【連載】師匠と僕 村木 弾 第5回

「舟木一夫先輩との出会い」

巨匠、故・船村徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出の日々を紐解く。第5回目は、舟木先輩と出会い。デビューに向けて、僕の時計が急速に早まり始めた。

 

今さらながらではあるが、“船村徹同門会”というものがある。北島三郎先輩を相談役とし、鳥羽一郎兄を同門界会長とした船村先生を慕う人たちが集まった大組織だ。多くの先輩方がいて、その末席に村木 弾が名を連ねる。

何十年もの間に、船村先生の門をくぐった先輩方は大勢いる。歌い手になりたくて先生のもとに弟子入りした人、さまざまな事情で故郷に帰らざるを得なかった人、また、歌い手とは別の道を歩もうと決めた先輩方などなど。今では、多数の従業員を抱える一企業の主として、第一線で活躍しておられる方々もいる。後に、船村先生の人脈の広さ、深さを改めて知り、先生の大きさを思い知ったものであった。

“船村徹同門会”相談役である鳥羽一郎兄とともに

えひめ憲一兄がデビューした2012年。80歳を超えても、先生の作曲家としての創作意欲は衰えを知らず、「演歌巡礼」という日本全国で行うコンサートや、作曲・レコーディングに加え、JASRAC(日本音楽著作権協会)の名誉会長としての職務や、横綱審議会など音楽活動以外にも力を注いでいた。

当然、“楽想館”を留守にすることが増えた。そういう時は、ワンニャン(犬猫)先輩たちは宇都宮の動物病院で“宿泊”となった。

僕といえば、ひとりでスケジュール管理や家事全般をこなすのはなかなか大変だったが、デビューした兄弟子たちが仕事帰りに楽想館に寄って手伝ってくれたり、相談に乗ってくれたりと、とても助けられた。また、先生の奥様をはじめ、ご家族の皆様にも仕事を分担していただき、たくさんの人たちに支えられて内弟子生活を送ることができた。

それから3年ほど過ぎた2015年、ひとりの先輩歌手と出会うことになる。「高校三年生」「修学旅行」など、数々のヒット曲を世に送り出した大スター・舟木一夫大先輩である。

以前、船村先生が舟木さんと仕事でいっしょになった時に、近いうちに食事でもしようという話になり、先生が定宿していた東京・九段下にあるホテルグランドパレスで、会食が行われた。

ここで先生が、僕を翌年あたりにデビューさせたいのだが、それに当たって舟木さんに力を貸して欲しいという旨の話をしたのだ! その話を聞いた時は、寝耳に水という感じでびっくりしてしまった。しかも相手はあの“舟木一夫”なのだ!しかし、僕の驚きなど関係なく、舟木さんは先生の申し出を快諾してくださった。

この瞬間、先生、舟木さん、村木 弾というつながりが誕生した。そしてここから、僕の時間の流れは、デビューに向かって急速に早まることになる。

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船村 徹氏昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。

 


2020年7月29日発売
酒場のギター演歌で勝負!
村木 弾「ほろろん演歌」

「ほろろん演歌」
作詞/菅麻貴子 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
c/w「男さすらい」
作詞/高田ひろお 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
日本コロムビア COCA-17784 ¥1,227+税

「ほろろん演歌」は“望郷”と“酒”がテーマ。過去5作品とは異なる、酒場のギター演歌と言える作品。路地裏の酒場に昭和のギターの音色が流れるなか、都会暮らしに慣れても、時には故郷(くに)が恋しいくなる主人公の気持ちを歌っている。カップリング曲の「男さすらい」は、高田ひろお氏が山でも海でもなく、空をテーマに四行詩を書き上げ、徳久広司氏が三拍子のメロディーをつけた。雄大なメロディーに乗せて男の生き様を表現している。

 


Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる~GOZARU~」でデビュー。

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