三丘翔太が即興で歌う「お品書きライブ」を3年ぶりに開催。昭和歌謡マニアの本領発揮で、「逢いたかったぜ」
三丘翔太が7月10日、東京・港区のJ-SQUAREで「翔太のお品書きライブ ~ご注文おきまりですか?~」を開催した。回を重ねて7回目の開催となったが、2020年3月に予定していた同ライブがコロナ禍で延期となってしまったので、2019年6月以来、じつに3年ぶりの“開店”となった。
お品書きライブは、その日準備したメニュー曲から来店客のご注文に応えて即興で歌を披露するもの。昭和歌謡マニア&紅白マニアとして1000曲を超えるレパートリーを持ち、”懐メロボーイ“とも呼ばれる三丘らしいライブで、デビュー以来のライフワークとなっている。
3年ぶりの“開店”ということで、今回のお品書きライブではオリジナル曲を中心とした第一部と、お品書きライブの第二部との構成となった。また北海道や愛媛など遠方から駆けつけたファンも多かった。
「燈台灯り」「酒しずく」を披露して登場した三丘は「皆様、お待たせしました~。お久しぶりでございます。今日は満員御礼でございます」とファンに呼びかけた。“開催おめでとう♡ 待ってたヨ~~”。そんなメッセージを掲げるファンもいる中、会場は笑顔と拍手に包まれた。
登場時に歌った「燈台灯り」「酒しずく」は前回、お品書きライブを開催した2019年6月以降にリリースした作品で、生歌としてファンに届けたいという三丘の願いだった。
引き続きオリジナル曲から「虹色の雨」、デビュー曲「星影の里」、「面影今いずこ」、「散歩道」を歌うと、三丘はカバーアルバム『翔太のお品書き』『翔太のお品書き2』から北島三郎の「北の漁場」、渥美二郎の「夢追い酒」、五木ひろしの「長良川艶歌」をメドレーで熱唱する。「北の漁場」は、高校1年生の時、NHKのど自慢で歌った曲でもあった。
「デビュー初期の歌を歌うと、その頃の店頭キャンペーンを思い出します。ようやく少しずつ再開できるようになりましたが、このご時世、店頭キャンペーンがなかなかできない中、あのショッピングセンターへ行ったなとか当時のことが思い出されます。CDを一枚一枚(購入して)、応援していただくという機会がまた少しずつ増えるといいなと思いながら歌いました。『散歩道』は、人は出会えばいつかは別れが来るという悲しい歌ですが、こういう歌から人生を学ばせていただいています。それが演歌・歌謡曲の素晴らしさであると思います」
この日のライブのために仕立てたというストライプ柄のスーツで歌う三丘。「コロナ太りもありますので、ストライプ柄がいいと念押ししました(笑)」とファンを笑わせると、前半の締めくくりは新曲「よこはま埠頭」。恩師・水森英夫氏が歌手時代に歌うはずだったが、発売されなかった曲だ。水森氏は以降、作曲家へ転向しているため幻の曲となっていた。そんな作品を三丘のために歌詞を作り直し、三丘の地元・横浜を舞台にした作品として昨年11月に発売された。
第二部はいよいよ「居酒屋 翔太」の開店。店長に扮した三丘は、岡晴夫の「逢いたかったぜ」を歌いながらステージに現れ、「逢いたかったぜ~(笑)」。
“お客様”にお品書きが配られる。そこには「お飲みもの」「歌姫COVER」「ナツメロ 古賀政男の名曲選」「節もの」などのジャンルごとに昭和の名曲がずら~っとメニューとして並ぶ。三丘はこの日のために歌詞を必死に、そして完璧に覚えてきたという。「まるで試験勉強でした(笑)」。
目を輝かせながら名曲メニューを眺めるお客様は、三丘の「ご注文お決まりですか?」の呼びかけで、聴きたい曲をご注文。色分けされた“蝶ネクタイ・カード”による投票によって、三丘は、お飲みものから石原裕次郎の「ブランデーグラス」、ナツメロからは近江俊郎の「湯の町エレジー」、「節もの」からは中村美律子の「河内おとこ節」、新御三家からは西城秀樹の「情熱の嵐」などを披露していく。
