山口かおるがディナーショーで新曲「ガラスの薔薇」を披露。ステージの終盤には涙も
山口かおるが12月13日、東京・台東区の浅草ビューホテルで「山口かおる 新曲発表&ディナーショー」を開催し、笑顔と感謝の気持ちを届けたが、ファンとの再会にステージの最後には大粒の涙を流した。コロナ禍にあって正しく感染防止対策を行い、無事、ディナーショーを開催することができた安堵も、山口の涙腺を緩めたのだろう。
▲コロナ禍により歌う場所を奪われた歌手の気持ちは察して余りある。ディナーショーの終盤、山口はうれしさと安堵から大粒の涙を流す。西條八十が作詞した童謡「歌を忘れたカナリヤ」ではないが、歌手には象牙の船(ステージ)と月夜(スポットライト)が似合う。
山口は1993年、本名の青木香織を芸名として「速達」でデビュー。2004年に“山口かおる”に改名し、日本クラウンから「月の砂時計」で再出発した。以来、毎年、同ホテルでディナーショーを欠かさず開催してきた。しかし、コロナ禍の今年は、本当に開催できるかどうか、直前までわからなかった。
「“山口かおる”になってから毎年、この場所でディナーショーを行ってきましたが、直前での参加キャンセルもあり、今年は無理だろうなと諦めていました。こんな時代なのでお越しいただけないかもと思っていました」
だが、ソーシャルディスタンスを保つため昨年の約半分となる200名程度の席数に絞られたものの、会場には思い思いに着飾ったファンが集まってくれた。
▲会場を明かすくするピンクのロングドレスを着て登場した山口は「哀愁のフラメンコ」「献身」を歌うと、「この時期になると歌いたくなる曲があります」と、「ホーリー・ナイト」を聴かせた。
ピンクのドレス姿でステージに現れた山口は「哀愁のフラメンコ」、「献身」、「ホーリー・ナイト」をハスキーボイスで届けると、トークを挟んで、「ガラスの薔薇」と「旅立ちの街」の2曲を披露する。
「ガラスの薔薇」は山口にとって1年半ぶりとなる新曲。12月2日に発売されたばかりで、「旅立ちの街」はそのカップリング曲だ。作曲は桂銀淑の「すずめの涙」などのヒット曲で知られる浜圭介氏。会場にはその浜氏も駆けつけていた。
山口は2010年に浜氏とのデュエット曲としてリリースした「二人の世界」(表題曲「ジェラシー」のカップリング)をここで選曲する。甘い大人の世界を描いた作品で、ルンバのリズムがムードを盛り上げる。山口は「ステージで歌うのもディナーショーで歌うのも、ほぼ初めてだと思います。浜先生がステージにいらっしゃる雰囲気で歌わせていただきます」と、心を込めて歌の世界を表現した。
▲毎年12月に行っている浅草ビューホテルでのディナーショー。年々参加者が増え、昨年は大宴会場の最大収容人数となる約400名のファンで会場が埋まった。だが、今年はソーシャルディスタンスを確保するため半分の200名ほどに制限してショーが行われた。
▲九州から帰ってきたばかりだという衆議院議員の平沢勝栄氏(復興大臣・福島原発事故再生総括担当)も応援に駆けつけてきた。「ここにいる方は、山口かおるさんの歌を、宴を聴かないと年を越せないという方ばかりだと思います。これからも山口かおるさんを引き続きご支援くださるようお願い申し上げま」。
▲“青木香織”時代から山口のファンだという元・将棋棋士であり、“株主優待生活”で知られる投資家の桐谷広人氏(写真左)も会場に。この日も、自転車で会場まで来たそうだ。昨年は、芸能リポーターの石川敏男氏(写真中央)が「見届け人になります」と、山口との婚姻届を桐谷氏にプレゼントしたが、その件を問われると「まだ提出しておりませんので、皆様、ご安心ください」と桐谷氏。
