葵かを里

葵かを里が放つ渾身の一曲「諏訪の御神渡り」~伝説の恋の道をモチーフに~

2005年「夢みなと」でデビューした葵かを里は着実に歌手の道を歩み、17作目のシングル「諏訪の御神渡り」と出会った。デビュー前から長野県諏訪地方とは縁が深かったという葵は、これまでの集大成の気持ちで歌い上げたという。とても神秘的な諏訪湖の“御神渡り”と日本三大奇祭の一つ“御柱祭”で知られる信州・諏訪地方を舞台にした作品を、葵は華麗に舞ながら唄っている。

「やっと来た! やっと諏訪の歌が歌える」

――今回は「ひとり貴船川」から10カ月ぶりの新曲「諏訪の御神渡り(おみわたり)」ですが、舞台が京都から諏訪に移りました。

 毎回、曲をつくるときに先生方と舞台をどこにしようか、と相談します。私は愛知県出身ですが、デビュー前から諏訪と交流がありました。お祭りに参加したり、応援してくださる方がいたり。とくに長野の諏訪地方は、馴染みが深いところでした。ただ、諏訪を歌にするということはこれまで思いつきませんでした。今回、「長野」というキーワードが出て、先生から「諏訪の御神渡り」というタイトルはどうかと言ってくださったときに、「ああ、やっと来た。今までの思いが叶い、やっと諏訪の歌が歌えるんだ」とうれしくなって感激しました。

――新曲「諏訪の御神渡り」は愛する人への募る想いが歌われていますが、神秘的な伝説を持つ氷の道“御神渡り”(※)がモチーフになっています。

 私からもこんな内容を入れたいとリクエストさせていただきました。今年は7年に1度の神事「式年造営御柱祭」が執り行われる年なので、“御柱祭(おんばしらさい)”もぜひ歌に入れたいとお願いし、麻こよみ先生に歌詞を書いていただきました。毎回、麻先生とのやりとりでは第1稿で終わることはく、何度も妥協せずに考えていただき、修正を加えながら作品に仕上げてくださいます。完成した歌詞は本当に素晴らしいものでした。

※何年かに一度、結氷した諏訪湖に氷が山脈のように盛り上がって氷の道が現れる。その道は、諏訪大社上社の男神が下社の女神のもとへと渡る恋の道と言われ、御神渡り(おみわたり)呼ばれる。

――御柱祭の「木落とし」はとても荒々しい男衆の姿が浮かびますが、この曲ではとても切ない恋模様が描かれていて、とても対照的ですね。

 そうですね、“御柱祭”は3番に歌詞に出てきます。御柱祭がある年には、御神渡りもできるというジングスがあるのですが、今年は氷の道ができませんでした。まさに「御神渡りもできずに逢いに来れない。私はいつまで御神渡りの出現を待てばよいのか」という歌の世界そのもの。御神渡りを認定する地元の八剣(やつるぎ)神社の宮司さんが歌詞を見て、「まさしく今のこの状態を歌っているね」と感動しておられました。

極寒の中で撮影されたミュージックビデオ

――ミュージックビデオでは、結氷した諏訪湖の神秘的な風景と、葵さんの凜とした舞いと歌が印象的です。

 今年は諏訪湖に御神渡りが出来つつあったのですが、強風が吹いてすぐに流されてしまいました。でも、ミュージックビデオの撮影で諏訪湖を訪れた際には、極寒の厳しさでの撮影は大変でしたが、少し出来かかったような御神渡りを目にすることができました。また、ありがたいことに八剣神社の神楽殿をお借りして舞いを踊らせていただき、撮影前にサプライズで祈祷までしていただきました。このような撮影も初めての経験でしたし、着物の柄も御神渡りをイメージしたものなんですよ。

――太鼓で始まるイントロが曲への期待感を高めてくれます。

 諏訪大社にはかつて日本一と言われた大太鼓がありますので、「諏訪の御神渡り」では、太鼓の響から壮大に始まるアレンジになりました。この太鼓の音が、御神渡りができるときの氷と氷がぶつかり合う音に重なるような雰囲気を感じさせています。ミュージックビデオでは初めてドローン撮影も実現して、曲同様に映像も壮大に仕上がりました。

――そのような壮大な作品をどのように歌われていますか?

 極寒の中で愛する人をいつまでも待ち続けるというのは、相当な意思が強くないとできないと思います。そこを表現して歌おうと心掛けました。私自身がそんなにも意思の強い女性かというと・・・、そこはご想像にお任せ。もうちょっと人生経験を積まないと! ですね(笑)。でも、この歌詞の“あなたお願い 今すぐ 今すぐ逢いに来て”のところは、少しだけ変えていただきました。自分が歌っていて、当初のメロディーだと気持ちがそこまで届かなかったんです。先生に「音を伸ばさせてほしい」とお願いました。

――聴きどころでもありますね。

 私としても思い入れの強い部分です。“今すぐ 今すぐ”では、ファルセットの泣きの部分をロングトーンにすることによって、次の“逢いに来て”に移るときに感情が入りやすくなりました。ここを一番じっくりと聴いてほしいですね。“今すぐ 逢いに来て”という言葉は、極寒の中に立って主人公が叫んでいます。聴いてくださる皆さんに、そこが伝わればうれしいです。

カップリング曲「人情酒場」では再び作曲に挑戦

――カップリング曲の「人情酒場」では、馴染の居酒屋でのありふれた日常が描かれています。それぞれの人生を生きてきた客同士が、お酒を酌み交わし、苦労を、痛みを忘れましょうと歌っています。作曲は茶野香(=葵かを里)さんです。

 前作「女の花を 咲かせます」が好評でしたので、再び作曲させていただきました。ただ、自分で作曲させていただいたにもかかわらず、レコーディングではダメ出しを多くいただきました(笑)。お客さんは酒場の女将に癒されに来るわけですから、客を癒す女将さんの気持ちになって歌ってほしいと指摘されました。自分が思っていた世界とは違う歌い方をしていたんだなって気づかされました。

――お酒は飲まれますか?

