山内惠介がみせる“まごころ”。~新曲「誰に愛されても」で意識した自分自身~
山内惠介の通算22作目となるシングル「誰に愛されても」が幅広い層の音楽ファンに愛されている。3月にリリースされて以降、“誰愛”(だれあい)と略され、こんな時代だからこそ、曲のテーマである“まごころ”を再考するきっかけにもなっている。全国ツアー真っ最中の山内に、“誰愛”について聞いた。
文=藤井利香 写真=安岡嘉
“誰愛”で描かれるまごころとは?
――3月2日にリリースされた22枚目のシングル「誰に愛されても」。キャッチーなタイトルといい話題性も高く、年末に向けてますますヒットしそうですね。
山内 逆境の中にいても一途に一人の男性を思う、純愛ソング。ファンの方の間では“誰愛”と呼ばれ、すでに多くの反響をいただいています。シチュエーションがあまり深く描かれていない分さまざまな捉え方があるようで、僕は純粋に、運命によって引き裂かれてしまったからこそ気づいた最愛の人への思い、まこごろ。そう捉えて歌っています。ある人へのかなわぬ思いや、まるでロミオとジュリエットのようだと受け取る方もいました。どんなに周りから反対されても命をかけて「あなたが好き」と言える。そんな深みのある捉え方もできて、そう思うと実に幅の広い歌なんですよね。だから歌っていても最終的には激しくならざるを得ず、そうでなければ“運命”って歌えないんだなとも感じています。
――今回、ヒットメーカーと言われる売野雅勇氏が作詞を手がけています。“運命にはぐれたって” “世間にはぶられても”といったインパクトある歌詞も印象的です。
山内 若者言葉をここまで鋭く扱える先生は、本当にすごい。僕の若い頃にはなかった言葉ですもんね(笑)。確かにはぶられるって怖いことですけど、恐れていては本当の自分を出すことはできない。覚悟があれば何でもできる。自分自身が強くなり、思いを貫き通すことがまごころでもあるんだと、そう教えられた気がします。
売野先生が「山内惠介の声にはまごころがあるように思う」とコメントしてくださり、これにはとても感激しました。歌を届けるにはやはりまごころが一番大事、それなくして愛や恋を伝えることはできません。今回改めてまごころってなんぞやと考えるようになり、人から与えられているまごころに気づけない自分ではいけないし、自分自身に注入していくことも大事だなと思いました。
一秒一秒が大事。まごころを届けるために
――自分に対してのまごころって、あまり考えることがないかもしれませんが、重要な視点だと気づかされました。
山内 自分を大切することでもあり、例えば丁寧に体を洗って細胞を喜ばせるとか。だからこの頃、一つひとつの行動が丁寧になりました。掃除も丁寧に、お料理も丁寧にゆっくりと。そうすると味も出来栄えも変わるんです。歩くときもその時々をかみしめながら歩き、どうしても時間に追われてしまいますができるだけ焦らない。そのようにしていると、一秒一秒の感覚も違ってきます。
実は、「さらせ冬の嵐」が日本レコード大賞の作詩賞を受賞した際に、作詞の松井五郎先生がこの曲の3分59秒を砂時計にして記念にくださったんです。砂時計なんてサウナに置いてあるくらいしか手にしないけど、すごく粋なプレゼントだと思いませんか。毎日1回それをひっくり返すことで時間の感覚を養うようにしています。テレビの生放送などではほんの数分が勝負なので、うかうかしていられません。時間を意識するというのはすごく大切なことだと思っています。
――「誰に愛されても」の中でほかに気に入っている歌詞はありますか?
山内 “涙が燃えてる”が一番好きです。売野先生は、これまで僕にくださった作品の中にもこの言葉を使っておられて、例えば「スポットライト」のカップリングの「六本木界隈・夢花火」には“タワーの灯りで涙が燃える”という歌詞が入っています。赤い東京タワーをモチーフに涙が燃えるなんて、まさに売野ワールドだなと。僕がすごく気に入っていたことをお伝えしてはいなかったんですが、今回偶然にも入っていたのでうれしかったですね。
そして、僕のリード曲はいつも師匠の水森(英夫)先生が曲を作ってくださいますが、だからこそ作詞家の方の違いというのがよく見えるんです。作詞・作曲の両方が変わると気づきにくいところを、水森先生が売野先生の詩にはこういうメロディーをと、たくさんある引き出しから選んで表現してくださっています。詩によってメロディーがこんなにも変わるんだなということも、今回実感していることの一つです。
――その水森先生の曲調についてはいかがですか?