山口も他の歌手同様、今年は新曲のキャンペーンはもとより、予定していたライブやコンサートのほとんどが中止や延期となり、ステージに立つ機会がなくなってしまった。そこで山口はこれまで以上にSNSでの発信に力を入れたと話す。
TikTok(短尺動画の投稿サイト)に投稿した「牡蠣のうた」を楽しい振り付けとともに歌うと、カバー曲から「石狩挽歌」や、「圭子の夢は夜ひらく」など山口のハスキーな声が生きる曲を歌い継いでいく。
ちなみに「牡蠣のうた」は歌手生活25周年となる2017年にリリースしたシングル「泣かせて大阪」にボーナストラックとして収録された曲。山口が香音鈴(かおりん)の名前で作詞・作曲・編曲を行い、本人出演のテレビCMに起用された曲だ。
▼テレビCM「伊豆高原旅の駅ぐらんぱるぽーと『かき大将』」
@0705kaorin##スタンプメイク ##牡蠣のうた ##山口かおる##牡蠣♬ オリジナル楽曲 – 公式山口かおる
▲1年半ぶりとなる新曲「ガラスの薔薇」とそのカップリング曲「旅立ちの街」を黒とグレーのドレス姿で披露すると、同曲の作曲家・浜圭介氏とのデュエット曲「二人の世界」を歌った。
▲山口の魅力はそのハスキーな声。彼女の歌唱が生きる曲を選曲して届ける山口は、初めてステージで歌いましたと、「石狩挽歌」でファンを酔わせた。
「マスク着用をお願いします。また握手や写真撮影もできません。それでもよろしいでしょうか」
司会者が客席に問いかけると、ファンは大きな拍手で応える。山口がマウスシールドをつけて登場し、客席へ降りる。グータッチのみのラウンドが始まった。
山口は桂銀淑のヒット曲「夢おんな」「酔いどれて」「大阪暮色」「すずめの涙」をカバーしながら客席をラウンドすると、今度は水色のドレスに着替えてステージへ戻ってきた。そしてもう一度、新曲「ガラスの薔薇」をフルコーラスで聴かせる。
▲ゲストとして会場を盛り上げたモノマネの美川憲二のステージが終わると、衣裳を変えて現れた山口はグータッチのみの客席ラウンドを回る。ファンとの距離を縮めた山口は……。
制限の中でファンと触れ合い、温かい笑顔で迎えられた山口。「来年も同じ場所でお会いしたいと思います」と話し始めると、涙を抑えることができなくなる。
「ありがとう!」
会場からは感謝の声が山口に届く。ディナーショーを中止にしてしまうのは簡単だった。だが、準備に準備を重ねて開催にこぎつけた。だから、山口は泣き、ファンは「頑張れ!」ではなく、「ありがとう!」と応えた。
▲山口は目をうるうるとさせたまま、ファンへの感謝、歌える喜びを胸に、新曲「ガラスの薔薇」をこの日、もう一度届ける。コロナが収束しておらず、キャンペーンもできない時期に新曲をリリースするかどうか悩んだというが、応援してくれるファンに新しい曲を届けたいと制作に挑んだという。
山口は「最後の曲となりました」と、オープニング曲として歌ったシングル「哀愁のフラメンコ」のカップリング「愛は瞳の中に」を歌う。ラブソングだが、“畏れずに明日へと また歩き出す 振り向けば見つかる 愛は瞳の中に”という歌詞が、山口によるファンへのメッセージに聴こえた。山口の大きな瞳には、ファン一人ひとりが映っていた。
そして、最後は笑顔で――。
司会者の進行により、山口は定番のエンディング曲として、もう一曲歌唱する。“山口かおる”として最初に発売した「月の砂時計」のカップリング「哀しみ万華鏡」だ。会場の空気を心地よく温めた山口は、そのままステージを降りると、感染防止対策を施しつつ帰路につくファンを見送り短い会話を楽しんでいた。