本格演歌で拓く、五条哲也の新境地

女唄を歌うこと
女心の難しさ

 

――デビュー曲から3作目「北へ流れて」(2011年)までは、ハスキーボイスを生かした男唄でしたが、2012年に出合った4作目の「ほたる川」で女唄に挑戦されました。この作品も五条さんの歌手としての転機だったとか。

五条 そうですね。高砂親方こと大関朝潮太郎関をはじめ、多くの方が歌われている名曲のカバーなんですが、この曲で女唄を歌うことになってそれまでの五条哲也の雰囲気がガラッと変わったんですよ。今でも動画サイトの再生回数のランキングで僕の曲の中でずっと1位。“歌手・五条哲也”の幅を広げてくれましたね。

――それから数多くの女唄を歌ってこられて、女心を表現したり理解したりするために五条さんならではのアプローチ法や、意識されていることってありますか。

五条 ……声は意識していますかね。たとえば、青江三奈さんのようなため息路線ってあるじゃないですか。ハスキーで個性的な声っていうのは昔から皆さんに言われますので、高いところはポップスでいうところのシャウトのような感じだったり、低いところも空気をいっぱい使ってかすれ方とかに常に女性らしさや色気を醸し出すというか。かすれてる中でも僕なりの表現を、といつも思ってます。女性の心っていうのは……、これは今もわからないですね(笑)。

――女心は難しいですか。

五条 難しいですねえ(笑)。ファンの女性の皆さんからは、「もっと遊びなさい」とかね、「もっと女性と付き合って、女心を勉強しなさい」ってしょっちゅう怒られますよ。

――厳しいご意見ですね(笑)。

五条 まあね、そんな簡単に遊べたらありがたいですけどね(笑)。歌うことに一生懸命で、まだ主人公の女性の気持ちになりきって歌えるところまでいってないんでしょうね。単純にまだまだ苦労が足りないのかな。こちらも日々勉強です(笑)。

――でも、いろいろなこれまでの経験が今歌を歌われるうえで、どこかに生きているなというのは……。

五条 もちろん! 本当にこれまでいろいろありましたけど、すべての経験一つひとつがやっぱり僕の人生の糧だと感じています。この先新曲を歌っていくうえでも、きっといろんな場面で助けてくれるでしょうね。

 


2020年10月7日発売
初挑戦の本格演歌で新境地を拓く
五条哲也「まよい川」

「まよい川」    
作詞/高畠じゅん子 作曲/水森英夫 編曲/伊戸のりお   
c/w「紫苑の花が咲く頃」   
作詞/高畠じゅん子 作曲/水森英夫 編曲/伊戸のりお    
「別離(わかれ)…愛の嘘」   
作詞/建石 一 作曲/かとう洋 編曲/椿 拓也   
日本クラウン CRCN-8357 ¥1,227+税

個性的なハスキーボイスで女心を巧みに歌ってきた五条哲也が、「まよい川」で純粋な演歌に挑戦。「別れの歌ですが、しっとりというより気持ちは明るく。前半から声を全面に出して、途中ちょっとリズミカルな部分もあるので、そこはもうとにかくリズムに乗ってストレートに歌ってみてください。こぶしが得意な方は存分に楽しんで回していただけたら。今の五条哲也の精いっぱい、全力で歌い上げた作品ですので、ぜひ聴いて歌ってください」(五条)。c/w「紫苑の花が咲く頃」は、紫苑の花が咲く秋の情景が浮かぶような切ない恋の終わりを描いたムード歌謡風のオシャレな一曲。さらに、五条が「かとう洋」名義で作曲を手がけた前作の「別離(わかれ)…愛の嘘」も収録。「僕が作曲していることとおかげさまで好評ということで、知らない方にもっと聴いていただけるように気を遣ってもらっちゃったのかもしれません(笑)。昔バンドをやっていた時にちょこっと作曲はやっていて。これからもやっていきたいっていうのもありますし、そういうチャンスをいただいた僕にとって大きな記念の曲です」(五条)

 


Profile
五条哲也(ごじょう・てつや)
11月19日、京都府生まれ。子どもの頃から歌好きの祖母の影響で演歌や音楽に目覚める。子どもの頃からハスキーな声で、大好きな小林旭や森進一の歌をものまねしてよく歌っていたという。高校卒業後上京し、音楽の専門学校に入学し、仲間と組んだバンドでは、「当時はボーカルというキャラじゃなかった(笑)」ためドラムを担当。その後、バンドを辞め、歌手であり芸人でもある団しん也の付き人になる。2007年、「さすらいおはら節」で歌手デビュー。2018年にリリースした前作「別離(わかれ)…愛の嘘」では、初めて作曲に挑戦し好評を博す(かとう洋名義)。2020年「まよい川」で本格的な演歌に初挑戦。最近は、「この時期を皆さんと乗り越えたい」と、ファンの要望に応え苦手だったSNSを開始、ファンとの交流を深めている。