山内 前作の「古傷」は王道演歌でしたが、年を重ねて一歩踏み込んだ大人の世界がハマるようになってきたねと、先生もそう思って作ってくださったのではないかと思います。後半の“運命に 引き裂かれ”の“運命”の“う”のところで一気に世界が変わり、このメロディーの変化はさすが先生! ですよね。そこから強く、激しく踏ん張って、それこそ全身で歌う感じです。といってこの曲は女唄なので、女性が歌ったらどうなるんだろうと、そこはすごく興味がありますね。
――“星屑の 魂だけれど”という歌詞にあやかり、山内さんの誕生日の星座であるふたご座の中に、山内さんの名前がついた星が誕生しましたね。「Dareniaisaretemo☆YamauchiK」(誰に愛されても☆山内K)と命名されました。
山内 来ました、(オーストラリアのスプリングブロック天文台からの)認定書が。ふたご座の中にある数えきれない星の1つですけどね。たぶんあの辺だろうな~と想像しながら空を見つめています。星に向かって2022年、22枚目のシングル、突っ走るぞ! です(笑)。
山内が歌う赤・青・橙の3色の物語
――カップリング曲についても聞かせてください。「誰に愛されても」赤盤に収録されているカップリング「はるかの陽は昇る」は、こちらも詩が心に響き、明るくテンポのいい曲に仕上がっています。
山内 冒頭の“はじめから 道などなく”など、改めて教えられる言葉が並んで勉強になりますね。作詞の松井先生はコロナを意識して書かれたと思いますが、生きていることにまず感謝しなくちゃいけないんだなと。そして“未だ道半ば”という言葉からは、僕に対してもこれからなんだぞ、きれいな陽はこれから昇るよと励ましてくれています。わかりやすくいえば、人生の応援歌だなと思っています。
そして、この曲といい“誰愛”といい、馬飼野(俊一)先生のアレンジが素晴らしい。アレンジ一つで曲全体のイメージが変わると言いますが、そのとおりです。“誰愛”なんて、イントロからしてダダダ~ンと始まってすごいと思いませんか? 何が起きたかと思うくらい、インパクトがある(笑)。2曲ともに、こんな世の中だけどがんばっていこう、踏ん張るぞと、前向きな気持ちでアレンジしてくださったんでしょうね。聴いてくださるお客様へのエールにもなったらと思っています。
――青盤は「氷炎」です。小説のタイトルにもなっている造語ですが、相反する感情描写はまさに「氷」と「炎」ですね。
山内 相手というよりも、自分の心の内と内で対話している。矛盾する感情を“裏腹”と表現していて、作詞の田久保(真見)先生は、タイトルになるような言葉を歌詞の中の要所でいくつも使ってくださっています。タイトルが「裏腹」でもいいくらいですが、そこを表裏一体である「氷炎」と表現し、女性の激しい恋心を歌っています。言葉をきれいに紡いでいきたいなと思うメロディラインで、理想としては全部しゃべりたいような歌。歌ってしまうと言葉が伝わりにくくなるので、淡々と言葉を置いていくことを意識しています、セリフのように。
――橙盤には「女の裏酒場」。こちらは王道のマイナー演歌です。
山内 演歌の真骨頂ともいえる女唄です。お酒を飲まなくても、ギター1本でこの歌を聴いたり歌ったりするだけで酔える、そんな感覚があります。路地裏の酒場で、寂しさを募らせながらも強く生きる。ちょっとナルシストな感じですが、自分に酔いながら皆さんに歌ってほしいですね。
お客様が主役。“誰愛”とともに全国へ
――今回の「誰に愛されても」をはじめとする4曲は、すべて現在ツアー中の「山内惠介コンサートツアー2022」で聴けるわけですね。
山内 そうです。「はるかの陽は昇る」は、ファンの方の支持も高いと思うので大切な場面で披露します。「~歌のまごころ、あなたに届け!~」と題した今回のコンサートでは、これまで僕がいただいた売野作品の5曲のうち4曲(1曲はクリスマスソング)と、先生のカバー曲も歌います。
ほかに、昨年末のNHK紅白歌合戦で歌った「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)や、柳ジョージさんが晩年までコンサートで歌い愛された曲も披露します。去年、僕は柳さんにハマりまして、その曲は縦ノリのリズムにアレンジされ、もはや原曲のリズムではないんですが、それがものすごくカッコいいんです。ファンの方もこういった曲はあまり耳にしていないのではと思い、選曲しました。そして、中島みゆきさんの「時代」を重要なポイントで歌唱させていただいています。主役はお客様なので、お一人お一人が主役になれるようなコンサートを目指したいと考えました。全国を回っていきます。皆さん、ぜひいらしてください。
関連記事
特別企画】山内惠介への10の質問~もしも・・・○○だったら?~
【取材こぼれ話】もお見逃しなく!
