石原詢子が贈る“そよ風”のような心地よさ~新曲「五島椿」で、しあわせなご縁を~
デビュー35周年の石原詢子が届ける新曲「五島椿」は笑顔が咲く作品だ。長崎県の五島を舞台に椿の花が結ぶ、“そよ風”のような心地よさの愛が歌われている。石原自身が五島を巡って作詞・作曲した自身初のシングルとなる。
文=藤井利香
五島列島を旅して
石原詢子自ら作詞・作曲を手掛けたニューシングル「五島椿」。舞台は長崎・五島列島。その一つ、福江島で戦後まもなく発見された銘椿“玉之浦”は、濃い紅色の花弁に白い縁取りという唯一無二の姿で知られ、石原が知人から五島の話を聞くうちに興味を深めていったという。五島の椿を作品の軸にしたいと決めたあとは自ら現地に赴き、地域の人々からも話を聞いて作品に仕上げた。
ゆるやかで、そよ風のような楽曲をめざしたというだけに、かわいらしい艶やかな歌声に乘って、ほんのりとした安らぎを感じることができる。聴いてよし、歌ってよしの「しあわせ演歌」だ。
――新曲「五島椿」は石原さんの作詞・作曲ですが、作品づくりは日頃からなさっているんですか?
石原 そうですね。書き溜めたりはしているんですが、今回はディレクターから「新曲を自分でつくってみるのはどう?」と相談を受け、表題曲の「五島椿」、カップリングの「流れる雲に」のいずれも今年に入って新たに制作しました。アルバムの中ではこれまで2作、シングルでは「逢いたい、今すぐあなたに・・・。」(2011年)と、「千年先まで・・・」(2014年)で作詞をし、アルバム収録の「一途」(2005年)ではメロディーも併せて担当しています。
――「五島椿」に興味を持ち、今年の2月、実際に五島列島に行かれたそうですね。
石原 玉之浦椿で知られる福江島だけでしたが、知人の話やネット検索だけでなく、自分の目で見るべきだと思って行ってきました。五島列島の椿は椿油をはじめお茶、化粧品など様々なものに使われ、地元の人々の生活にすごく密着しています。しかもあんなに可憐な花を咲かすのに、じつは防風林になるほど強い木で、人々の生活を守ってくれているんですね。知れば知るほど魅了され、興味が沸いて、旅先では歌い手である自分を明かさずにいろいろな人に話を聞いてイメージを膨らませました。思っていた以上に人の手の入っていない自然がそのまま残る場所で、この歌を通じて五島列島、そして五島椿の存在を多くの人に知っていただけたらいいなと思っています。
聴く人が笑顔になれる
――「五島椿」は石原詢子にとって真骨頂である、待望の“しあわせ演歌”とのことですが、聴いて笑顔になれる作品にしようと思った理由は?
石原 紅白でも歌った「みれん酒」(1999年)はしあわせ演歌ではないですが、メジャーの明るい楽曲がハマったことで、その後しばらく近い路線の曲調の作品が続きました。でもあるとき、このままだと石原詢子のカラーから抜け出せなくなるのではと感じ、ここ10年はいろんな楽曲を歌って自分を試してきました。
そのチャレンジがあったうえで改めて思ったのが、メジャー演歌が自分に合っているんだなということ。ファンの方からもそろそろ“しあわせ演歌”が聴きたいという声をいただき、久しぶりに今回の曲づくりへとつながりました。
それも、シンガーソングライター・古内東子さんにつくっていただいた前作の「ただそばにいてくれて」と、昨年の配信シングル「予感」があって、その流れでの“しあわせ演歌”にすることを意識しましたね。どちらかというと、歌謡曲やフォークっぽいエッセンスの入った曲をつくりたかったんです。
――この人と生きていきたいと願う恋の歌ですが、1番から3番の歌詞それぞれに出てくる“縁結花(むすびばな)”という言葉がとくに印象的です。
石原 “縁結花” は私のつくった造語です。好きな人を想う気持ちを歌にすると同時に、今回、五島の歌を歌うことになったのも縁だったと思うんですね。縁を結んでくれたのが五島椿であり、そんな幸せな縁を表現できたらという気持ちも強かったですね。
また五島列島はかつて隠れキリシタンが多くいた場所でもあります。そんな歴史から島内には教会も数多くあって、どこか西洋文化の香りが漂っています。そんな異国のテイストを入れたいと、歌詞の中に“教会(ここ)”と入れたりもしました。
五島でコンサートを実現したい
――メロディーは自然に浮かんできたんでしょうか?
