今も愛され続ける村下孝蔵の「初恋」が発売39年目にしてミュージックビデオに。現代的な解釈で映像化
1990年に脳内出血のため46歳の若さで急死した村下孝蔵最大のヒット曲といえば、初恋」だ。1983年にリリースされ、オリコンのシングルランキングで最高3位を記録した。今なお多くの人に愛され、多くの歌手がカバーする名曲だが、このほどミュージックビデオを制作され公開された。
「初恋」のビジュアルといえば、村上保氏の切り絵を思い浮かべる人も多いだろうが、ミュージックビデオはまだ時代的に浸透しておらず、この楽曲のクリップも当時制作されることはなかった。
しかし発売から40年近く経った今も人々の共感を呼び、愛され続け、もはやスタンダードとも呼べるこの楽曲に、現代のクリエイターが現在の感性でミュージックビデオを制作し、さらに後世へと伝えていこうというプロジェクトが発足。オリジナルの発売日である2月25日に完成されたビデオクリップが公開された。
ビデオクリップの監督を務めたのは、映像ディレクターとして活躍する井上真行氏。令和における10代の観点を主眼としてショートフィルムを制作した。
「初恋」を現代的な解釈で映像化するというコンセプトをいただきました。前提としては、この愛され続ける名曲の世界観をとにかく壊したくなかったです。そして、僕の中でスマホのカメラがあれば、カメラを通した時だけ好きな男性に近付ける臆病な女性の心理に辿り着きました。初恋はうまくいかないからこそ人生は美しい。今回、僕はその美学を改めてこの名曲から学ぶ機会になりました」
ビデオクリップには、若手俳優の岸せいらと髙橋大翔(2人は村下のレーベルと同じソニー・ミュージックグループのソニー・ミュージックアーティスツ所属)が出演している。
村下孝蔵「初恋」とは?
村下孝蔵5枚目のシングルとして1983年2月25日にリリース。オリコンシングルウィークリーランキング最高3位、年間でも14位を記録し、50万枚を超える売上で村下最大のヒット曲となる。瑞々しい歌詞と切ないメロディーは時代を超えて愛され続け、令和の今でもカラオケの定番曲として歌い継がれているほか、これまでに60を超えるアーティストにカバーされる不朽の名曲となっている。2013年には村下の故郷である熊本県水俣市の商店街に本曲の歌碑が設置され、商店街の通りも「初恋通り」に改名された。
Profile
村下孝蔵(むらした・こうぞう)
1953年2月28日、熊本県生まれ。生家が映画館を経営していたため、映画の影響でギターに魅せられる。九州を離れ広島にてピアノの調律師をするかたわら、自主制作アルバムのレコーディングをする。1979年、CBSソニーオーディションにて最優秀アーティストに選ばれる。1980年5月21日、「月あかり」でデビュー。1982年「ゆうこ」、1983年「初恋」「踊り子」が大ヒット。以降、七夕コンサートと筆頭に地道なコンサートツアーを続け、年一枚のペースでアルバムを発表。1989年「ソネット、」1991年「アキナ」などのヒットを経て、他アーティスト(裕木奈江、柳葉敏郎など)への楽曲提供(「りんごでもいっしょに」「あなた踊りませんか」)も行うなど、作家としての力も発揮している。1998年10月31日には、2年4カ月ぶりのニューシングル「同窓会」を発表。また、世界的バイオリニスト・天満敦子とのジョイントコンサートで、ポップスとクラッシックの融合を試みるなど、新しいチャレンジを常に心がけた。1999年、20周年を迎え意欲的な活動のさなか、6月24日に都内の病院で脳内出血のため、急逝。享年46。