川神あいが出合った、新たな世界を開く歌

Special Interview
川神あい

人生の冬に巡り逢った男と女。二人寄り添う幸せと哀愁を軽快なリズムに乗せて。


パワフルだけど、切ない。強さのなかに見え隠れする弱さ……。ソウルフルな川神あいの歌声にはさまざまな色があり、聴く者を惹きつけてやまない。
コロナ禍の只中に彼女がリリースした新曲「三日月オペラ」を聴けば、きっとあなたも、その色彩り豊かな歌声の虜になるだろう。

――新曲「三日月オペラ」は、作詞家・阿久 悠氏の遺作ということですが、今回歌われることになった経緯を教えてください。

川神 私のディレクターさんが、同じレコード会社所属の先輩である北原ミレイさんを25年間担当されていて、ミレイさんと関わりのある阿久悠先生の未発表の歌詞をいくつかお預かりしていらっしゃって。そこで、もしかしたらその中に私にフィットする作品があるかもしれないと探して、この曲を見つけてくださいました。阿久先生の関係者の方にも快くOKをいただいて、今回歌わせていただくことになったんですけれど、憧れていた阿久先生の作品、しかもとても素敵な作品で光栄です。

――作曲は、ヒットメーカーの伊藤 薫氏ですが、初めてメロディーを聴かれた時はいかがでしたか?

川神 詞がとっても素敵なものですから、この詞の匂いを感じていただける先生ということで、伊藤先生にお願いしました。伊藤先生も、もう阿久先生が亡くなられて10年以上経っているわけで、その作品に曲をかけるなんて光栄なことだからと、とても喜んでくださって。先生のその気持ちが乗り移ったかのように、すばらしいメロディーをつけていただきました。もう、聴いた瞬間に頭に入りましたね。

――ムーディーなのに軽快で、思わず体が動いちゃいます。(笑)

川神 じつは、伊藤先生はメロディーを2パターン作ってくださったんですよ。ひとつはバラードでもう一方はこのリズミカルなものと。同じ詞なのに、メロディーが違うだけで雰囲気や世界観がまるで違うんです。満場一致で今のメロディーに決まったんですが、なんだろう……。なんとなく、哀愁があるんだけど歌っているうちに元気が出てくる。好きな人といっしょにいたいな……というように思わせられる曲だなって思いますね。

――あいさんが思うこの曲のいちばん魅力はどこですか?

川神 う~ん、いちばんというのは難しいけど……まず、タイトルがとてもシャープでおしゃれ! 男女の切なさや哀愁感を、痩せている三日月にたとえているんじゃないかな。あと、冬から始まる歌ってなかなかないじゃない? ”人生の冬”という寒い時期に出会って、実りの秋に終わる。幸せな秋で終わるんだと。幸せじゃない二人が出会い、これから二人で満月に(幸せに)なっていこうよって。そして『凍え死ぬから一緒にいよう』という詞。ひとりだと凍え死ぬほど寒いんだ、辛いんだということを一言で表現されている。阿久先生の偉大さを改めて感じながら歌いました。

――物語としては、ハッピーエンドなんですよね。

川神 そう! ハッピーエンドのラブソングですね。二人で幸せになろうよって、満月に向かって歩いていこうっていう曲。自分が本当に苦しくて、最悪の状態の時にいっしょにいたい人って本物だからね。本当につらい時にそばにいてくれる人って、友達であっても、家族でも、仲間であっても、本物よ。

――新たな“川神あいワールド”が広がりましたね。

川神 34年歌わせていただいていますけど、作品との出合いってとても大事だと思います。今回コロナ禍の自粛で歌いに行けない状況なのに、動画サイトの再生回数が今まででいちばんの反響なんです。この曲の持つ力と私の歌声がマッチして、新しい世界を皆さんが感じてくださっているのかもしれませんね。

――上手に歌うアドバイスがあれば教えてください。

川神 覚えやすいメロディーですが、正直この曲は簡単そうに見えて難しい。キーを少し低めに設定して練習するのが上手に歌うコツです。サビのキーを歌いやすいところで先に決めて、前半がちょっと低くなるけど低音を上手に出していただく方が、全体を通したらとても歌いやすくなります。ぜひ歌ってください!


2020年4月1日発売
川神あい「三日月オペラ」 歌声は新境地へ

「三日月オペラ」
作詞/阿久 悠 作曲/伊藤 薫 編曲/猪股義周
c/w「令和アイ・アイ節」
作詞/野村瞳 作曲/宮下健治 編曲/猪股義周
c/w「秘恋川」

作詞/宮澤彰 作曲/駒田良昭 編曲/猪股義周
徳間ジャパンコミュニケーションズ
TKCA-91275 ¥1,227+税

「三日月オペラ」は、恋するふたりの愛情を歌った作品。作詞家・阿久悠氏の遺作に伊藤薫がメロディーをつけ、リズムの良さが感じられる歌謡曲に仕上がっている。カップリング曲の「令和 アイ・アイ節」は、川神の元気が感じられる音頭もの。「秘恋川」はしっとりとしたムードの演歌作品で、切ない恋心が伝わってくる。



Profile

川神あい(かわかみ・あい)
6月9日、茨城県つくば市生まれ。1987年、木村優希としてワーナーパイオニアより「恋知りざかり」でメジャーデビューを果たし、数々の新人賞を受賞。テレビ、ラジオ、舞台、座長公演と、歌だけにとどまらずオールマイティーな才能を発揮してさまざまなフィールドで活躍する。2004年、「水をください」を発売。同時に現芸名の「川神あい」へと改名。演歌、歌謡曲、ポップス、歌謡浪曲となんでも歌いこなし、その明るい笑顔とパワフルな歌声で多くのファンを魅了し元気を与え続けている。

INFORMATION

毎週土曜日6時から放送中の「あいと正人のとびだせ歌謡曲」(BS12)では、MCとして最新の歌謡曲情報などを届けている。