 最近まで、まったくお酒が飲めなかったんですよ。ですので、まさか麻先生から酒場の歌が来るとは思ってもいませんでした。でも、ようやく少しだけ飲めるようになってきたので、この歌の世界観もわかるようになったと思います!!

――最後に、ファンの皆さまへメッセージを!

 今回は私が歌手になる以前から縁の深い長野県諏訪を舞台にした曲を歌うことができましたので、思い入れの深い渾身の一曲になったと思います。長野の皆さんに恩返しをしたいと思っていますし、これまでの集大成ぐらいの気持ちで歌っていますので、全国の皆さんに諏訪の御柱祭や御神渡りを知ってもらえる機会になればうれしいですね。歌を通じて、行事や名所などに興味を持っていただければ、私もご当地の作品を歌っている意味があると思います。諏訪地方のことを知っていただき、「諏訪の御神渡り」を聴いて、歌ってくださいね。

(文=小西康隆)

 

~昨年を振り返って~

Q 昨年は「ひとり貴船川」が好評で、オリコン演歌・歌謡曲ランキングでも初登場第1位を獲得されました。

葵かを里 とても評判が良かったんですよ。京都が舞台の歌は6作目でした。“日本舞踊を華麗に舞いながら唄う”演歌歌手の原点となった作品の舞台も京都なんです。ですので、昨年の「ひとり貴船川」では「五山の送り火」(2016年)以来、約5年振りに、原点に戻ろうということで京都が舞台の作品になりました。京都の楽曲でのオリコンも1位もうれしかったですね。

Q 「ひとり貴船川」の特別盤では、茶野香として作曲家デビューも果たしました。

葵かを里 麻こよみ先生に書いていただいた「女の花を 咲かせます」(カップリング曲)の歌詞を目にしたときに、まさしく私のことを書いてくださったのだと素直に思いました。そう思って歌詞を何度も読んでいたら、自然に天からメロディーが降りてきました。そのメロディーが次から次と湯水のようにあふれ出てきたものですから、レコード会社に相談して作曲をさせていただきました。私の故郷・愛知県の西尾市が抹茶どころなので、お茶の香りがするという意味と地元愛を込めて「茶野香」というペンネームにしました。

 

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2022年3月16日発売
葵かを里「諏訪の御神渡り」
葵かを里

「諏訪の御神渡り」
作詞/麻こよみ 作曲/影山時則 編曲/竹内弘一
c/w「人情酒場」
作詞/麻こよみ 作曲/茶野香 編曲/岩田光司
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91410 ¥1,350円(税込)

信州最大の湖である諏訪湖には、ロマンチックな伝説がある。冬になると、諏訪湖は全面結氷するが、何年かに一度、氷が山脈のように盛り上がって氷の道が現れる。その道は、諏訪大社上社の男神が下社の女神のもとへと渡る恋の道と言われ、御神渡り(おみわたり)呼ばれる。新曲「諏訪の御神渡り」はこの伝説がモチーフになっている。また令和4年(2022年)は、7年に一度行われる御柱祭(おんばしらさい)が開催される年。御神渡りと御柱祭で盛り上がる諏訪にあって、“なぜなぜ二人は 逢えぬまま”と、主人公が思いを募らせる。一方、カップリング曲「人情酒場」は、「女の花を 咲かせます」に続き葵かを里自身がペンネーム=茶野香で作曲を手がけた作品。馴染の居酒屋で人それぞれの人生模様の客同士が差しつ差されつ、笑顔でサアサ忘れましょ・・・酒を酌み交わす。ありふれた日常の中での人情作品となっている。

from 葵かを里
カラオケで歌うときには“御神渡り”や“御柱祭”のことを理解して歌ってほしいですね。ネットで写真などをぜひ検索してください。諏訪湖の“御神渡り”を知らないで歌っても、聴く人に伝わらないと思いますので。
ちなみになんですが、歌詞に出てくる“御神渡り”の歌唱では最初、意見が分かれたんですよ。私としては最初、凄みを利かせて歌っていたのですが、周りの方々からそこまで強く歌うとあまりにも恐い!って言われて・・・。自分なりに凄みを利かせて歌っていたら「鬼が出て来そうだ」と言われてしまいました(笑)。


Profile
葵かを里(あおい・かをり)
愛知県生まれ。子どもの頃より自宅にあったカラオケルームでほぼ毎日のように演歌を聴いて育つ。2005年、「夢みなと」でメジャーデビュー。古都を題材にした作品が多く、日本舞踊を舞いながら歌う“美・歌・舞”でファンを魅了する。特技は日舞(芙蓉流名取)、茶道(裏千家師範)、華道(池坊師範)。最近は健康に目覚め、野菜スペシャリストの資格を取得すべく勉強中。デビュー15周年を迎えた2020年には、12月にコンプリートアルバム『デビュー15周年記念ベストコレクション2005-2020』(CD3枚組)、翌2021年1月には映像作品『デビュー15周年記念ベストコレクション2008-2020』(DVD2枚組)をリリース。故郷・愛知県吉良町(現・西尾市)の観光親善大使(2008年6月に任命/現在は西尾市観光親善大使)。

葵かを里 公式HP
葵かを里 公式ブログ
徳間ジャパン 葵かを里ページ

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