デビュー10周年の杜このみがクリスマスコンサートで挑戦と決意と平和と。「2024年は全力で走り抜けます!」
杜このみが12月23日、東京・中央区の日本橋三井ホールでクリスマスコンサートを開催。今年、デビュー10周年を迎えた杜は10周年記念曲「葦風峠(あしかぜとうげ)」をはじめ、幅広い楽曲を披露した。オープニング2曲目にはベット・ミドラーの「The Rose」を原詞で歌うなど洋楽にも挑戦し、ラストには平和への願いを込めて「瑠璃色の地球」を届けると、「2024年は全力で走り抜けます」とファンに誓った。
細川たかしに見い出され2013年5月に「三味線わたり鳥」でデビューした杜このみ。プライベートでは2020年8月に大相撲の高安との結婚・妊娠を発表。翌年2月に第一子女児、昨年8月には第二子男児を出産し、今年6月には念願の挙式を挙げていた。
「星に願いを」の演奏が流れると、「杜このみ クリスマスコンサート2023」がいよいよ始まるという雰囲気となった。赤いウエディングドレス姿の杜がステージに中央に。まずは「きよしこの夜」から披露し、「メリークリスマス!」とファンに呼びかけた。
全国各地から多くのファンが駆けつけてくれた。同会場は初めてリサイタルを開催した思い出の場所でもあり、杜がどんな作品を届けてくれるのかファンはワクワクしていた。
2曲目はベット・ミドラーの「The Rose(ローズ)」が披露された。「この作品を歌うことが決まったときは(歌うのは)無理なんじゃないかと思いましたが、洋楽に挑戦するのもクリスマスならではでした」。育休を経て復帰した杜からファンへの“愛”の歌となった。
杜はこのコンサートでは演歌だけではなく、色褪せない昭和の名曲や、普段あまり歌わないような歌謡曲など幅広い楽曲を披露したいと、高田みづえの「硝子坂」、平浩二の「バス・ストップ」、小林明子の「恋に落ちて」などを歌っていく。
「高田みずえさんは歌謡界の先輩ですが、お相撲さんのお嫁さんという意味でも先輩です。『バス・ストップ』は平浩二さんから、『このみちゃんの歌声に合うと思うよ』と言ってくださったので歌わせていただきました。普段、あまり歌わない作品でしたので、緊張する歌ばかり歌わせていただきましたが、こうした名曲を私自身が残していけるように、という思いをもって練習してきました」
コンサートの中盤は着物姿を披露し、オリジナル曲を届けた。まずは、育休を経て歌手活動に復帰した杜のデビュー10周年記念曲「葦風峠」からオリジナルコーナーをスタートした。
愛する人を待ち続ける切ない女性の心情を歌った同曲では、印象的な振付も入る。会場には振付を担当したJPN dance協会 副代表の香月寿々也氏の姿もあり、杜は同氏をファンに紹介していた。香月氏は多数の歌手のバックダンサーを務め、日本舞踊 香月流師範としても後進の育成に当っている。
「育休を経て、また演歌界に戻ってきましたが、この曲で勝負したいなと思います。『作品で勝負』という言い方は、私は好きではありませんが、応援してくださる皆さんと共に、紅白の舞台に、私はなんとしてでも立ちたい!」
そう力を込めると、「葦風峠」は思っていた以上にカラオケで歌ったくれる人が多く、「いい曲ねえ」と褒めてくれると、うれしそうに報告していた。
デビュー曲「三味線わたり鳥」では“このみコール”を楽しみながら、「残んの月」ではサビをファンと合唱しながら、そして「王手!」では歌唱中に“王手ポーズ”を決めた。
2019年に発売した「王手!」は、作曲家・市川昭介氏の遺作。楽曲に感銘を受けた作詞家・多手石松観氏が、市川氏が生前好きだった将棋をテーマにした歌詞を書き上げたものだが、姉弟弟子の彩青が自身の新曲として今年カバーした。
「後輩にカバーしてもらうのはすごくうれしかった。彩青くんは男らしい、力強い『王手!』を歌っています。杜このみの『王手!』は男らしいかどうかわかりませんが、多手石先生が『小さいときから民謡を歌ってきた私にぴったりな作品』だと言ってくださり背中を押してくださった作品です。力強く表現させていただきました」
杜このみと言えば、師匠・細川たかしの存在は外せない。4歳から民謡をはじめ、小学生6年生のときには「江差追分全国大会少年の部」で、当時史上最年少で優勝を果たした。以来、数々の大会で優勝を重ね、NHKの番組に出場したことをきっかけに細川たかしに師事するようになった。
「師匠の細川たかしさんとの出会いがあり、演歌の世界へ挑戦することになったわけですが、そのときに師匠が言ってくださった言葉がありました。『このみ、お前が最初で最後の愛弟子だ』と。その言葉に師匠の背中を追いかけて頑張っていこうかなと思っていたんですが・・・・。仲間が増えまして(笑)」
