坂本冬美の“盃をあげたい!”~新曲「再会酒場」で人と人とをつなぐ~
坂本冬美が明るく元気で硬派な男歌を送り出す。前作「酔中歌」から約1年ぶりとなるシングル「再会酒場」だ。坂本は「久々にスカッとした男唄との再会。皆さんと共に盃をあげたい」と心躍らせている。
文=藤井利香
5月の爽やかな風に乗って、坂本冬美のキレのある歌声が耳元に届く。5月10日リリースの新曲「再会酒場」は、夏に向けて人々の心を明るく元気にする、ノリのいい男歌だ。
新型コロナウイルスが5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類感染症へと移行することが決まったとき、「これ以上ないベストタイミング」と、関係者一同驚きを隠せなかったという。
その強運を追い風に、飲食業界や酒場を盛り上げ、人と人とをつなぐ「応援歌」として日本中に広めていきたいと意気込む。ご無沙汰していたあの店、この店で、久々の再会を楽しむたくさんの顔を思い浮かべながら、力強く歌唱する。
コップ酒を傾ける手の仕草や、ステージなどでのオーラスで「乾杯!」と発するアレンジは坂本自身の発案によるもの。こちらにも注目だ。
今年の運を全部持っていかれる?
――4年前の「俺でいいのか」も男歌ですが、明るく元気が出る男歌としては、「男の火祭り」以来10年ぶりになりますね。
坂本 「再会酒場」は、実は前作の「酔中花」と同時期に作った作品なんです。どちらを先に出すかとなったとき、状況を考えると時期尚早。「再会酒場」は次でとなったのですが、今回正式に5月10日に発売が決まったあと、その2日前にコロナが5類に引き下げられること知ってびっくり。今年の運を全部持っていかれたんじゃないかと思うほどピッタリはまって、1年間温めておいてよかったなと思いました。
――冒頭の“明けて巣ごもり”という歌詞が、コロナ禍の日々を象徴しています。
坂本 作詞の吉田旺先生、さすがですよね。「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉がありますが、お酒をテーマにしたたくさんの曲があるなかで、まさにこの時代を象徴する歌だと思います。先々この歌を聴いたとき、あまりいい記憶とは言えないかもしれませんが、こんな時間を過ごしたんだなと、皆さん思い出すのではないでしょうか。
テレビでは1、3番になってしまいあまり2番は歌う機会がないのですが、2番に入っている “まるで昭和が 割烹着(エプロン)つけて 立っているような おかみの笑顔” というくだりなど好きですね。男歌ではありますが、私がおかみさんであったり、お母さんであったり、そんなイメージでも聴いていただけたらうれしいです。
みんなで「カンパイ!」って盃をあげたい!
――CDジャケットは、割烹着姿の写真を選ばれたんですね。
坂本 いろいろ検討したのですが、この雰囲気もいいんじゃないかと。ただ、歌唱するときはいつも通りの着物。どうも上品に歌い過ぎるきらいがあるみたいで(笑)、この歌での最初のテレビ収録の際、終わったあとに「上品さを抜いて」とディレクターから言われてしまいました。この歌ばかりはもっとラフに、勢いよく歌っていいと。日本を元気にする応援歌ですから、歌い続けることで1年後には歌の雰囲気もきっと変わっているんじゃないかと思います。
――そのテレビ収録の際には、最後に「カンパイ!」と言葉を添えて歌が終わります。これは本来の歌詞にはありませんよね。
坂本 これはまったくのアドリブなんです。家で練習していたとき、お辞儀で歌い終えるよりも「カンパイ!」ってみんなでやれたらいいし、収まりもいいので入れさせてもらいました。本来ならビールで乾杯もいいんですが、そこは和服なので手つきもコップ酒のイメージ(笑)。
――カラオケでは、きっと大盛り上がりですね。
坂本 やっと解き放たれたという感情が皆さんにあると思うので、誰にも遠慮なく、気持ちよく飲んで歌って、となれたらいいですね。歌うときは私の歌を参考にしなくてもいいので。再会できた喜びを分かち合いながら楽しんで歌ってください。
▼ユーチューバー坂本冬美による「再会酒場放浪記」。コロナ禍でがまんを強いられた飲食店や酒場を訪問し、居合わせた客に「再会酒場」を歌唱プレゼント。”カンパイ!”と盃をあげている。
コロナ禍で野菜作りに挑戦
――コロナ禍のここ数年を振り返り、どんな思いがありますか?
