野村美菜の魅力がギュッとつまった「野村美菜オリジナルベスト2020」

歌手人生の生き様を感じるようなアルバムに出合うと、とてもうれしくなる。野村美菜がリリースした「野村美菜オリジナルベスト2020」は、まさにそんな一枚だった。

※このインタビューは2020年7月に行ったものです。

 

野村美菜は17歳の時に、歌手を志して宮城県から上京した。アルバイトをしながらレッスン生活を続けたが、そう簡単に歌手になれるわけはない。愛情の裏返しだろうが、父は「お前が歌手デビューできたら逆立ちをして、国分町(地元)を歩いてやる」と言った。

しかし2002年、野村は作曲家の水森英夫氏に見い出されて弟子入りする。レッスンは厳しかったが、水森氏は「他のレッスン生は弱音を吐いたり、文句を言ったりすることもあったが、野村は愚痴ひとつ言わなかった」と回想する。

日本一長い芸名として話題(?)だった、“三代目コロムビア・ローズ 野村未奈”は、日本クラウンへの移籍を機に大きな看板を外し、野村未奈となった。最初のシングルは「千曲川哀歌/くれない船」(2015年10月7日発売)。発売に先立ち、2015年9月には長野県上田市で発売記念イベントを行うなどした。

2004年6月23日、野村は三代目コロムビア・ローズとして、コロムビアミュージックエンタテイメント(現・日本コロムビア)からデビューした。昭和の大スターの冠を背負ったことは大きなプレッシャーだったが、初代と二代目が10年を前に引退していたことから、「10年は歌い続ける」と決意していたという。

2015年、野村は日本クラウンに移籍し、“野村未奈(2017年1月から本名の野村美菜)”となった。“コロンビア・ローズ”という、昭和の大きな看板を外して歌っていくことを決めた。

そして、歌手デビューから丸15年。野村は、看板を外した三代目コロムビア・ローズ時代の歌を含めた、すべてのオリジナル曲と向かい合い、ベストアルバムをリリースした。「野村美菜オリジナルベスト2020」は、野村の15年を凝縮した作品となった。
 

Mina Nomura
Special Interview

 
――ベストアルバムを出すことになった経緯を教えてください。

野村 日本クラウンに移籍してからはベストアルバムを出していなかったのですが、ファンの方から、三代目コロムビア・ローズ時代の曲から集めたベストアルバムがほしい、という声がたくさんありました。15周年が過ぎたこのタイミングで、集大成となるアルバムを出そうという話が出たのですが、本当にありがたかったですし、ファンの方にお届けできことがうれしいですね。やったー! って(笑)。

――収録曲は全16曲ですが、選曲に苦労されたのでは?

野村 とくに思い入れのある曲や、お世話になっている事務所の地元(東京・江東区)を舞台にした「深川ブルース」や「雨の辰巳新道」は入れたいなとか、10周年の記念作品で、それまでの私の作品の世界観にはない、スケールの大きな曲となった「かがり火恋歌」は外したくないしとか。スタッフの方とも相談し、厳選に厳選した16曲になりました。

 

1.「千曲川哀歌」

作詞/森田いづみ 作曲/水森英夫 編曲/前田俊明
初出:2015年10月7日

 
――今回は全16曲を振り返っていただきたいのですが、まず、アルバムの1曲目は「千曲川哀歌(エレジー)」です。日本クラウンへの移籍第1弾の曲になりました。

野村 信州・上田を舞台にした「城下町ブルース」をリリースしたご縁で、2009年から長野県上田市の観光大使“信州上田~歌と愛を紬(つむぐ)大使~”を務めさていただいていますが、移籍第1弾という節目に、新たにまた、上田を舞台にした作品をいただきました。上田から別所温泉まで出ているローカル線「別所線」など、森田いづみ先生がすごく思い入れのある場所を歌詞の中にたくさん入れてくださいました。

――曲が完成した時の気持ちはいかがでしたか?

野村 曲の出だしのトランペットの音色がよくて、オケ録(伴奏録音)の時に、「わーっ、すごくかっこいい」って。鳥肌が立ちました。お亡くなりになった前田先生が精魂込めて編曲してくださったのだと思います。移籍第1弾にふさわしい曲で、カラオケでもたくさん歌っていただきました。YouTubeで公開されたミュージックビデオへのアクセスもすごく多かった曲です。

 

2.「出港五分前」

作詞/松井由利夫 作曲/水森英夫
初出:2004年6月23日

――2曲目はデビュー曲「出港五分前」です。港に切なく響く霧笛の音をメロディーに乗せて、「‥‥霧笛がボゥ」と歌うラストが印象的です。

野村 最初は、「‥‥霧笛がボゥ」の後に、「もひとつボゥ」という歌詞がついていたんですよ。「出港五分前」はすごく切ない歌詞で、曲調もマイナーな王道の演歌でした。生意気にも「もひとつボゥ」ってどうなんだろう(笑)、と思っていました。でも、デビュー前だったので先生にも言えず‥‥。

――最終的には、「もひとつボゥ」はなくなった。

野村 レコーディングの時かな。入れるか入れないかを、松井先生とディレクターさんが協議されていて、どうなるのかなと、聞き耳を立てていました(笑)。

――入れないと決まった時には、良かった~!! みたいな?

野村 はい(笑)。でも、のちに松井先生が「入れていても良かったじゃないか」とおっしゃっていました。松井先生はとても優しいお方です。師匠の水森先生は歌には厳しかったので、初めてのレコーディングは緊張しました。しかも、美空ひばりさんがレコーディングされていたのと同じスタジオだったので、なおさらでした。そんな現場で、松井先生が「がんばってね」と、優しく励ましてくださったのが、今でもすごく印象に残っています。詞の内容についても、「ローズちゃんには少し大人っぽい曲かな」とおっしゃっていましたが、「出港五分前」というタイトルは、これからデビューする私の心境を表してくださったものです。がんばろう! 行くぞ! と。

――新録ということで、今回、歌ってみていかがでしたか?

野村 当時はどう歌ったらいいのかわからなかったですし、今聴くと、声が固いし、聴くのがちょっと恥ずかしかったですね。ですので、あの時より成長した歌い方でお届けしたい、という気持ちで歌いました。

――逆に、当時の自分もがんばっていたな、と思う部分はありましたか?
野村 自分の持っている力を最大限に出しているので、力強さや、パンチ力はもしかしたらデビュー時の方があるかもしれないですね。


2020年6月3日発売
野村美菜 ベストアルバム
「オリジナルベスト2020」