
ソプラノ歌手 柴田智子が紡ぐ魂の歌声。2年の歳月をかけた初の日本語アルバム『Songs of Japan』に込めた“今を生きる”メッセージ
ソプラノ歌手・柴田智子が、ピアニスト・追川礼章と2年の歳月をかけて初の日本語メッセージアルバム『Songs of Japan』を完成させた。壮絶な人生経験を昇華させた魂の歌声が、困難な時代を生きる人々の心に深く響く。自作曲を含む全9曲に込めた、明日への希望とは。
壮絶な人生を歌にのせて―初の日本語メッセージアルバム
ジュリアード音楽院に学び、ニューヨークを拠点に世界で活躍してきたソプラノ歌手、柴田智子。その彼女が初の日本語メッセージアルバム『Songs of Japan』を7月16日にリリースした。ピアニストであり、作編曲家としても注目される追川礼章を“相棒”に迎え、2年という長い歳月をかけて作り上げたのが本作だ。
今を生きる喜びとして心に響く歌を世界に発信するソプラノ歌手として、またジャンルを横断するクロスオーバー歌手の先駆者としても知られる柴田だが、本作には彼女の壮絶な人生そのものが凝縮されている。
家族の反対を押し切り、わずかな所持金で単身渡米したニューヨークでの日々。食べるものにも事欠き、所持金が底をつく極限状態の中、孤独と戦いながらも歌への情熱だけを頼りに生き抜いてきた。
そうした苦難のすべてが歌声に深みを与え、だからこそ今、生きていることの喜びを“わかりやすく”伝えたいという強い想いが本作には込められているのだ。
「長い間、アメリカ音楽を日本に広める活動をしてきましたが、どうしても日本語で伝えないとダイレクトに届かない、という思いが年々強くなってきて。今の自分だからこそ歌える、今の時代を生きる人々と共有できる歌を届けたいと思ったんです」
そう語る柴田の言葉通り、アルバムは「上を向いて歩こう」やNHKの連続テレビ小説「だんだん」の劇中歌「いのちの歌」といった誰もが知る名曲から、自身の言葉で綴ったオリジナル曲まで、全9曲で構成されている。
ピアニスト 追川礼章との運命的な出会い
このアルバム制作の原動力となったのが、ピアニスト・追川礼章との出会いだ。柴田は、追川が歌手の林部智史に提供した楽曲を聴き、その才能に感銘を受けたという。
「彼の音楽を聴いて、すぐに連絡しました。後で聞いた話ですが、彼はあるイベントで仮装してピアノを弾いていたことがあったそうなんです。私はその正体を知らずに『この人、うまい!』と感動していた。後日、彼にその話をしたら『それ、僕です』と(笑)。その時から不思議な縁を感じていました」
この運命的な出会いが、作品づくりを加速させる。
「(オリジナル曲の多くは)ピアニストの追川礼章さんと一緒に作り上げました。彼との曲作りは、少し変わっているかもしれません。『こういうテーマで曲を作ろう』と話し合って始めるわけではないんです。まず、彼からメロディだけが送られてくる。私はその音を聞いて、『この曲は、一体何を私に伝えたいんだろう』と感じ取ることから始めるのです。すると、自然と言葉が溢れ出てくるんです。すぐに歌詞が出てくるんですよ」
「歌いやすいように少しだけ音程を調整してもらうことはありますが、それ以外は本当に自然な流れで曲が完成していきます。本当に不思議な関係です」とも柴田は語るが、二人の魂の共鳴から生まれた作品は、本作の大きな聴きどころとなっている。
歌だけは私を裏切らなかった ― 死の淵から届ける希望の光
アルバムには、柴田の「今」の思いが込められた楽曲が並ぶ。コロナ禍で感じた孤独や希望を歌う「あすへの言葉」(作詞:柴田智子 作曲:追川礼章)、そして自身の壮絶な経験から生まれた「サイレントソング」(作詞・作曲:柴田智子)と「逝かないで」(作詞:柴田智子 作曲:追川礼章)は注目だ。
「10年前に母を亡くし、家族との関係も難しくなり、死を考えたことがありました。その時に音楽に救われた経験から生まれたのが『サイレントソング』です。また、コロナ禍で多くの方が自ら命を絶たれたことに心を痛め、どうにかして引き止めたいという一心で書いたのが『逝かないで』。私の人生は困難の連続でしたが、どんなに辛い時でも、歌だけは私を裏切らなかった。だから、今、苦しみの中にいる人にこそ聴いてほしい。この歌が、あなたの心を少しでも温めることができたなら、これ以上の喜びはありません」
彼女の歌声は、単なる美しいソプラノではない。人生のあらゆる辛苦を乗り越えてきた人間だからこそ放つことができる、魂の叫びそのものだ。
音楽を飾る ― 大判サイズのジャケットに込めた美学
