
【インタビュー】“大阪の元気娘” 水木ケイは想像以上! 「裏なんばブルース」で復活。0からのスタート!
「机の角で小指を打っても、『よっしゃ! これで後はええことしかない!』って思えるんです」
そう言って屈託なく笑う彼女は、まさに太陽のような人だ。朝起きると独り言に節をつけて歌っているという天性の明るさを持つ彼女は、演歌歌手・水木ケイ。2009年に「吉本興業初の女性演歌歌手」としてデビューし、“大阪の元気娘”として人気を博した。出産・育児を機に一時活動を休止していたが、この夏、満を持して本格復活! 演歌歌謡の最前線に立つ。

「もう一度頑張る!」――ラブコールと決心
2020年に歌手活動を再開していた水木ケイだが、今回の本格的な復活のきっかけは一人の作家からの熱烈なラブコールだった。ビクターエンタテインメント移籍第一弾シングル「裏なんばブルース」を手に、彼女は今、どんな想いを抱いているのか。
――まずは、移籍、そして復活のきっかけとなった堂山アスカ先生との出会いについてお聞かせいただけますか?
水木 堂山先生との出会いは、本当に不思議なご縁なんです。初めてお会いしたのはもう10年以上前。歌手仲間とお仕事でご一緒した時に、楽曲を提供されていた先生として現場にいらしていました。でも、その時はご挨拶した程度だったんですが、すごく印象に残っていました。それから時が経って、私が活動を再開した(2020年)頃、先生から当時のレコード会社さんを通じて「水木ケイに会いたい」と連絡をいただいたんです。
――約10年の時を経て、再会されたのですね。
水木 そうなんです。再会の日、私の現場が終わるまで、先生は何時間も、何も言わずにずっと待っていてくださって。その誠実な人柄にまず心を打たれました。そこから1年以上にわたって、「一緒に歌をやらないか」「ビクターで頑張りたい」と、本当に熱心に誘ってくださって。正直、最初は「私でいいんだろうか」という不安の方が大きかったんです。でも、その間もずっと気にかけてくださる先生の愛情を感じて、「この先生となら、もう一度頑張れるかもしれない」と決心が固まりました。

「もう、私そのもの(笑)」――自分を投影した『裏なんばブルース』
そうして誕生したのが、「裏なんばブルース」だ。タイトルの通り、ネオンきらめく大阪のディープな街“裏なんば”が舞台。一夜限りの出会いと、その後に募る切ない後悔を歌ったブルース演歌だ。
歌詞には“カシスオレンジ” “LINE交換すればよかった” “酎ハイレモン”といった現代的なワードが散りばめられ、聴く者の記憶や経験にリアルにリンクしてくる。この生々しさが、物語のほろ苦さを際立たせる。
――堂山先生から新曲「裏なんばブルース」をいただいた時の心境はいかがでしたか?
水木 もう、満面の笑みで「これです!」って(笑)。デビューが吉本興業(よしもとアール・アンド・シー)だったので、私にとって難波はスタートの場所。千日前や裏なんばは、まさに庭みたいなものですから、「帰ってきたー!」って思いましたね(笑)。

――ご自身と重なる部分はありますか?
水木 歌詞を読んだら、すごく現代的で。一杯めに「カシスオレンジ」から始まって、「酎ハイレモン」のおかわり。挙句の果てには潰れちゃう(笑)。後先考えずに楽しんで、後から「あー、LINE交換すればよかった!」って後悔する感じが、なんだか私っぽいなと思いました。
――自分を投影しながら歌われている?
水木 そうですね。主人公は、シクシク泣いているタイプじゃなくて、「あーあ!」って後悔しながらも、「明後日あたり、あの辺の寿司屋に飲みに行ったら会えるんちゃうかな?」なんて考えているような、私みたいな前向きな女性をイメージしました。レコーディングの時も、今までのどの曲よりも悩まず、考え込まずに、自分の感情のままに声を出せた気がします。本当に初めての感覚でした。
――これまでの作品では、もっと考え込んで歌われることが多かった?
水木 はい。子供の頃から尊敬している藤山一郎さんが「悲しい歌は楽しく、楽しい歌は悲しく歌うんだよ」とおっしゃっていて、それをずっと意識してきたんです。でも今回は先生から「ケイちゃんの感じで歌ってほしいんだ」と言っていただいて。テクニックで作り込むのではなく、物語の主人公になりきって、ストレートに感情をぶつけることができました。
特筆すべきは水木ケイのボーカルの素晴らしさだ。彼女の厚みのある声は、ブルースの持つやるせなさや気だるさに見事にマッチする。サビの「も一度 も一度 会いたいの」というフレーズでは、抑えきれない未練をパワフルに、しかしどこか儚げに歌い上げ、聴き手の心を鷲掴みにする。まさに“大人の大阪演歌”と呼ぶにふさわしい、深みのある一曲に仕上がっている。

カップリング「大阪花火」は甘く切ないラブソング
さて、一転してカップリングの「大阪花火」は、夏の天神祭を舞台にした甘く切ないラブソング。こちらは演歌というより、爽やかなニューミュージックの調べに乗せて、幸せだった過去を回想する物語となっている。
「浴衣の二人」「夜店のお面」「祭り囃子」――キラキラした夏の情景が次々と浮かび上がり、その美しい思い出が夢となって今も心を温めている。「覚めないで起こさないで 幸せだから」というフレーズは、この上なく甘美でありながら、もう戻れない時間であることを示唆し、胸を締め付ける。
――カップリングの「大阪花火」はどんな作品ですか?
水木 この曲は先生が30年近く前に作られたそうで、すごく繊細でロマンチックです。私みたいにお祭りへ行って、「あの、お面高いな!」とか言うタイプじゃない(笑)。だから、この曲はすごく想像を膨らませて歌いました。自分とは違うからこそ、その世界に入り込んで歌うのが面白い部分でもありますね。
「大阪花火」で聴かせる水木ケイの歌声は、「裏なんばブルース」の力強さとは対照的に、優しく伸びやかだ。情景を丁寧に描き出すように、言葉一つひとつを慈しみながら歌う。彼女が持つ表現力の幅の広さも確認できるだろう。