新御三家のジャンルでは、野口五郎の「私鉄沿線」が三丘のイチオシで、もっとも苦手だなと思っていたのが「情熱の嵐」だった。だが、お客様がいちばん聴きたかったのは、三丘のイメージからもっとも遠い(!?)「情熱の嵐」。三丘が“君が望むなら~♪!”と歌うと、“翔太!”の掛け声もかかり、会場はより一層熱気に包まれた。
店長とお客様が一体となって楽しむライブの後半には話題の「三丘翔太とイソフラボンズ」も初お披露目された。ラジオ番組内で誕生したムード歌謡コーラスグループで、三丘がメインボーカルからコーラスまでを一人でこなしている。
本来は多重録音で完成させる一人歌謡コーラスグループだが、ライブでは映像と融合。「魅惑のムード歌謡コーラス~イソフラボンを添えて~」のジャンルから、お客様の注文に応じて、敏いとうとハッピー&ブルーの「星降る街角」を披露した。
作曲・編曲・音源制作などをこなす三丘は、お品書きライブで披露した作品の多くを自作のカラオケで歌っていた。コロナ禍による自粛から、ファンに生歌を届ける機会がほとんどなくなってしまったことで、YouTubeでの配信にも力を入れ、自作のカラオケ(バンド名:三丘翔太とオルニチンズ)でカバー曲を披露するなどしてきた。
とくに配信で公開した女性歌は評判がよく、新しいファンの獲得にも貢献。お品書きの中では「歌姫COVER」として今回は3曲を準備し、投票の結果、森昌子の「越冬つばめ」を生歌で聴かせた。
「ネット配信で僕を知って、初めてこのライブに来てくれたお客様もたくさんいらっしゃるのがうれしいですね」
お品書きライブの最後の一曲は、「厳選!! トリの一品」から。三丘が大好きなNHK紅白歌合戦で大トリとして歌われた歴代曲の中から「襟裳岬」「津軽海峡・冬景色」「風雪ながれ旅」「契り」の4曲がメニューに載っていた。お客様が選んだのは北島三郎の「風雪ながれ旅」。ミラーボールの光が、雪が舞うシーンを演出し、店長・翔太が自慢の声を響かせた。
「3年ぶりのお品書きライブ、ありがとうございました。(コロナ禍では)ネット配信などでも歌わせていただいていますが、僕の歌声を直接聴いていただける空間自体がとっても素晴らしいものだと改めて感じました」
拍手に包まれながらファンの前で、三丘がトレードマークの蝶ネクタイを“枝豆”蝶ネクタイに付け替えると、三丘は店長から“歌手・三丘翔太”に戻った。
三丘はラストに大御所・水谷千重子のトータルプロデュースで話題になった楽曲「そんなもん人生」を歌い、遊び心満載のライブを終えると、「ここからもう一度、蝶ネクタイを締め直して、ただただいい歌を届けていきたい」と力強く決意した。
そしてアンコールに、もう一度、「よこはま埠頭」を披露すると、ファンとの再会を誓って笑顔で手を振っていた。
2021年11月17日発売
水谷千重子がトータルプロデュース
三丘翔太「よこはま埠頭/そんなもん人生」
「よこはま埠頭」ジャケット
「そんなもん人生」ジャケット
三丘翔太の「よこはま埠頭/そんなもん人生」は、芸歴50年を誇る大御所・水谷千重子がトータルプロデュースした両A面シングルだ。「よこはま埠頭」は、1976年に「たった二年と二ヶ月で」で、“水森英夫”として歌手デビューを果たした三丘の師匠・水森英夫が、体調を崩して発売を断念したセカンドシングル。45年の時を経て、愛弟子が幻の作品に魂を吹き込んだ。「そんなもん人生」は、三丘の才能に惚れ込んだ水谷千重子が自ら作詞を担当した話題作。水谷の豊富な経験と情熱が、コロナ禍で閉塞感にあふれる演歌界を軽快に突き破る曲に仕上がっている。