
坂本冬美がカバー曲を歌うスペシャルライブを開催。“坂本冬美”という歌手の真骨頂を見た
坂本冬美が1月15日、東京・港区のライブレストラン「ビルボードライブ東京」でスペシャルライブを開催した。「Billboard Live presents FUYUMI SAKAMOTO Special Night ~想いびと~」と題した今回のライブは、昨年6月にリリースしたカバーアルバム『想いびと』の収録曲を中心にしたもの。「NHK紅白歌合戦」出場歴36回を誇る日本を代表するシンガーのひとりでありながら、カバーも重視し、楽曲に真摯に向き合う坂本冬美という歌手の姿が鮮やかに浮き上がる一夜となった。
撮影:田中聖太郎写真事務所
ゴージャスな白のドレスで登場した坂本のライブは「また君に恋してる」から幕を開けた。坂本の代表曲のひとつである同曲は2009年にリリースされ、その後カバーアルバム『Love Songs~また君に恋してる~』に収録されていたビリー・バンバンの楽曲。坂本が細やかな情感とともに歌い、大ヒットを記録したものだ。
坂本が歌い終えると、多くのファンからの「冬美ちゃん!」という声援が飛び、それを聞いた坂本は「なんだか市民会館にいるみたいですね。でも、みなさま忘れないでください、ここはBillboard!」とファンを笑わせた。
また、8年ぶりのBillboard公演であることに触れ、観客との近さについて、「鼻の穴まで見えそうですね」と言うと、ファンから「きれいだよ!」と声が飛ぶ一幕もあった。
2曲目は秦基博のカバー「ひまわりの約束」。坂本は力強く伸びやかに歌い上げる。3曲目の「恋の予感」は安全地帯の大ヒット曲のカバーだ。恋愛を描くかのように、複雑なニュアンスにあふれた歌声を聴かせた。そして、4曲目の「月」は桑田佳祐のカバー。坂本の柔和にして艶やかな歌声がひときわ輝く一曲だった。
ここで坂本、昨年大みそかに出場した「第75回NHK紅白歌合戦」で、能登・輪島を訪れたことについて触れた。そして、自身も母や弟との別れを経験していることを語ると、5曲目に秋川雅史の「千の風になって」をカバーへ。6曲目にはダウン・タウン・ブギウギ・バンド「身も心も」をカバーすると、坂本はしなやかにしてブルージーな歌声で会場を染め上げた。
ギター、ベース、ドラム、ピアノ、バイオリン・二胡からなるバンドメンバーを紹介し、若き日の海での思い出を語ってから、7曲目のサザンオールスターズのカバー「Oh! クラウディア」へ。8曲目のオフコースのカバー「心 はなれて」では、ステージの椅子に腰かけ、過ぎ去りし日々を愛おしむかのように歌い上げ、それは9曲目の石崎ひゅーいのカバー「花瓶の花」でも同様だった。
そして、「花瓶の花」のアウトロが演奏されるなか、坂本はファンの拍手に包まれながらステージを去っていった。
会場を埋めるファンからのアンコールの拍手を受けて、坂本は羽織をまとってステージに再登場すると、10曲目として歌いだしたのは、GACKTのカバー「サクラ、散ル…」。和のテイストが坂本の持ち味と実に相性の良い一曲だ。
さらに11曲目は、坂本のオリジナル曲にして代表曲「夜桜お七」。イントロが奏でられた瞬間、歓声が上がった。ドラマチックな楽曲を坂本は自身の高音から低音までを駆使して見事に歌い上げた。
MCでは、前夜は緊張で1時間おきに起きてしまったと述べ、「これでゆっくり眠れます」とファンを笑わせた。
この夜の最後となる12曲目として歌われたのは「ほろ酔い満月」。2024年にリリースされた、80年代歌謡曲風のナンバーで、ギターもうなる楽曲だった。
坂本冬美は、自身のオリジナル曲でも、他のアーティストのカバー曲でも、同じように魂を込める。カバーする楽曲は、必ずしも大ヒット曲とは限らず、しかも大物から若手までの幅広い楽曲を取り上げる。どんな楽曲であれ、坂本が歌えば必ず彼女ならではの息吹が吹き込まれる。そこに“坂本冬美”という歌手の真骨頂を見た気がした夜だった。(音楽評論家:宗像明将)
セットリスト
M1 また君に恋してる
M2 ひまわりの約束
M3 恋の予感
M4 月
M5 千の風になって
M6 身も心も
M7 Oh! クラウディア
M8 心 はなれて
M9 花瓶の花
〈アンコール〉
M10 サクラ、散ル…
M11 夜桜お七
M12 ほろ酔い満月
2024年6月26日 発売
ハートウォーミング・カバーアルバム
坂本冬美『想いびと』

ユニバーサルミュージック UPCY-7979 ¥3,500(税込)
収録曲
M1.「ひまわりの約束」
作詞・作曲:秦 基博 編曲:城戸紘志
M2.「恋の予感」
作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二 編曲:佐々木博史
テレビ朝日ドラマプレミアム 宮部みゆき原作 『霊験お初~震える岩~』主題歌
M3. 「サクラ、散ル…」
作詞・作曲:GACKT/YOHIO 編曲:城戸紘志
M4. 「月」
作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:宮野幸子
M5. 「千の風になって」
日本語詞・作曲:新井 満 編曲:新倉一梓
M6. 「身も心も」
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:野村陽一郎
M7. 「One more time, One more chance」
作詞・作曲:山崎将義 編曲:萩田光雄
M8. 「Oh! クラウディア」
作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:萩田光雄
M9. 「心 はなれて」
作詞・作曲:小田和正 編曲:佐々木博史
M10.「花瓶の花」
作詞・作曲:石崎ひゅーい 編曲:宮野幸子