
日本とインドネシアの心を結ぶ歌声が代々木公園に響く。ルクマン・ローラと太田幸希が新曲「SAKURA TERCINTA~恋し櫻~」を日本初披露
「日本インドネシア市民友好文化フェスティバル 2025」が10月18日、東京・渋谷区の代々木公園イベント広場で開幕し、インドネシア人シンガー ルクマン・ローラ(Lukman Rola)と、日本人シンガー太田幸希が両国を歌で結ぶ新曲「SAKURA TERCINTA(サクラ テルチンタ)~恋し櫻~」を日本で初めて披露した。

両国の「故郷」を結ぶ新曲「SAKURA TERCINTA」
ルクマン・ローラは、インドネシア・南スラウェシ州マカッサルを代表する国民的シンガーソングライター。「南スラウェシ州最優秀ミュージシャン」にも選出された経歴を持ち、地域の伝統音楽を現代的なポップスに昇華させる手腕で、インドネシア音楽界の重鎮として高く評価されている。
一方の太田幸希は、NHK「のど自慢」でグランドチャンピオンに輝き、1991年にキングレコードから「本牧インザレイン」でデビューした経歴を持つ実力派シンガーだ。2022年より「日本とインドネシアを歌で繋ごう」をテーマに活動を続け、現地の日本語学校と連携した文化交流を主催するなど、両国の架け橋として活躍している。

左から日本語詞を担当した冬弓ちひろ氏、ルクマン・ローラ、太田幸希。
今回披露された「SAKURA TERCINTA~恋し櫻~」(Lukman Rola feat. Koki Ota)は、二人の交流から生まれた画期的な楽曲だ。“TERCINTA”とはインドネシア語で“最愛の人”を指す。遠く離れた愛する人を思う心を、インドネシアと日本の象徴的な風景に重ねて歌い上げる壮大なバラードだ。ルクマンが作曲とインドネシア語詞を、日本語詞は作詞家・冬弓ちひろ氏が担当した。
ルクマンは、楽曲制作の意図を次のように語る。
「この歌をつくる際、『異なる文化を持つ二人が一つになることは可能なのだろうか?』と考えました。そして、異なる国、異なる文化を持つ二人の愛は、距離や文化、言語に隔てられていても最終的には会うことができる、という物語を紡ぎました。『私たちの愛を阻むものは何もない』と歌っていますが、二人の愛は誰にも邪魔はできない、という強いメッセージを込めています。作品のジャンルとしてはインドネシアポップスですが、歌詞にマカッサルの有名な海岸『パンタイ・ロサリ』を入れることで、ローカルな香りも残しています」
そんなルクマンの想いを受け、太田は「日本語詞のパートは作詞家の冬弓ちひろ先生が、日本の象徴である“桜”を人になぞらえ、遠く離れた人を想う心を表現してくださいました。曲のテーマは愛ですが、男女の愛だけではなく、家族や、あるいは日本とインドネシアという国同士のつながりへの想いも込めて歌っています」と語る。


この楽曲の最大の特徴は、インドネシア語と日本語を融合させたデュエット形式にある。これまでインドネシアの楽曲が日本語でカバーされることはあったが、一つの楽曲の中で両言語が共存し、それぞれの国のシンガーが母国語で歌い合うスタイルは前例がなく、新しい文化交流の形として注目を集めている。
楽曲は、ルクマンの温かく深みのあるインドネシア語の歌唱で始まり、遠い故郷への思慕を歌い上げる。それに応えるように、冬弓氏が桜咲く日本での再会を願う切ない心情を描き、太田がパワフルかつ伸びやかに歌う。太田は、「日本語詞パートを歌う時には、インドネシア語の発音のニュアンスを意識している」と語る。言語は違えども、互いを想う感情がメロディに乗って見事に共鳴し、サビで二人の声が重なる瞬間は聴き応えがある。
感動のステージ、二人の想い

日本とインドネシア両国の友好を深める目的で2008年から続く「日本インドネシア市民友好文化フェスティバル」。このインドネシアの食、舞踊、音楽が一堂に会する一大文化イベントに、今年は2日間で10万8000人の来場が見込まれている。
メインステージとなる代々木公園野外ステージに登場したルクマン・ローラは、人生や時の流れを歌ったバラードや、愛する人への想いを歌ったオリジナル曲のほか、マカッサルを代表するインドネシア民謡を披露。その後、太田をステージに呼び込んだ。マカッサルの伝統的な衣裳を纏ったルクマンに対し、太田は着物姿で登場。日本人や在日インドネシア人たちが見守る中、二人は「SAKURA TERCINTA」を届けた。



今年9月、ジャカルタで開催されたインドネシア最大級のイベント「Jak Japan Matsuri」で世界初披露された際には絶大な反響を呼び、現地メディアでも大きく取り上げられたが、今回、満を持しての日本での歌唱となった。
その後、二人は五輪真弓の名曲「心の友」をカバー。1982年に発表されたアルバム『潮騒』に収録された同曲は、インドネシアでは「第二の国家」と言われるほど広く知られている。音楽が国境や文化、言語の壁を軽々と越えていく力を証明する、感動的なシーンだった。


ステージを終えたルクマンは「とてもうれしかったです。私を東京、日本に連れてきてくれたのは、このマカッサルの歌、インドネシアの歌だったからです」と振り返った。
「インドネシアからの移動は長く、疲れはありましたが、このイベントが無事に終わり、とても親切な日本の皆さんに会えたことで、その疲れはすべて消え去りました。日本の皆さん、ぜひマカッサルに来てください。物語を描くように、そこの文化や料理を楽しんでほしいです。私は日本の食べ物が好きですが、もし日本の人がマカッサルに来たら、きっとマカッサルの料理も好きになると思います」
彼が着用していた伝統衣裳には、マカッサルの英雄 スルタン・ハサヌディンが描かれ、「ロンタラ」というマカッサル独自の文字で、「マカッサルの人々はどこにいても家族のようにつながり、仲間意識を持つ」という言葉が書かれているという。

一方、これからもインドネシアと日本をつなぐ架け橋となる活動を続けていく決意を新たにした太田幸希は、「本当にハッピーです」と笑顔を見せた。
「この曲の構想は3年ほど前、インドネシア第二の都市スラバヤでのイベントでローラさんと初めてお会いしたのがきっかけです。そこから交流が続き、今回の企画につながりましたが、完成までに3年の月日を要しました。多くの方の協力でプロジェクトが急加速し、レコーディングに至りました。実は2番の歌詞ができたのは先月末という慌ただしさでしたが、今日こうして一つの目標であった日本最大級のインドネシアフェスで日本初披露がかなって幸せです。
マカッサルから日本に来るのは簡単なことではありません。その中で、マカッサルで圧倒的な存在感を放つアーティストであるローラさんが、この歌をきっかけに日本のステージに立ってくれたことが何よりうれしくて、本当にハッピーです」
そう語る太田に、ルクマンは「またぜひ来日したいです! 歌詞にあるように、日本の桜を一度見てみたいですね」と応えた。

単なる音楽交流に留まらず、文化や思想、さらにはビジネスシーンをも結びつける可能性を秘めた今回の日尼プロジェクト。代々木公園の空に響き渡った「SAKURA TERCINTA」の美しいハーモニーは、日本とインドネシアの明るい未来を象徴しているようだった。
2025年10月9日配信
Lukman Rola/太田幸希
「SAKURA TERCINTA~恋し櫻~」
(Lukman Rola feat. Koki Ota)

作詞/Lukman Rola、冬弓ちひろ 作曲/Lukman Rola











