秋元順子が自然体で歌う「一杯のジュテーム」~眠りにつく前に聞いて~
秋元順子の新曲「一杯のジュテーム」は、シンガーソングライター・おかゆが書き下ろしたラブソングだ。ふたりの誕生日が同じだという縁が取り持った初コラボだが、秋元の心を抉り出すような作品ともなった。切ないけれど前向きになれる物語を、秋元が自然体で歌っている。
“馴染のバーで 頬杖ついて”
「“馴染のバーで 頬杖ついて”。おかゆさんが作詩・作曲してくださった新曲『一杯のジュテーム』の冒頭です。どなたでも情景が思い浮かぶ歌詩ですよね。その一方で、亡くなってしまった人のことを、 “あの人 星を旅して 一人よ”と表現されているなど、まだまだお若いのにオシャレな表現ができる方ですよね」
秋元順子の新曲「一杯のジュテーム」は、人生の振り返りながら、今を未来に向かって前向きに生きる女性が歌われている。シンガーソングライターとして活躍するおかゆは、“六月ゆか”名義で作品の提供もしているが、“おかゆ”名義で曲を提供するのは今回が初めてだった。
お互いに6月21日に生まれて
秋元とおかゆは誕生日が一緒だった。
「おかゆさんの誕生日も6月21日で私と一緒です。最近、年の差が44歳もあると知ってびっくりしましたが(笑)、最初の出会いはNHKの音楽番組でした。一緒に、私の『愛のままで…』をデュエットしたのですが、普通なら『ここをこう歌ってくださる?』とお願いするのを抑えて、彼女がどう歌うのかを注目してリハーサルに臨みました」
おかゆが歌う「愛のままで…」を聴いた秋元は驚いた。
「なんとしっかりと私の歌を聴いてくださったんだろうと思いました。番組収録後に、彼女は私のCDをたくさん買って、オリジナル曲はもちろん、アルバムに収録されたいろんなジャンルのカバー曲も聴いて勉強させていただいていますとおっしゃっていました。なかなか言える言葉はないですよね」
秋元にとってのおかゆのイメージは、「最初は面白い名前の方だなという印象」だったが、徐々にテレビなどのメディアへの露出が増えるにしたがって、「おかゆさんの歌がどんどん進化している。すごい」と印象深いものに変わっていったという。
一冊のノートに刻まれた言葉
そんなおかゆの誕生日が自分と同じだと知った秋元は、おかゆに一冊のノートをプレゼントした。
「『歌詩が思い浮かんだ時に何か書いてください。同じ誕生日の記念に』って。誕生日プレゼントではありませんが、最初にお会いした時にノートを差し上げたんです」
おかゆは秋元からプレゼントされたノートをしばらく自宅に飾っていた。
「でも、この前お聞きしたら、いちばん最初に書いた言葉は秋元さんの歌詩ですって! 私も誰かからいただいたら大切に持っていると思いますが、まさか、おかゆさんが最初に書いた歌詩を私が歌うことになるなんて‼ たまたま誕生日が同じだったことがご縁となりました。“ご縁”と“ご縁”で10円です(笑)」
「一杯のジュテーム」を自然体で
順子はおかゆがつくった「一杯のジュテーム」を歌いたいと思った。そして、おかゆに「私は自然体で歌いますね」と伝えた。秋元には作品の主人公を重なるような経験があったからだ。
「主人公はいつも通っているバーで、亡くなった人のことを思い出していますが、私にも過去に似たような経験がありました。音楽関係でお世話になっていた人でした」
2008年にリリースした「愛のままで…」が大ヒットし、多忙を極めていた時期だったという。
「『今度、みんなで会うんですが、時間を取れますか?』とお誘いを受けてもほとんどお断りする状況でした。年末のある日のことでした。その音楽関係の方から『来年になったら飲めますか』と電話がかかってきました。夏ごろにも、秋ごろにもお誘いいただいたのにい、すべてお断りしていたこともあり、『スケジュールを調整して連絡しますね』と返事しました。年が明けて電話をしました。すると、「昨年暮れに亡くなりました」と。「ええーっ」って。その時の心境を思い出すと胸が苦しくなります。もっと早く飲みに行っておけばよかった。何度もお断りしている間に、天国へ行ってしまわれました」
コンサートツアーが続く中での出来事。この先、ちゃんと歌を歌えるのか。心が乱れるほど大きなショックだった。
ノスタルジック・ラブ・バラード