(このページ下にあります)
山内惠介「誰に愛されても」Music Video(Short Ver.)
2022年3月2日発売
激しくも艶やかに!
山内惠介「誰に愛されても」
【赤盤】
【青盤】
【橙盤】
【唄盤】(CD+DVD)
※3音楽配信サービス(ダウンロード&ストリーミング)でも好評配信中。
INFORMATION
練成会グループ Presents
山内惠介コンサート 2022 北海道ツアー
■5月9日(月) 開演14:30
北見市民会館
■5月11日(水) 開演14:30
帯広市民文化ホール
■5月12日(木) 開演14:30
コーチャンフォー釧路文化ホール
■5月14日(土) 開演14:30
中標津町総合文化会館
■5月16日(月) 開演14:30
旭川市民文化会館
■5月17日(火) 開演14:30
旭川市民文化会館
■5月19日(木) 開演14:30
札幌・カナモトホール
■5月20日(金) 開演14:30
札幌・カナモトホール
■5月21日(土) 開演14:30
札幌・カナモトホール
■5月23日(月) 開演14:30
函館市民会館
■5月24日(火) 開演14:30
函館市民会館
コンサートツアーの詳細は山内惠介 公式サイトをご覧ください。
▶山内惠介 公式サイト
profile
山内惠介(やまうち・けいすけ)
1983年5月31年、福岡県生まれ。母親の影響で、美空ひばりの歌を聴いて育つ。1999年、作曲家・水森英夫氏にスカウトされ、翌年上京。2001年4月18日、17歳の時に“僕はエンカな高校生”をキャッチフレーズに「霧情」でデビュー。2015年、15周年記念シングル「スポットライト」で『NHK紅白歌合戦』に初出場。2019年には、翌年に予定しているデビュー20周年へ向けて、大きなチャレンジを敢行。47都道府県を回るコンサートツアーを成功させた。2020年3月、20周年記念シングル「残照」(4タイプ)を発表。9月に新装盤「残照」2タイプ(駅盤と花盤)をリリース。コロナ禍により記念ツアーや劇場公演は中止となったが、10月から「山内惠介デビュー20周年記念リサイタル」を全国5大都市で行い、11月には東京公演を日本武道館で行った。また同年11月には、2001年デビューからこれまでにリリースされたすべての楽曲とミュージックビデオを網羅したコンプリートボックス『20th Anniversary Complete Box』を発売。2021年は1月に「古傷」を発表。年末のNHK紅白歌合戦には7年連続で出場し、「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)をカバー。2022年は3月に新曲「誰に愛されても」を発売。同年6月1日には過去の映像作品をライブCD化した『山内惠介コンサート 2010-2021 LIVE CD BOX』を発売予定。
山内惠介公式HP
山内惠介 公式ブログ
山内惠介 YouTubeチャンネル
ビクターエンタテインメント 山内惠介ページ
「コンサートで料理の腕前を披露しようかな」
自身のブログで料理を披露されている山内惠介さん。取材では、NHKの情報番組「あさイチ」に出演された際の話になり、「料理の腕前がクローズアップされましたね」と問いかけると、「コンサートで料理の腕前を披露しようかな」と笑っていられました。
「料理コーナーへの初めての出演が生放送というすごいことになりましたが、反響は大きかったですね。マイクでなく包丁を片手に、僕を知らない層の方にも知っていただく機会になったのはよかったなと思っています。といって、玉ねぎを切っただけなんですが、それを見ただけで『いつも料理しているな』って見る人が見たらわかるらしいです。そんな声もいただきました。
お料理はね、唯一仕事のことを忘れる時間なんです。集中していないとやけどをしたり手を切ったりするでしょう。作ると手が玉ねぎ臭かったりするんですが(笑)、何だかそれがまたホッとするひと時になって。日々の献立は、食べたいものを作ります。朝は毎日、具だくさんのお味噌汁。ちゃんと野菜の下処理までして、少し多めに作って2~3日かけていただいています。お味噌汁を飲むと、あ~日本人でよかったってつくづく思う。コンサートでも、来てくださったお客様の前で料理の腕前をちょっとでも披露できたら楽しいかもしれませんね(笑)」(山内惠介)
○