知里がバースデーパーティー。歌える喜びを噛みしめる。
デビュー10周年を迎えた知里が7月19日、千葉県の市川グランドホテルで「知里バースデーバーティー」を開催し、ファンに歌声を届けた。
知里の誕生日は6月27日。本来であれば、その翌日の28日に地元・市川市の文化会館大ホール(2000人収容)で、10周年記念コンサートを開催する予定だった。だが、コロナ禍により中止せざるを得ず、今回のバースデーパーティーも「ギリギリまで開催するかどうか迷った」(知里)という。しかし、「ここを乗り越えれば何でもできると思いました。今日はその一歩です」と開催を決意。来場者の数は限定されたが、観客はフェイスシールドを着用し、知里のステージを楽しみ祝福した。
黄色のロングドレスも華やかに、「ちさとマーチ」で登場した知里は、「(感染防止対策のため)“ちーちゃん”の掛け声を掛けたくてもできないって言われ、申し訳なく思います。でも、どうか楽しんでください。私の歌(オリジナル曲)をすべて聴いていただきたいと思います」と挨拶。「追いかけて」や、“斑野ねこ”のニックネームで作曲した「星になったじぃじ」など、一曲一曲、思い出を語りながら、観客と一緒に音楽のある空間を楽しんでいく。
第一部の後半は白いグランドピアノでの弾き語り。デビュー曲「やさしい日々」やそのカップリング曲「ひこうき雲の先に…」、「ひとりじゃないから」(セカンドシングルのカップリング曲)などを歌唱し、最後はシンガーソングライターの小田純平が提供した2曲「虹のかなたに」と最新曲「華ロック」のカップリング曲「抱きしめて」を聴かせた。
「小田純平先生にいただいた曲ですが、カラオケのDAMでのランキングで、私の曲の第1位は、表題曲よりも『抱きしめて』が歌われているんですよ」と、複雑だが、うれしい表情も見せていた。
「歌手デビュー10年目がこんな形になるとは、夢にも思っていませんでした。コロナの影響で、歌の仕事が激減しました。10年間、本当にいろんなことがありました。皆様のお支えがあって、なんとか10年間がんばって来ることができました。これからも上を目指して、どんどんとがんばっていきたい思いますので、応援よろしく願いします。皆様と私とのご縁は、ひとつの糸だと思います。その糸を大切に、これからも歌い継いでいきたいと思います」
会場のスクリーンに知里からのメッセージな流れると、ふたたびステージに知里が登場。中島みゆきの「糸」の弾き語りで、第二部がスタートした。
知里は最近、YouTube内に「知里ちゃんねる♪」を開設し、チャンネルの“ちょい歌♪”コーナーでは多くの曲をピアノの弾き語りでカバーしている。「糸」のほか、テレサ・テンの「香港」、中尾ミエの「片想い」などを歌い、中学・高校時代に大ファンだったというX JAPANの「Forever Love」を気持ちよさそうに歌っていた。
「自宅でピアノを弾いて歌っていると、あっという間に3、4時間が経ってしまっています。歌を通じて、いろんな気持ちにさせてもらったり、(歌の舞台へ)行った気にさせてもらったり。歌って、いいなと思う瞬間です」
弾き語りの最後は「You Raise Me Up」。2002年にアイルランドとベルギーの2人組、シークレット・ガーデンが発表した同曲は、多くの歌手にカバーされ、世界的な名曲となった。また、2006年のトリノ五輪では、金メダルを獲得したフィギュアスケートの荒川静香がエキジビションの演技で使った曲としても有名だ。
ピアノが大好きで、デビュー前からラウンジでの弾き語りの仕事でよく歌っていたという知里は、コロナ禍により誰もが疲れ、落ち込むことがあっても、支えてくれる人がいるから強くなれる、というメッセージを伝えたかったのだろう。美しく澄んだ歌声で「You Raise Me Up」を熱唱すると、会場は大きな拍手に包まれた。
デビュー以来、ポップスや歌謡曲路線で歌ってきた知里が本格演歌に挑戦したのが、2017年の「花艶歌」と、2018年の「あなたの女です」だった。パーティーの終盤は、この2曲を歌いながら客席をラウンド。握手はできないけれど、お客様の側で歌いたいと、テーブル席を回った。
そして、自身の知名度を大きく上げてくれたという、古関裕而氏の作品「イヨマンテの夜」をフルコーラスで熱唱した。声量が必要な同曲だが、幼少期からクラシックを学び、日本大学芸術学部音楽学科声楽コースで鍛えた声で、見事に歌い上げていた。
ちなみに古関氏は、この春から放送されている「NHK連続テレビ小説『エール』」で描かれる主人公のモデル。生涯5000曲を手がけた昭和を代表する作曲家だ。だが、「勝って来るぞと勇ましく…」という歌詞で始まる「露営の歌」など戦時歌謡も多く作曲している。そのため戦後は、若者が自作曲に送られて戦地へと赴き、多くが帰らなかったことに心を痛め、「長崎の鐘」など鎮魂歌を手がけている。
エンディングは「この曲でがんばっています」と、最新曲の「華ロック」。祭りをテーマにした、ノリのいい楽曲で、客席からは“ちーちゃんコール”が沸き起こった。
「やっぱり、掛け声はいいですね。うれしいです」と知里。「今日はありがとうございました」とステージを降りると、すぐさまアンコールがかかり、オープニングで歌った「ちさとマーチ」で締めくくった。
コロナ禍により、集大成となるはずのコンサートが中止となり、ファンの前で歌う機会も奪われた。だが、8月には無観客ライブを予定するなど、知里は「今日を第一歩」として歌手活動を広げていくという。
「来年の6月2日(デビュー日)までは10周年が続きます。がんばります」
ショー終わりのディナー時間にも、特別にピアノの弾き語りを行い、ファンの前で歌える喜びが抑えきれなかった知里。名残惜しそうに、ファン一人ひとりをお見送りしていたのが印象的だった。
2019年7月3日発売
“知里ニュー演歌”第3弾
知里「華ロック」
「華ロック」は「花艶歌」「あなたの女です」と独特な演歌の世界を作り上げてきた知里のニューシングル。“祭り”をテーマに、伊藤美和氏が詞を書き上げ、岡千秋氏が軽快なメロディーをつけた。誰もが体を動かし、踊り出すようなノリのいい楽曲。
カップリング曲の「抱きしめて」は、愛してはいけない人を愛し、許されない恋だとわかっていても、その気持ちを抑えきれない主人公の切なさを、知里がしっとりと歌っている。