
【インタビュー】おかゆ、新曲「ジモンジトウ」で描く新境地。「今の涙も無駄じゃない」と、迷えるあたなの背中を押す
シンガーソングライターのおかゆが新曲「ジモンジトウ」をリリースした。誰もが経験する「自問自答」をテーマに、迷いながらも前に進む人々の背中をそっと押す応援歌だ。所属事務所を独立し、新たな一歩を踏み出した彼女が、楽曲制作の背景や新境地への挑戦、ファンへの思いを語った。
文=藤井梨香
その場に安住せずに、自分の気持ちに素直に従い、前へと進む。それが苦難の道とわかっていても、迷うことはない。でも、何かを決める過程ではいつもきっといろいろ考え、誰よりも悩んできたことだろう。
そんなおかゆの心情がこのほどそのまま曲になった。ニューシングル「ジモンジトウ」だ。
私たちは毎日のように自問自答しながら暮らしている。「何のために生きるのか」「どうして産まれてきたのか」といった大きな問いから、他人にとっては些細と思える小さなことまで、その振れ幅はとても大きい。しかもなぜか次から次へと問いが湧き出て、永遠に途切れることがないのはどうしてだろう。
そんな憎らしいまでの非情の世の中で、「みんな本当にがんばって生きている」と、おかゆは常々感じているという。そんな懸命に生きる人々の背中をそっと押せるような曲がつくりたい。そう考え、誕生したのが「ジモンジトウ」だ。
単純に自問自答というと、受け取るイメージはどうしてもネガティブになりがちだ。そこをあえてポジティブに明るくとらえることで、何度でも繰り返し聞きたくなるような優しい楽曲が出来上がった。
これまでとはちょっと違う、おかゆの新しい世界観が堪能できる今回の楽曲。カップリングの異なる3パターンのCDが発売され、それぞれ味わいのあるジャケ写にも注目だ。
“今の涙も無駄じゃない”――誰もが抱える葛藤を肯定する歌
――今回の曲で一番言いたかったのは、歌詞にある“今の涙も無駄じゃない”という部分でしょうか。
おかゆ そうですね。私も迷ったり立ち止まったり、それを繰り返してここまで来ましたが、自分が悩んだりすることのすべては、明日に向かって生きるためにあるんじゃないかなって思うんです。確かにそのときは答えがなかなか出なくて、解決策も見つからない。人にもなかなか相談できず抱えがちで、本当にしんどいですよね。だから、今を悩んでいる人の背中を少しでも押してあげられるような曲をつくりたい。きっと未来につながるよと、心をふっと軽くするような曲があったらいいなと思い、「ジモンジトウ」をつくりました。
――“校庭の砂場 小枝で描いた未来図”など、誰もが思い描けるフレーズもあります。
おかゆ 全体的に感情を漠然と表現する言葉が続いていたんですが、2番以降は具体性のある歌詞を盛り込みました。誰もが共感しやすい、リアルさですね。最初にメロディーが出てきて、担当ディレクターさんからは「すごくいい曲ができている」と褒めていただき、すぐに詩をつけました。
“歌い上げる”からの脱却。等身大の自分で届けるための挑戦
――これまでのおかゆさんの楽曲とは少し違い、ライトに歌っている、そんなイメージがあります。
おかゆ すごく重く歌う癖がついていたんですが、この曲は歌い上げるわけでもない。どんな人にも届くように、等身大のナチュラルな声で歌うことを心掛けました。こぶしを効かせたり、声をひっくり返したりとかメリハリをあえてなくしました。メリハリをつけると、歌詞が入っていかないと思ったんです。無意識に出ていた癖と向き合い、いい勉強になったなと感じています。
――これまでおかゆさんをあまり知らない人の心にも、自然と歌の世界が刺さる気がします。
おかゆ キャンペーンで歌っていたとき、ふと足を止めて曲を聴いてくださった方から「背中を押されました」と笑顔で言われました。曲をつくって本当によかったなと思った瞬間でした。「ジモンジトウ」を一人でも多くの方に聞いてほしいなと思います。
――アレンジは、「時代」(中島みゆき)などの編曲者として知られる船山基紀さんです。
おかゆ 夢が叶いました(笑)。ずっとあこがれていたアレンジャーさんで、今回ぜひお願いしたいとリクエストを出していたんです。OKをいただいた後、具体的に「この曲のこんな感じと、あの曲のあんな感じが希望です」みたいなお願いを出したところ、イントロからあっと思わせてくれるアレンジをしてくださいました。
――ミュージックビデオはどんな作品ですか?
おかゆ こちらもぜひ見てほしいです。当初、美しい風景をバックに私が歌っている構成だったんですが、それでは見ている人に何も伝わらないんじゃないかと感じたんです。皆さん、何かしらの葛藤を日々抱えながら生きていて、自問自答しているであろう日常がある。それを「ジモンジトウ」は肯定するという、メッセージ性の強い曲になっています。皆さんがこの作品に共感してもらえるようでなければ意味がなく、だから役者さんたちが登場するというよりも、一般の人が一生懸命働いているありのままの姿を入れたいと思いました。実際に私が日ごろからお世話になっている方々に協力してもらい、このMVではそんな人たちが主役になっています。
多彩なカップリング、そして事務所独立。新たな“おかゆ”の始まり
――では、カップリングの3曲ですが「G線上のマリア」は、バッハの「G線上のアリア」が原曲ですね。争い多き今の時代を憂い、おかゆさんならではの思いが込められています。
おかゆ 以前、坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」に歌詞をつけて曲をつくったことがありましたが、今回も同じような挑戦をするなかで、自分が思う平和、ラブ&ピースというのを乗せられる曲として、いろいろなクラシック音楽を聴いた中からこの曲を選びました。そして、“アリア”を“マリア”に変えて、タイトルを「G線上のマリア」としました。
――こちらもカタカナ表記となった「シブヨル」は、ポップで渋谷らしいカッコよさが曲に溢れています。
おかゆ 1980年代のシティポップというイメージでとらえてもらえたら。今までつくってきた曲とはちょっと違い、産みの苦しみがあったんですが、リズミカルで疾走感のある曲ができました。実は、若い層の人に向けてつくったんですが、もう少し上の年齢層の方からもすごくウケがいいんです。懐かしさもあるのか反応がよくて、いろんな世代の人に聴いていただけそうで楽しみです。ちなみに「シブヨル」は、“渋谷の夜”と“渋谷に寄る”をかけているんですよ。
――「桑名の渡し」はいかがでしょう。三重県の桑名のご当地ソングになっています。おかゆさんは桑名署の一日警察署長も何度かされていますね。
おかゆ 観光大使にもなったので、満を持して曲を完成させました。曲づくりに関しては、地元の皆さんにいっぱいインタビューをしましたね。何を入れてどんな物語にしてほしいかリサーチし、1年かけてつくった曲。私の大好きな演歌歌謡の世界が広がって、気合十分で歌っています! カップリングの3曲はそれぞれイメージの異なる曲なので、そこも楽しんで聞いてほしいです。

