おかゆが公開講座。「平成のおんなギター流しと昭和歌謡」をテーマに、おかゆ流音楽論を講義。本物の”流し”に受講生も興味津々!
おかゆ先生が公開講座! シンガーソングライター、作家、音楽番組の司会、ラジオのパーソナリティー、そしてDJとして多方面に活躍する“ギター流し”のおかゆが新たな顔を持つことになった。4月13日、読売・日本テレビ文化センター「よみうりカルチャー川口」(埼玉・川口市)にて、公開講座の講師として「平成のおんなギター流しと昭和歌謡」をテーマに講義を行ったのだ。
「平成生まれの私が憧れる昭和歌謡について、今日はお話したいと思います」
歌手になることが夢だった母に連れられたスナックで、物心がつく頃から演歌・歌謡曲を聴いて育ったおかゆ。渋谷のギャルに憧れ、北海道・札幌から上京したが、17歳のときに最愛の母を交通事故で失った。
「四六時中、演歌・歌謡曲が流れている環境で育ってきましたが、17歳のときに母が亡くなりました。37歳でした。22歳になったとき、歌手になりたかった母の夢を私が叶えるためにギターをもって歌い始めましたが、レパートリーは鳥羽一郎さんの『兄弟船』一曲でした」
スナックで歌い始めたころは“流し”という言葉を知らず、“平成のおんなギター流し”ではなく、“平成の歌謡シンガー”と名乗っていた。
「皆さん、”流し“ってご存じですか? 台所(流し台)のことじゃありませんよ。じつは台所だと思っていたのは私で、流しの意味を知らないまま最初の半年は歌っていました」
受講生の多くが“流し”という職業・存在を知っているが、実際に流しの歌を聴いたことがある人はわずかだった。かつては多くの流しがおり、流しが歌手への登竜門だった時代がある。「北島三郎さん、五木ひろしさん、渥美二郎さんが流しから歌手になられています。藤圭子さんもそうです。でも、いまでは流しをされている方はほぼほぼいません」。
「絶滅危惧種」とも言われる貴重な存在でもある“ギター流し”おかゆは、母の口癖だった「七転び八起き幸せに」を数字に置き換え、流しで出会った7842人と写真を撮って絆を深めることを目標に歌い続けた。目標を達成しても歌手になれなかったら諦めようと各地を回ってきたが、2019年5月1日に「ヨコハマ・ヘンリー」でメジャーデビューを果たした。
公開講座にはおかゆのことを知らない人も参加しており、自己紹介を兼ねて歌手になるまでの道のりを話したおかゆは、流しを通じて得た知見をもとに「おかゆ流昭和歌謡の世界」を講義した。
日本が戦後の暗い時代から高度経済成長を遂げ、豊かさを感じ、そしてバブル景気に沸く80年代後半へと、時代とともに昭和の歌謡界(広義の歌謡曲)の主役は演歌~歌謡曲~フォークソング~ニューミュージック(シティポップ)へと移り変わっていく。
「80年代後半の曲が令和の時代にリバイバルヒットしていますが、日本が暗かった時代から多様化したことが大きいと思います。戦後、日本が復興するにつれて生活が豊かになり、物を消費する社会となっていき人々も明るくなりました。そんな時代に大衆に受け入れられた昭和歌謡曲が令和の時代に受けています」
お客様のリクエストに応じてどんな歌でも歌いこなすのが流しの仕事。机上の音楽理論ではなく、“おかゆ先生”が肌で感じた音楽の世界として、「機械(アンプ)を通した歌にはない、流しの歌の魅力とは?」「演歌と歌謡曲の違い」「流しの衰退とカラオケの台頭」などをテーマに実演を交えて話していく。
▲「圭子の夢は夜ひらく」を歌い分けるおかゆ。上写真はマイクを通し、歌手としてカバーするおかゆ。下写真は流しとして歌うおかゆ
藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」では、マイクを通じた歌唱とマイクなしの歌唱を披露し、「歌手のおかゆ vs 流しのおかゆ」の聴き比べから心に響く音楽を感じ取ってもらっていた。
「機械を通して歌った歌い方と、流しとしての歌い方の違いを感じられましたか。どちらのほうがうまく聴こえました? 心に響いたのはどちらでしたか? 音楽には正解がないので、皆さんおひとりおひとりが感じたほうが正解です」
人の感情、心は目に見えない。だからこそ、その場その場で心に訴えかけるように歌うことが大事だと流しを通じて学んだという。
また、演歌と歌謡曲の違いでは、「幸せ演歌や旅をテーマにした演歌もありますが、多くは『悲しみ』『寂しさ』『侘しさ』がテーマになっています。それが歌謡曲になると『切なさ』に変わります」と、美空ひばりの楽曲を演歌調と歌謡曲調に歌い分け、「演歌は誰もが共感できますが、歌謡曲になると“正解” と“不正解”の幅が広がった」と、メロディが与える印象についても言及していた。
演歌のメロディの運びなどの専門的な話も、実際におかゆ先生がギターを弾いて説明するとわかりやすく、「なぜ、私が『兄弟船』で回ったのか? 3つのコードだけ覚えれば歌えたからです。多少ずれても、悲しく侘しい演歌はなんとかなります!」と笑わせていた。
さらに、酔っ払いに絡まれ理不尽な要求をされたときには、「必ず相手の目をみて、『申し訳ありませんでした! 今日は気持ちよく歌わせていただきました! ありがとうございました! 帰りま~す!』ってダッシュで逃げます」等々、実践編流し講座も。
流しを初めて10年となる今年、おかゆはデビュー記念日の5月1日に新曲「渋谷ぼっちの歌謡曲」(3タイプ同時発売)をリリースする。流しを通じて7842人と写真を撮影するという目標まで残り350人となっており、母の命日でもある4月20日は地元・北海道札幌で7842人を達成する予定だ。
10年をひとつの区切りとして、この新曲でアーティストとしてより大きく羽ばたく気持ちだが、講座の最後に【八起き盤】に収録される「七転び八起き幸せに2024」を歌唱した。
受講生の希望から“おんな流し”として「七転び八起き幸せに2024」を披露したおかゆは、「こうした経験は初めてでした。私なんかが人に何かを教えていいのかと悩みましたが、流しとしての10年を通じて自分でしか経験できなかったことをお話させていただきました。私のことを初めて知った人にも昭和歌謡に興味をもっていただくことができたかと思いますし、今日、この場でしか話せないこともありました。機会があれば2回、3回とまた公開講座をやりたい。皆さんとの温かい時間をまた持ちたいなと思います」と、“講師”としての活動に魅力を感じていた。
おかゆ先生はレコード収集が趣味で、1000枚ほど所有しているという。「昭和の時代のレコードは(CDに比べてサイズも大きく)ジャケット写真も魅力です」と、ジャケット写真からインスパイアされたイメージをもとに歌詞はそのままに作曲した作品も数知れずだという。
「今度はレコードをもってきて、自作の曲と聴き比べていただきたいですね。100枚は持ってきたい」と、おかゆ先生は意気込んでいらっしゃいました。
2024年5月1日発売
おかゆ「渋谷ぼっちの歌謡曲」
(遥かな人へ盤)
(ミッドナイト盤)
(八起き盤)
※各種音楽配信サービスでも5発1日より配信開始