石原 これが不思議なくらい、さらさらっと出ました(笑)。編曲の若草恵先生には、イントロにキラキラとした島の様子と、雨風を防いでくれる椿の強いイメージを添えてほしいとお願いさせていただきました。異国情緒を出すためにポルトガルギターやパンフルートを使って、優しさや懐かしさを出していただき、想像を超えるアレンジにとても感動しましたね。うれしかったです。
――交流された地元の方々が、この曲を心待ちにしているのでは?
石原 市長さんをはじめ、多くの方が喜んでくださっています。現地でコンサートをするのが一つの夢ですね。断崖絶壁が多く、コバルトブルーの海があって。砂浜につくった特設ステージなどで歌えたら最高です!
――カラオケで歌う際のアドバイスなどをお願いします。
石原 前半は、波に揺られているような感じで語るように入ってください。また、1~3番それぞれにある“五島椿は 縁結花”は決め文句ですので、体をパッと開放するような感じで大らかに歌ってほしい。最後の“恋の花”の部分も、かわいらしく決めてほしいですね。
「“ふわり ぽっかり”が決め手です」
カップリング曲「流れる雲に」も、「五島椿」同様に石原詢子が曲づくりから担当。幼少の頃から空を見上げて雲を見るのが好きだったと言い、その雲を健気な恋心に例えた心がほっこりする作品である。本人も気に入っているというサビの部分は、頭の中で何度もリフレインしそうなほど印象的で耳に残る。
――カップリングの「流れる雲に」も石原さんの作詞・作曲です。
石原 小学生の頃から雲の観察が好きで、今も飛行機や新幹線での移動中ずっと雲を見ていられるくらい好きなんです。この歌は、ランドセルを背負ってリコーダーなんか吹きながら下校するとき、「なんであの子と喧嘩しちゃったんだろう」と半べそをかきながら空を見上げた、当時の思い出を今の私に置き換えてつくりました。雲ってくっついたり離れたりしますよね。歌詞の冒頭の“ふわり ぽっかり”が決め手です。友人との関係でもいいし、もちろん恋人や親子とか夫婦、兄弟でもいい。いろんな人とのつながりを歌にしたいなと思いました。
――動く雲をゆっくりと眺めるなんて、ステキなことですね。
石原 季節ごとにいろいろな雲があって、例えばいわし雲に夕日があたって輝いている光景など、すごくキレイです。都会だって十分見ることができ、とくに季節の変わり目がおススメです。ぜひ空を見上げて雲の動く様を楽しんでほしいな。
歌詞の中に“流れる雲に身をまかせ”という言葉がありますが、ここがサビで、メロディーは自分でもすごく気に入っています。しょっちゅう口ずさんでいるくらいです。カラオケでも気持ちよく歌えると思います。また“ふわり ぽっかり”の部分は2回出てきますが、最初は語るように、そして2回目はしっかりと声を出し、それぞれ雰囲気を変えて歌ってください。
癒やしのメッセージソング「予感」
今回発売のCDには、ほかに昨年自身初の配信シングルとしてリリースされた「予感」も併せて収録されている。この曲は28年前に発売されたアルバム用に書き下ろされたもので、昨年の配信時にニューボーカルバージョンとして生まれ変わった。今回、CDに3曲が入っており、デビュー35周年記念シングルとしてお得な1枚となっている。
――カップリングとして収録された「予感」についてですが、一日の疲れを癒してくれるような歌詞が並び、曲調もすごく優しく清らかです。男性の方などに改めて聴いてほしいですね。