新境地を拓く楽曲をイメージしたおかゆのビジュアル。発表されると衝撃ニュースとなった。
――3種それぞれ異なるジャケ写ですが、ハッとさせられる1枚もあります!
おかゆ 今まで衣裳から小道具まで凝ったアイデアを提案してきましたが、今回はすべて取り払ってみた感じです。モノクロのカットは予定していなかったもので、一つのアートとしてとらえてもらいたいかな。キャミソールに短パンで、ちゃんと服は着ていますが思いのほかギターが大きかったようで、服が隠れてヌーディーな感じに仕上がっています。最初はどうなんだろうと懐疑的な声もありましたが、カッコイイとなかなか好評です。
――最後に、「ジモンジトウ」は自分への鼓舞でもあると思います。これまで所属していたプロダクションから離れ、自身で事務所を設立したそうですね。まさに、新たなスタートですね。
おかゆ 新曲発売と、また事務所立ち上げでここ数カ月は猛烈な忙しさでした。知らないことも多くて、広いようで狭い世界にいたんだなって。独立は、ファンの皆さんにちゃんと応えたかったというのが一番の理由です。自分が何かしたいと思っても、そう簡単にはことが進まないこともあります。でも、それが個人事務所ならできますし、何より自分で責任を持つということをしたかった。人任せにしないという気持ちで、流しの時代の原点に戻ったという感じでしょうか。
――大変にはなりますが、おかゆさんらしいアプローチが期待できると思うと楽しみです。
おかゆ 若くピチピチのマネージャーも雇いました(笑)。自分が事務所社長でもあるので、長く歌い続けるためにもしっかりと活動していきたいと思っています!
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INFORMATION
おかゆソロコンサート「昭和百年 渋谷のオカユ」
開催日:2025年11月1日
開場:15時30分 開演:16時
会場:SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
2025年6月18 日発売
おかゆ「ジモンジトウ」
〈G線上盤〉

「ジモンジトウ」
作詞・作曲/おかゆ 編曲/船山基紀
c/w「G線上のマリア」
作詞/おかゆ 作曲/J.S.Bach 編曲/斉藤真也
ビクターエンタテインメント VICL-37783 ¥1,500(税込)
〈シブヨル盤〉

「ジモンジトウ」
作詞・作曲/おかゆ 編曲/船山基紀
c/w「シブヨル」
作詞・作曲/おかゆ 編曲/阿部靖広
ビクターエンタテインメント VICL-37784 ¥1,500(税込)
〈桑名盤〉

「ジモンジトウ」
作詞・作曲/おかゆ 編曲/船山基紀
c/w「桑名の渡し」
作詞・作曲/おかゆ 編曲/新田高史
ビクターエンタテインメント VICL-37785 ¥1,500(税込)