夢はマツダスタジアムでの始球式!?――飾らない素顔
――お話しを伺っていると、本当に根っからの“元気娘”ですね。
水木 自分でも変わってるなと思いますよ(笑)。朝起きたら「今日は~、朝ごはん、何食べる~♪」みたいに、独り言に節をつけて歌ってるらしいです。しゃべってないと生きていけない(笑)。
――そのパワフルさはどこから?
水木 机の角で小指を打っても、「よっしゃ! これで後はええことしかない!」って思えるぐらいのポジティブ人間なんです(笑)。
――歌以外の趣味にも全力投球していそうですね。
水木 趣味というか、もう人生なんですけど、広島カープが大好きなんです! 子供の頃は「東出(輝裕)選手と結婚する!」って本気で思ってて(笑)、毎日カレンダーの裏にセ・リーグの順位表を書いて部屋中に貼ってました。初めて広島市民球場へ応援に行った時は、興奮しすぎて翌日、全身筋肉痛で動けなくなったくらい。
――すごい熱量ですね!
水木 だから、歌手としての夢はもちろんNHK紅白歌合戦ですけど、もうひとつの大きな夢は、マツダスタジアム(現・広島市民球場)で始球式をすることなんです! その時は東出さんのユニフォームを着て投げたいな……なんて(笑)。

気持ちはいつもデビュー3日目。0からスタートする
――歌手としての夢を聞かせていただきましたが、今回の本格復帰にはファンの方の存在も大きいのでは?
水木 本当にそうです。活動を休んでいた間も、ずっと年賀状のやり取りを続けてくださった関東のファンの方もいますし、復帰を待っていてくれたのに、残念ながら亡くなられてしまった方もいらっしゃって、「もう一度会いたかったな」って……。だから、応援してくださる方には、どんな形でもいいから「元気だよ!」って伝えたい。お茶会でもいいんです。皆さんが待っていてくださる場所で歌いたい。
――「0からのスタート」とブログに書かれていましたね。
水木 今、こうしてまた歌えるのは、本当にたくさんの方々が力を貸してくださったおかげなんです。その方たちからいただく「歌に迫力があるね」「性格がいいね」といった言葉の一つひとつが、本当にありがたくて。この感謝の気持ちを絶対に忘れてはいけない、という想いを込めています。今までやってきたことを消す「0」ではなく、この感謝を胸に、また一から歩み始める、という意味での「0からのスタート」です。
――新曲のリリースが決まった時、「浪花娘もあれから15年! でも、気持ちはいつでもデビュー3日目です!」とコメントされています。いまもデビュー3日目の心境ですか?
水木 はい! デビュー初日は、もう何が何だかわからなくてパニック状態でした。でも3日目くらいになると、少しだけ周りが見えてきて、お客さまの顔が見えるようになったり、「ケイちゃん頑張ってね」と声をかけていただくありがたさがわかってきたりしました。その、新鮮で、謙虚で、でもワクワクしている“3日目”の気持ちを、ずっと持ち続けたいですね。

――最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。
水木 長い間待っていてくださった皆さん、本当にありがとうございます。皆さんがいなければ、今回の復活はありませんでした。これからは、“裏なんば観光大使”(笑)としても頑張りながら、皆さんが大事にされている場所で、皆さんの心を温められるような歌を届けていきたいです。100人のお客さまの前でも、たった一人のお客さまの前でも、やることは一緒。心を込めて、精いっぱい歌います。
大阪演歌の元気娘 “水気ケイ”は想像以上!
「水木ケイ復活物語」のキーマンである大阪在住の作家、堂山アスカ氏は、10年以上も前から水木の才能に注目していたという。今回、ラブコールの末にタッグを組むことになった堂山氏は彼女の魅力をこう語る。
一、想像以上に、歌に迫力がある。
二、想像以上に、性格がいい。
三、想像以上に、おしゃべりがうまい。
「スター歌手としての三種の神器」がそろっていたからこそ、「この子しかいない」と確信したそうだ。担当ディレクターが「想像以上に、見た目も良かった」と付け加えると、水木は照れながらも満面の笑み。周囲を明るくする天性の魅力もまた、彼女の大きな武器なのだろう。
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2025年7月23日発売
水木ケイ「裏なんばブルース」

「裏なんばブルース」
作詞・作曲/堂山アスカ 編曲/新田高史
c/w「大阪花火」
作詞・作曲/堂山アスカ 編曲/阿部靖広
ビクターエンタテインメント VICL-37790 ¥1,500(税込)
profile
水木ケイ
1989年5月19日生まれ 大阪府吹田市出身 身長158cm 特技:トロンボーン演奏。4歳の時に家族旅行先で、演歌好きの祖父がカラオケで歌った藤山一郎の「東京ラプソディ」に影響を受け、それ以降は歌謡曲や演歌を歌って育ち、自らも演歌歌手を志すようになった。中学時代は吹奏楽部に所属していた。2009年4月22日によしもとアール・アンド・シーより「海椿」でデビュー。吉本興業初となる女性演歌歌手として注目された。








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