「どんなに忙しくても、相手が会いたいと言ってきた時や、自分が会いたいと思う人には最短距離で、時間をつくって会うべきだと思いました。そうじゃないと“さよなら”という言葉を言えないままにお別れしてしまうことになります。あの時は、本当に悔しかった」
新曲「一杯のジュテーム」では、たまたま来店した人と話し始めて、“まだ…一杯だけ…” “ねぇ…一杯だけ…” “あと…一杯だけ…、そして”まだ…一杯だけ…“と物語が展開していくが、過去の悔しい経験があるからこそ、秋元は自然体に歌うことができたという。
「ちょっぴり切ない歌ですが、これを土台にして次につなげていけるというか、そこまで伝えられるように歌いたいと思っています。私は『一杯のジュテーム』をノスタルジック・ラブ・バラードって呼びたいと思っています」
ノスタルジー(回想)とは、遠い懐かしさを感じさせる。失われたものなどに対して心惹かれ思いを馳せ、憧れや恋しさを抱く様ですよね。ノスタルジック・ラブ・バラードという表現にぴったりの作品です。
秋元は「でも、私が勝手に言っちゃいけないので、今度、おかゆさんに相談しなきゃ」と笑顔を見せていた。
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映画のワンシーンのように主人公の女性の一人語りから始まり、“秋元順子”の心を抉り出すような作品「一杯のジュテーム」。秋元は「この曲を聴いて眠りについてほしい」と願ってる。
「私はいつも寝る前に音楽を聴くようにしていますが、この曲を聴いて、よく眠れたわとか、眠りつく前にはいつも聴いていますとか。そんな声が聞けたらうれしいですね」
おかゆとの初コラボで生まれた「一杯のジュテーム」。曲の最後に秋元は、“まだ…一杯だけ…”と、消え入るように優しく歌っている。
「一杯のジュテーム」がNHKラジオ深夜便に!
秋元順子が歌う「一杯のジュテーム」がNHKラジオ深夜便の“深夜便のうた”に選曲され、2022年10月~同年11月までオンエアされている。
放送概要
NHKラジオ深夜便(ラジオ第1 毎週月曜日から日曜日 午後11時5分~/FM 毎週月曜日~日曜日 午前1時5分~)
2022年10月5日発売
秋元順子「一杯のジュテーム」
「一杯のジュテーム」は秋元順子とシンガーソングライター・おかゆとの初コラボ作品。ジュテームとはフランス語で「愛している」という意味。秋元は日本語の「愛している」より、英語の「I Love You」にニュアンスが近いと話す。フランス人の友人から正しい発音を教えてもらったという秋元はカタカナ読みの「ジュテーム」ではなく、正しい発音のニュアンスを残した「Je t’aime(ジュテーム)」と表現しているそうだ。
カップリング曲「愛を手操って」は、「花岡優平先生の作品です。レコーディングでは、久しぶりに先生とお会いして、先生も喜んでくださいました。先生にはこれまでにたくさんの作品をいただいていることもあり、レコーディングはすぐに終わりました。作詞の門谷憲二先生とは初めてのご縁でした。『一杯のジュテーム』同様、愛の歌ですが、こちらもいい歌なので、ぜひ、聴いてくださいね」(秋元)
Profile
秋元順子(あきもと・じゅんこ)
1947年6月21日、東京生まれ。OL時代より会社のハワイアンバンドに参加し歌手活動を始める。結婚を機に活動を一時休止していたが、家族の支援もあり再開。洋楽を中心にライブ活動を行っていた2004年に、インディーズ盤「マディソン郡の恋」を発売。この曲が評判となり、翌年の2005年、58歳の時に同曲でメジャーデビュー。その後、2008年に発表した3作目の「愛のままで…」が大ヒットし、暮れの『NHK 紅白歌合戦』に出場。最年長初出場歌手(当時)となる。2014年にはデビュー10周年を記念して、全20カ所全23公演を成功させる。2019年9月には15周年記念曲・第一弾「たそがれ坂の二日月」を、2020年6月には第二弾「帰れない夜のバラード」をリリース。2021年は5月に「いちばん素敵な港町」(カップリング「なぎさ橋から」)を発表。2022年は2月には前作のカップリング曲を表題曲とした「なぎさ橋から」を、10月にはシンガーソングライター・おかゆによる「一杯のジュテーム」を発売。ますます円熟味を増し、精力的に活動している。
秋元順子 公式HP
キングレコード/秋元順子
秋元順子 公式ブログ