杜は、のちに細川一門に加わった彩青と田中あいみとのエピソードで会場を沸かしていたが、「一番のお姉さんとして引っ張っていけるように、追いかけてもらえるように頑張りたい」と話していた。
コンサートの終盤は、まずは細川たかしのヒット曲から披露された。「矢切の渡し」をアコースティックにしっとり届けると、杜は客席に降り、自身の原点である民謡の「ソーラン節」ではファンとの掛け声を楽しみながら、さらには細川の代表曲「浪花節だよ人生は」「心のこり」「北酒場」をメドレーで届けた。コロナ禍が落ち着き、制約なくファンと身近に触れ合う機会を、杜は心から感謝していた。
再びステージに戻った杜は「久しぶりのコンサートで緊張しました。『このみちゃ~ん』って言ってくださるのかな? 『かわいい』って言ってもらえるのか(笑)って、余計なことまで考えていました」と話し始めた。
「でも、こんな10周年を迎えさせていただけるとは思っていませんでした。これからも師匠の細川たかしさんのような、みんなに愛される歌手になれるように頑張りたい。最近の師匠は“髪型”が話題になっていますが(笑)、師匠の歌声は本当に素晴らしいですし、あそこまで歌に精進する姿が似合う人はいないと思います。いまでももっともっと声量が出るように、もっともっとキーが出るように頑張っている姿をみると、私も頑張らないと、と思います。演歌歌手生活はまだ10周年です。演歌・歌謡曲やポップス、洋楽など幅広い作品に挑戦してけるよう頑張っていきたいなと思っています」
師匠への愛を語りながら自身を鼓舞した杜は、コンサートの最後に冬を身近に感じる2曲を届けた。新沼謙治の「津軽恋女」と、石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」だった。
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ピアノとギターによる「white Christmas」が演奏されると、アンコールに杜このみが登場した。薬師丸ひろ子の歌唱でヒットした「woman~Wの悲劇~」を美しい歌声で聴かせる。
10周年を記念するコンサート。本来ならこれまでのオリジナル曲を披露する構成も考えられたが、この日は大好きな作品に挑戦し続けた。
「さて・・・」と、杜はもう一度、大きな目標を口にした。
「今年は10周年記念ということで、いろんなことに葛藤した1年でした。苦しかったこととか、悔しい思いもしました。『もっともっと自分自身頑張れたんじゃないかなあ』という思いも正直ありました。でも、人生は一度きりです。周りの皆様に助けてもらいながら、こうして応援してくださるファンの皆様と共に大きな目標を叶えられるよう、もっともっと精進していきたいと思います。2024年の目標は一年間全力で走り抜いて、年末の大きな番組で輝く姿を見せることです。まだ言うか、ですが(笑)、これからも杜このみに着いてきください!」
NHK紅白歌合戦への出場を目標に演歌歌手としての道を歩んできたが、結婚・出産という人生の大きなイベントを経て、再び、“演歌歌手・杜このみ”として歩き始めた彼女。初心忘るべからず。演歌枠が少なくなっている紅白だが、だからこそ出場したい、という思いを強くしていた。
「今年1年間を振り返ってみると、哀しい思いをしているニュースが多くて」と杜このみ。アンコールの最後には、「あえて演歌じゃない一曲を選びました。2024年は明るい未来に向かって、幸せを噛みしめられたらいいな」と、松田聖子の「瑠璃色の地球」を選曲した。「夜明けの来ない夜は無いさ」という歌詞で始まる同曲。勇気と希望を届けるスケールの大きな作品だ。
「私自身が平和に過ごさせていただいている間にも、涙を流している人がいるんだなあ」と思うと、平和を願わざるを得なかった。「クリスマスぐらいは平和を願ってハッピーに過ごしてもらいたいなあ」。そんなことも口にしていた。
杜このみのコンサート前には、オカリナ奏者 イースト木村による演奏が行われた。
木村は15歳のときにオカリナに出会って、その魅力にハマり学び始める。90年代に入ると、本格的にオカリナの演奏活動を開始し、1995年にオカリナユニット「EAST」を結成。1997年よりオリジナル曲にてコンサート活動を行っている。
土笛オカリナの繊細でいて、雄大な音色で「故郷の雪」などを披露した。「故郷の雪」はファーストアルバム『誕生』(1998年)に収録された一曲。秋田県出身の木村が幼い時に遊んだ故郷の雪をイメージしてつくった作品だ。
■イースト木村 公式HP
https://rainbow-park.com/