北川裕二が自然体で歌う“大阪”の物語
大阪は第二の故郷
福島県郡山市出身の北川裕二にとって、大阪は第二の故郷と呼べるのかもしれない。2013年、北川はデビュー30周年を迎え、記念曲「女のみれん」を発表した。これまで歌ってきたスマートな演歌に比べ、人間臭い演歌、大衆演歌だった。これが受けた。“北川演歌”の新しい路線が見えた。
以降、この路線を走る。とくに関西での評価が高かったことから、3年後には大阪を舞台にした「泣いて大阪」をリリース。長い歌手生活の中でも初めてだったと言うが、北川はウィークリーマンションに泊まり込み、大阪でのキャンペーンに力を注いだ。
「関西の方は反応が早い」と北川は言う。
「とくに大阪は跳ね返りが早くて、いいものはいいとすぐにわかってくれますし、ダメだと思うと離れていきます。好きなものと嫌いなものがはっきりしていますね」
本音で付き合う大阪で、北川の知名度は急上昇した。そして2020年、北川はふたたび大阪を舞台にした作品に出合う。しかもシングルに収録される2曲ともが大阪の歌だった。
――新曲「大阪なさけ川」は、カップリング曲「大阪メランコリー」とともに大阪が舞台になっています。これまで歌われてきた中で、シングルが2曲とも大阪の歌というのは初めてですか?
北川 両面で同じというのは初めてですね。でも僕、大阪って大好きなんです。2016年に「泣いて大阪」という曲を出させていただいたんですけど、その時に関西のファンがすごく増えて。あらためて、また“大阪”というタイトルをつけさせていただいて頑張れるかなと。今は期待に満ちあふれています。
――「大阪なさけ川」は“ホンマに好きや”と、どこまでもついていく覚悟を語る女性の歌です。北川さんにとってどんな一曲になりましたか?
北川 もともとこの大衆演歌という路線が、僕にとっては自然体だと思っていたんですね。なので、「大阪なさけ川」ではまたこういう路線に戻させていただき、着飾らないで歌えます。自然のままで皆さんにアピールできる歌なので、すごくやりがいのある一曲でもあります。今回は僕が思った通りの詞、曲、アレンジを作っていただいたので、自分でもすごく気に入っています。
――ファンの皆さんに、カラオケで歌う際のアドバイスはありますか?
北川 皆様に歌っていただけるのでしたら、本当に自然体で歌っていただきたい。ただ、弦(哲也)先生から言われたんですが、1カ所だけ大事なポイントがあるんです。3行目の「好きゃねんあんたが ホンマに好きや」で少し感情を入れていただきたい。あまり大袈裟ではなく、少し抑え気味の歌い方をしていただきたいんですね。この歌の中では、ここがいちばん大事な箇所になります。あとはもう横揺れで、ゆったりめに自分の思いで歌えばいいということを弦先生から言われました。大衆演歌っていうのは、横揺れだと思うんですよね。その中に明るさと暗さがある。皆さんにもそんな気持ちで歌っていただければと思っています。
――もう一曲の「大阪メランコリー」はポップス系で、乗れるリズムが印象的です。
北川 僕、ポップスも好きなんですよ。リズムが好きで。メランコリーは“憂鬱”という意味なんですけど、多少声を張るところもありつつ、その中にどこか何か投げやりなところとか、暗さがあるんですね。弦先生には、歌を作るよりもリズムをきちっと歌えと言われましたね。歌っていて気持ちのいい曲で、踊りながら歌うような作品でもあります。「大阪なさけ川」は重みのある演歌ですが、こちらは軽いタッチの歌謡曲っぽい雰囲気です。どちらも素晴らしい、僕にとっては歌いがいのある2曲になっています。
2020年9月9日発売
大阪が好きやねん
北川裕二「大阪なさけ川」
大阪を舞台にしたシングル。「女のみれん」で大衆演歌を確立し、それまで縁遠かった関西以西の支持者が急増。とくに大阪での知名度が上がった。今作では、歌詞にも大阪の言葉が使われ、大阪との密着度を増した。「大阪なさけ川」は“好きゃねんあんたが ホンマに好きや”と、不安もあるが、どんなことがあっても惚れた男についていくという女性の気持ちを歌う。「大阪メランコリー」は男性との別れを予感しながらも、男性への思いを募らせる女性目線の歌。