坂本 誰もがそうですが、お客様を目の前にして歌う機会が少なかったことが一番つらかったです。でも、そんなときだからこそYouTube(公式チャンネル「坂本冬美♪」)に挑戦したりして、新たなアプローチ法を覚えたのはよかったなと思っています。今は以前の状態に戻りつつありますが、お客様の前に立てるありがたさを感じながら、一つひとつのステージを今まで以上に大事にしていきたいですね。
コロナ禍によって、生活面ではかなり変化がありました。自分の時間がかなり持てたので、プランターを買って野菜や花を育て始めたんです。これがまた楽しくて、本当に人間らしい生活をしているなと。野菜の味は買ったほうが美味しい気もしますけど(笑)、何もなかったベランダが賑やかになって、毎朝の水やりも張り切ってやっています。ピーマンにバジル、ブロッコリー、いろいろ挑戦しています。
坂本冬美のカラオケソング三部作
――次にカップリングの「酒よ」は吉幾三さんのカバーですが、こちらもお酒つながりの曲です。
坂本 私の大好きな1曲で、カラオケの定番です。オリジナルの吉さんとは一味違うアレンジになっていますので、ちょっとオシャレに歌っていただけたらと思います。
――カラオケといえば、前作の「酔中花」がカラオケファンから絶大な支持を受けています。独特のリズム感がツボにはまったようですね。
坂本 そうなんです。他にあまりないリズム感が心地よく、私の振りもそれに合わせてゆらゆらとした感じにしています。ここまで皆さんに歌っていただけるとは予想していなかったのでとてもうれしいです。詩が吉田旺先生、曲が徳久広司先生で、同じ先生方ということで「俺でいいのか」「酔中歌」「再会酒場」の3曲を、カラオケソング三部作ととらえています。
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吉永小百合からいただいた「ステキです」
――新曲以外のお話を少し聞かせてください。3月発売の『吉永小百合60周年記念BOX~星よりひそかに 雨よりやさしく~』で、コラボ作品として「夢千代日記」(語り/吉永小百合、歌/坂本冬美)、そして吉永さんのデビュー曲「寒い朝」の2曲を冬美さんが歌唱しています。
坂本 記念ボックスに参加させていただき、私の宝物になりました。本当に光栄で、レコーディングはこれ以上ないほどの幸せな時間でしたね。エピソードをお話しますと、レコ前にお寿司をご馳走になったのですが、吉永さんに「何かリクエストがあったらどうぞ」「遠慮なさらずに」と言われた私。ちょうどシンコの時期で、ありますかと聞いたら4つだけ残っていますと。そこで何を思ったか私、「では、4つください」って言っちゃったんです。全部なんていう大人は普通、いませんよね。よほど緊張していたみたいで、そんな私を見て吉永さんが「ステキです」って。申し開きもございません(笑)。
そして更に感激したのが、レコーディング後にあった私の劇場公演に、吉永さんがプライベートでそっと見に来てくださったこと。吉永さんの関係者にも私のほうにも何も言わず、お一人で来られたんです。翌日、「拝見しました」というメッセージカードをいただき、人柄の素晴らしさを改めて感じました。ですので、なおさら吉永さんの記念ボックスにご一緒させていただいたことを大変うれしく思っています。
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“ふわっふわっ”のおにりぎり
――歌以外では、4月9日に相葉雅紀さんらと共演したドラマ『ひとりぼっちー人と人をつなぐ愛の物語―』に出演されました。出ずっぱりで大変でしたが、ステキな演技でした。
坂本 偶然にも、こちらも割烹着姿で。とにかく反省だらけだったのですが、苦労したのはおにぎりを握りながらセリフを言うこと。緊張し過ぎて、あれ、何の具材を入れたんだっけと忘れてしまったり。また、直前まで舞台をやっていたせいかつい大きな声を出してしまい、「声を粒だてないで、自然に」というご指導もありましたね。あまりに心配で、プロデューサーの石井ふく子先生に毎回「大丈夫ですか?」と何度も聞いてしまったほど。その度に先生が「大丈夫よ~」と。「これでこりごりなんて思わないでね」と、ありがたいお言葉もちょうだいしました。
おにぎりの握り方は上手になりましたよ。ふわ、ふわって、握るのはほんの2回だけ。家でも練習して、たくさん作ったおにぎりを藤あや子さんのお孫さんに食べてもらったりもしました。「美味しいからまた作って」と、とても好評でした(笑)。
こうして舞台、テレビドラマの撮影と忙しかったので、今後は1年ぶりの新曲をしっかり歌っていきたいですね。キャンペーンやコンサートを通じてたくさんの人に聴いていただき、歌ってほしいなと思っています。
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2023年5月10日発売
坂本冬美「再会酒場」
「再会酒場」は2013年の「男の火祭り」以来10年ぶりとなる、坂本冬美の明るく元気で硬派な男歌。「私自身もここ数年、様々な女性を演じて来ましたが、久々にスカッとした男歌との再会です」と坂本。カップリング曲「酒よ」は吉幾三の名曲。坂本のアルバム『ENKAⅡ~哀愁~』に収録されているカバーをシングルへコンバージョン。吉の作品とはまた一味違う、坂本バージョンが楽しめる。
profile
坂本冬美(さかもと・ふゆみ)
3月30日、和歌山県生まれ。1986年、作曲家が全国各地を訪れ、その土地の歌自慢に歌の極意を伝授するNHKの『勝ち抜き歌謡天国』(和歌山大会)で名人となり、歌唱指導を担当していた猪俣公章の内弟子となる。1987年3月4日「あばれ太鼓」でデビューし、「日本レコード大賞 新人賞」を始め数々の新人賞を受賞。翌88年「祝い酒」で『NHK紅白歌合戦』に初出場。以来32回の出場を果たす。代表作には「火の国の女」「夜桜お七」「また君に恋してる」など多数。
坂本冬美 公式HP
坂本冬美 公式YouTubeチャンネル
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