中西りえ――ジャンルレスな歌力

中西りえが12月2日に、前作「ひとり珠洲岬」に続き石川県・能登を舞台にした新曲「能登の海風」を発売した。デビューから9年目を迎えた中西にとって、今作は10作目という節目の作品。無二の表現力と歌力で、気風の良い“浜の女房”を情熱的に歌い上げる。

 

「かっこいい!でもすぐに、おっと……難しいな!と思いました(笑)」

 

――中西さんは2012年に、師匠である作曲家・櫻田誠一先生が手がけてくださった「北海男節」という、北海道の漁師たちの生き様を描いたダイナミックな作品でデビューされたんですよね。

中西 デビュー曲はインパクトがある楽曲でしたから、『NHKのど自慢』などのテレビ番組で多くの方に歌っていただいたり、着うたも流行っていたのでおかげさまで話題になりました。櫻田先生は私のデビュー2週間前にお亡くなりになられまして、デビューした姿は見ていただけなかったんです。この曲は、私にとって本当に大切な宝物ですね。

 

――デビュー曲から数えて、今回の新曲「能登の海風」は中西さんの10作品目となります。昨年発売した前作「ひとり珠洲岬」と同じく、能登が舞台ですね。

中西 作詞してくださったかたかたかし先生、作曲の弦 哲也先生、ともに初めてご一緒させていただきました。たか先生から、「今回も能登を舞台にしたい」とお話しがありまして、たまたま新曲も舞台が能登になりました。

 

――「ひとり珠洲岬」を発表されてすぐにコロナ禍に見舞われてしまったため、珠洲市を訪れて歌を披露することができなかったとお聞きしました。地元の皆さんは中西さんがいらっしゃるのを楽しみにされていたでしょうね。

中西 今年の3月に、能登にはお邪魔できたんですけれど、結局珠洲岬のある珠洲市では1回も歌えなかったんです。そういう意味でも、今作も能登を舞台にした作品をいただけたというのは、いい巡り合わせだなと思っています。“能登第二弾”ということで、前作と今回の新曲合わせて、二作一緒に聴いていただけたらいいなと思いますね。

 

――「能登の海風」は、能登の愛する男性に嫁ぎたくましく支える浜の女房の心意気や人生への感謝、石川県の指定無形文化財となっている伝統芸能「御陣乗太鼓」の音を中西さんが威勢良く歌われていて聴きごたえがありますね!

中西 誰かを支える奥さんの歌というのは初めてです。でもこの曲はほのぼのとした幸せ演歌というわけでもないので、ただ優しく歌うのではなくて、海風の荒々しい音や海の男に嫁いだ凛とした芯のある女性をイメージして歌いました。御陣乗太鼓は夕方、日が落ちてから。夜の海なのでそこに漁火とかがあって、怖いお面をして太鼓を叩くんです。ちなみに、最初は「ドンドドン ドドドドン ドンドドドドドドン」のところはすごいインパクトで、どうやって歌うんだろうってわからなくて、咀嚼が大変でしたね(笑)。

 

――この曲を聴いて、一番耳に残るのはこの太鼓の音のところでしょうね。1番の歌詞の最後に出てくる「私の男」というフレーズをカラオケで歌う時はちょっとこっぱずかしいなと思っちゃったんですけど……(笑)。

中西 歌っている時はあんまり恥ずかしいとかはないんですよね。どっちかっていうと、「ドンドドン……」のところの方が私は恥ずかしかったかな(笑)。タイトルを覚えられなくても「ドンドドン」って歌ってる曲!ってなると思うんですよね。だから、早くこの曲がどういう反応をいただけるのか、皆さんに聞きたいですね。

 

――初めての弦メロディーはいかがでしたか。

中西 おっと!って思いました。弦先生のメロディーはめちゃくちゃかっこいいと思いましたけど、かっこいいのすぐ後に「おっと、むずかしいな!」って。あと、出だしが尺八でかっこいい! でもまぁ……難しいです(笑)。

 

――弦先生からは何か歌う際のアドバイスなどはあったんですか?

中西 先生は偉大な方ですけれど、とても優しいオーラで包み込んでくださって「中西さんのファルセットは艶のある声で色気があるね」って言っていただきました。うれしかったですね。

 

――ご自身では、歳を重ねてだんだんと艶が出てきたなと感じることは?

中西 根本的には変わってないと思いますけれど、前々作の「海峡迷子」の頃から少し周りの方に言われるようになってきましたね。まだ嫁いだことがないので“浜の女房”の艶や色気は想像ですね(笑)。

 

――歌手としても9年目を迎えられましたが、振り返られてみていかがですか。

中西 時が経つのが早すぎて……あっという間ですね。1年がだんだん早く感じるようになりました。今年はとくにいろいろありましたけれど、これまでと同じように一日一日を一生懸命生きていきたい。昨日には戻れないし、明日を生きるしかないので、悔いのない毎日を過ごしたいですね。

 

――そして来年は10周年。最後に、今後の抱負をお聞かせください。

中西 好きなことを職業にさせていただいているので、これからも変わらずずっと歌手として生きていけたら幸せです。この次か次の曲が10周年記念曲になりますので、ヒット曲がほしいですね。今回のコロナによる状況で、歌うという環境もだいぶ変わる気がします。落ち着いたら海外にも歌いに行きたいです。あと、いつかアニメか特撮の主題歌を歌って、Japan Expo Paris(ジャパンエキスポ・パリ)で歌いたいですね!

 


2020年12月2日発売
中西りえ「能登の海風」

「能登の海風」  
作詞/たかたかし 作曲/弦 哲也 編曲/猪股義周  
「まっこと男花」  
作詞/たかたかし 作曲/弦 哲也 編曲/猪股義周  
日本クラウン CRCN-8366 ¥1,227+税

中西りえの10作品目となる「能登の海風」は、前作の「ひとり珠洲岬」に続き石川県・能登を舞台にした、伝統芸能・御陣乗太鼓の荒々しい音と能登で生きる女性の凛とした人生観と歌う作品。「御陣乗太鼓の伝わる輪島市には前作の時にうかがって、展示を見たり雰囲気は見てきたんですけれど、まだ生では見れていないんです。今年も残念ながら中止になってしまいました。来年はぜひ見たいですね。輪島のテーマソングにしてほしいです!(笑)」(中西)。カップリング曲「まっこと男花」は、不器用ながらもまっすぐ生きる男を歌う。「ド演歌ですね。男唄なんですが軽快な感じで歌えるので、そこまで唸らなくても皆さんに歌っていただける曲かなと思います」(中西)


Profile
中西りえ(なかにし・りえ)
11月28日、三重県伊勢市生まれ。歌好きの家族に囲まれて育ち、2歳の時に初めて歌ったのは都はるみの「千年の古都」。「アニソンと演歌で育ちました」(中西)。小3から高2までは地元の歌の教室に通い、自宅では父と毎日練習していたという。高校卒業後、歌手になるために上京。歌手を目指しながら短大へも通い、栄養士の免許を取得。卒業後、知人を通じて櫻田誠一氏と出会い、師事。2012年「北海男節」でデビューを果たす。以降、そのパワフルな歌力と類まれな表現力で演歌・歌謡曲からアニソン、特撮、ボカロ、80年代アイドルソングなど幅広いジャンルを歌いこなす。YouTubeでも、「歌ってみた」シリーズでさまざまな楽曲をカバーして話題となっている。


INFORMATION

中西りえオフィシャルブログ「歌力一直線」
中西りえYouTubeチャンネル

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