本作は、その物理的な形態にも強いこだわりが貫かれている。CDジャケットは、LPレコードを彷彿とさせる22cm×22cmという特別な大判サイズだ。
「デジタルで何でも聴ける時代だからこそ、モノとして手元に置いて、飾っておきたいと思えるような作品にしたかったんです」
中を開くと、日本の山々を背景に金色の月が浮かぶ、一枚のアートのようなデザインが広がる。音楽を聴くだけでなく、空間を彩るオブジェとしての価値も追求した、柴田の美学が感じられる。
魂が響き合う時、歌は人生になる
『Songs of Japan』は、クラシックやオペラの枠組みを軽やかに飛び越え、聴く者の魂に直接語りかける力を持つアルバムだ。「上を向いて歩こう」や宮沢賢治の「星めぐりの歌」といった馴染み深い楽曲が、柴田智子という人生のフィルターを通すことで、全く新しい深みと説得力を帯びて響いてくる。
特に、追川礼章との共作によるオリジナル曲は圧巻だ。柴田の祈りにも似た言葉と、それに応える追川の繊細かつ力強いピアノが一体となり、一つの壮大な物語を織りなしている。
2年という制作期間、そして彼女がこれまで歩んできた数十年の人生。そのすべてが刻み込まれたこのアルバムは、単なる音楽作品ではなく、一人の女性の生き様そのもの。困難な時代だからこそ、この魂の歌声に耳を傾けてみてほしい。きっと、明日を生きる一筋の光が見つかるはずだ。
INFORMATION
CDリリース記念ライブ
柴田智子(Sop.)with 追川礼章(Pf.)
追川礼章と2年の月日をかけて完成させた柴田智子初の日本語メッセージアルバムのリリース記念ライブ
日時:2025年9月15日(月祝) 15:00 開演(14:30 開場)
会場:NY Lving Room @ 自由が丘オペラハウス 2F
プログラム:上を向いて歩こう/手紙/いのちの歌/あすへの言葉/キャンドルムー ン/逝かないで/星巡りの歌/カレリアの丘/楽しみなさい/勇者の旗/ワインレッドの心/紫陽花など
2025年7月16日発売
柴田智子『Songs of Japan』

T.S.プロジェクトインターナショナル ¥5,000
今だからこそ聴いてほしい曲がある・・・。柴田智子の初となる日本語によるニューアルバム。
収録曲
1.上を向いて歩こう
作詞/永六輔 作曲/中村八大 編曲/岩城直也
2.いのちの歌
作詞/Miyabi 作曲/村松崇継 編曲/森田花央里
3.あすへの言葉
作詞/柴田智子 作曲/追川礼章
4.手紙 ~愛するあなたへ~
作詞・作曲/藤田麻衣子 編曲/岩城直也
5.カレリアの丘
日本語詞/柴田智子 編曲/追川礼章
6.星めぐりの歌
作詞・作曲/宮沢賢治 編曲/追川礼章
7.Candle Moon ~月の灯~
作詞/柴田智子 作曲/追川礼章
8.サイレントソング
作詞/柴田智子 作曲/柴田智子、小田朋美
9.逝かないで
作詞/柴田智子 作曲/追川礼章
発売元・販売元:株式会社T.S.プロジェクトインターナショナル
アルバム『Songs of Japan』はAmazonやタワーレコード、HMVなどの通販サイト、T.S.プロジェクトインターナショナルで販売されるほか、各種音楽配信サービスよりデジタル配信もされる。
profile
柴田智子(Soprano, Vocal, Lyricist, Composer)
武蔵野音楽大学卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院に学ぶ。リンカーンセンター、カーネギーホールなどでオペラに出演する傍ら、クロノス・カルテットと現代音楽の初演を手がけるなど、ジャンルを超えて活躍。故レナード・バーンスタイン氏とも親交が深く、その音楽の普及にも貢献してきた。EMI専属歌手としてリリースしたビートルズのカバーアルバムは世界的な反響を呼んだ。現在は日本語の歌にも力を入れ、自身の言葉と音楽で「今」を伝える活動に情熱を注いでいる。東京二期会会員。昭和音楽大学、桜美林大学講師。
追川礼章(Piano, Compose, Arranger)
1994年生まれ。東京藝術大学大学院を修了。クラシックを基盤としながらも、ポップスやジャズの要素を取り入れた作編曲で高い評価を得ている若手実力派。テレビ朝日『題名のない音楽会』をはじめ多くのテレビ番組に出演する他、林部智史「花に約束」「夢」の作編曲を手がけるなど、多方面で活躍。室内楽奏者としても多くの著名アーティストと共演を重ねている。その繊細で色彩豊かなピアノは、多くの聴衆を魅了している。











