はいかがでしたか?
白石 2年ぶりのレコーディングだったので、とても緊張して普段通りの声がなかなか出ず、時間がかかりました。その後、映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』のサントラ盤用に改めてレコーディングした際に、なんと、名匠・近藤明男監督が来てくださり、映画のオープニングに適した歌い方をご指示いただきました! ほんの短時間で大胆に歌い方を変えるという経験はかつてなかったので、少し混乱しましたが、今後の歌手人生にとってとても貴重な体験、そして良い勉強をさせていただいたと思います。まったく異なる歌唱法になっていますので、二種類の「少しは私に愛を下さい」を聴き比べてみてください。
「少しは私に愛を下さい」はたくさんに人に歌われています。カラオケで歌う際のアドバイスをいただけますか?
白石 メロディーはどちらかというとシンプルなので、歌い方ひとつで曲のイメージが大きく変わる楽曲だと思います。思い切り感情を込めるも良し、淡々と語るように歌われるも良し。お好みの表現で自由に楽しんでいただければそれがベストかと思います。ただひとつだけ、主人公はただ悲しみの中にいるのではなく、健気にいじらしいほど真っすぐに恋をしている可愛らしい人なので、それを踏まえて、悲しくなりすぎないように表現していただくと、より一層この曲の良さが出るのかな、と思います。
カップリング曲「朝まだき」についても聞かせてください。
白石 「朝まだき」は、今年(2021年)発売された小椋佳さんのラストアルバム『もういいかい』に収められた一曲ですが、白石恭子がシングルカットさせていただくことになりました。これぞまさに小椋佳さんの世界が凝縮したような曲だと思います。そこにオーケストラのアレンジが加わり、壮大なスケールの恋歌となっています。
じつは初めてメロディーを聴いた時、正直、“どう考えても難しそうだ”と思ったんです。けれど、斬新かつホッコリする部分もありまして、サビのあとの「ほ、ほ、ほくそ笑む。 ど、どうかしたのかしら」という部分が、好きです。1番を聴くと、ちょっぴり官能的な恋の歌かと思われますが、2番になると単にそれだけではない大人の事情を垣間見ることになります。“朝まだき”という言葉の意味は、平たく言うと夜明け前だそうです。愛する人が、いつも夜明け前には帰ってしまう。ん~~・・・それって・・・。
今のお気持ちはいかがですか?
白石 この度大変光栄なお話をいただきまして、身が引き締まる思いです。小椋佳さんの名曲を歌い継がせていただくというのは、責任重大でプレッシャーも感じます。ですが、緊張ばかりしていても良い歌をお届けすることはできませんから、私自身がワクワクしながら皆様に歌をお届けできるよう、精一杯精進してまいります!
曲の持つ素晴らしさを最大限に
Q:今後の歌手活動についての目標は?
白石恭子 どのような歌でもチャレンジしていきたいです。これまでもカバー曲のレパートリーは、R&B、ディスコソング、ジャズ、演歌と、幅広く歌わせていただいてきました。オリジナル曲も、ムード歌謡→ラテン歌謡→歌謡ロック→フォークソングと、一貫性があるようなないような(笑)。大きなくくりで“歌謡曲歌手”と名乗ってはいますが、どんなジャンルであっても、曲の持つ素晴らしさを最大限に表現できる歌手でありたいと思います。
2021年9月15日発売
小椋佳の名曲を歌い継ぐ
白石恭子「少しは私に愛を下さい」
「少しは私に愛を下さい」は小椋佳が1974年に発表した作品。多くのアーティストにカバーされてきたが、白石恭子の「少しは私に愛を下さい」は、7人編成のオーケストラ“バラダン”による幻想的でドラマチックな演奏に包まれて、白石の新たな一面を発見できる作品となっている。「演奏も歌も、原曲とは異なる世界をお楽しみいただけると思いますので、聴いていただけるとうれしいです」(白石)。
また白石が歌う同曲は太宰治原作・映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』のオープニング曲として使用される。ちなみに小椋のラストアルバム『もういいかい』に収録された「ラピスラズリの涙」が同映画の主題歌に決まっている。
「朝まだき」はその『もういいかい』に収録された一曲のカバー。官能的な大人の恋の歌を歌っている。
太宰治原作 映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』
当時、“斜陽族”という流行語を生み出した太宰治のベストセラー「斜陽」の執筆75周年を記念して制作される『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』。監督は近藤明男。故・増村保造監督と、当時助監督を務めていた近藤が、40年以上前に二人で書いた脚本が映像化される。今年6月19日、太宰治の桜桃忌に、太宰治ゆかりの地・東京の三鷹市で製作発表記者会見が行われ、主演を務める宮本茉由をはじめ、安藤政信、白須慶子、岡元あつ子らが登壇した。会見の際には、2022年中旬の公開を目指すとしていたが、コロナ禍でクランクインが延期となるとのこと。公開日など最新情報はオトカゼでもお知らせする。
白石恭子も出演「温かい目で見守って!!」
じつは、映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』の中で役をいただきまして、初めて演技にも挑戦させていただくことになりました。宮本茉由さん、安藤政信さん、岩下志麻さん、柄本明さん、田中健さん、水野真紀さんはじめ、豪華出演者様に交じって少しばかり出演させていただきます。恐れ多いことばかりでプレッシャーを感じずにはいられませんが、せっかく宝物のようなチャンスをいただきましたので、思い切って楽しんでやらせていただきたいと思っています。温かい目で見守っていただければ幸いです。
profile
白石恭子(しらいし・きょうこ)
12月10日、千葉県生まれ。幼少のころからピアノを習い、高校時代はギターの弾き語りを人前で披露するなど音楽が好きだった。大学を卒業し、いったん就職するが、知人の紹介から音楽事務所のオーディションを受け合格し、プロのシンガーとして活動を開始。全国各地のライブ会場にて、歌謡曲、演歌、J-POP、ジャズ、オールディーズ、ディスコ、ソウルなど様々なジャンルを歌う。2016年6月15日、「雨の言葉」で歌謡曲歌手としてデビュー。2018年5月、故郷・千葉県山武市の観光大使に就任。ディスコバンドLIKE IT.IIのリーダーとしてボーカルも担当する。
白石恭子公式HP
白石恭子 公式ブログ
白石恭子Twitter
白石恭子 公式YouTubeチャンネル
2021年1月12日発売
遺作ともいうべきラストアルバム
小椋佳『もういいかい』
【収録曲】
01「開幕の歌」
02「ラピスラズリの涙」
※2022年公開予定 映画「斜陽」主題歌
03「生きろ」
※2021年春公開予定 ドキュメンタリー映画「生きろ 島田叡」主題歌
04「僕の憧れそして人生」
05「俺は本当に生きてるだろうか」
06「笑ってみよう
07「花、闌の時」
※2018年公開 東映「北の桜守」主題歌
08「朝まだき」
09「老いの願い」
※2019年公開 映画「山中静夫氏の尊厳死」主題歌
10「置手紙」
11「もういいかい」
12「山河」
※リアレンジバージョン
13「SO-LONG GOOD-BYE」
1971年1月15日にリリースされた小椋佳のファーストアルバム「青春~砂漠の少年~」から50年。歌手引退を決めた音楽界のレジェンドによるラストアルバム。2014年に行った「生前葬コンサート」開催時にリリースしたアルバム『闌<TAKENAWA>』(2013年12月発売)以来のアルバム作品でもある。「ラピスラズリの涙」は映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』の主題歌。