石原 「予感」は当時、ニュース番組のエンディングテーマに採用されたんですが、夜、サラリーマンが疲れて家に帰ってきて、「頑張りすぎないでね。私が包み込んであげるからね」と励ますような曲です。ここ数年はコロナ禍で多くの人がストレスを貯めるような生活を強いられました。だから「大丈夫ですか? 焦らずのんびりいきましょうね」というメッセージソングとしてちょうどいいと思い、カップリングとして収録に至りました。こちらも併せて楽しんでいただけたらと思います。
2023年5月24日発売
石原詢子「五島椿」
「五島椿」は2023年、デビュー35周年の記念イヤーを迎えている石原詢子 待望のしあわせ演歌。美しくも優しさに包まれた長崎県五島を舞台に、椿の花が結ぶ愛の絆が描かれている。聴いて歌って笑顔咲く作品だ。カップリング曲の「流れる雲に」は、一途でけなげな恋心を、空を流れる雲に例えた、心がほっこりする作品。2曲とも石原が「いとう冨士子」名義で作詞・作曲した。石原自身の作品がシングル(表題曲)としてリリースされるのは、今回が初となる。
もう一曲のカップリング曲は昨年、デビュー記念日である10月21日に、自身初の配信シングルとしてリリースした「予感」(自身の28年前の作品をセルフカバーしたニューボーカルバージョン)を収録。「CDとして作品を持っていたい」というファンの要望に”お楽しみ”として収録した。ジャケット(表紙)にあえて「予感」のタイトルが表記されていないのはそのため。「予感」のオリジナル・カラオケもCD初収録となり、お得な一枚となっている。
ちなみにジャケットのデザインには石原自身もこだわったという。衣裳は大正ロマンの雰囲気をイメージして縦縞の着物を準備し、帯や帯揚げなどには”椿”が描かれている。「かんざしも椿なんですよ。新曲のおかげで、椿の雑貨も集めるようになりました(笑)」(石原)。
「五島椿」は音楽配信サービスからも配信される。
▼ダウンロード、ストリーミング再生はこちら
https://LGP.lnk.to/5VsqvR
ペンネーム「いとう冨士子」は亡き母の名前?
Q 石原さんの作家名は「いとう富士子」ですよね。お母様の実名とか。
Junko そうなんです。父と母、ともに亡くなってからもう28年になります。詩吟家元の家元だった父の雅号(石原源風)は、20周年の記念アルバム『デビュー20周年記念スーパーシングルコレクション 源風』の制作の際に残しています。取材でも父の話はこれまで何度もお話してきましたが、母は常に家族を支える陰の存在だったので、生きた証を残してあげたいなと思い、母の旧姓である「いとう富士子」をペンネームとしています。
profile
石原詢子(いしはら・じゅんこ)
1968年1月12日、岐阜県生まれ。詩吟揖水流(いすいりゅう)家元の長女として生まれ、4歳から父の意向で詩吟を習い始める。小学生の時、「津軽海峡冬景色」を歌う石川さゆりを見て、歌手への夢を持つ。高校卒業と同時に上京、アルバイトをしながら歌や芝居のレッスンを行い、1988年10月21日、「ホレました」でデビュー。1994年、「三日月情話」が第27回日本作詩大賞優秀作品賞を受賞し、翌1995年の「夕霧海峡」がヒット。1999年には「みれん酒」がロングヒットし、翌2000年の大みそかに『NHK紅白歌合戦』初出場。
2007年、故郷・岐阜県の「飛騨・美濃観光大使」に就任。2011年のシングル「逢いたい、今すぐあなたに・・・。」では、亡き母の旧姓「いとう冨士子」名義で作詞に初挑戦した。2018年、デビュー30周年記念リサイタルを開催。また、詩吟揖水流詢風(じゅんぷう)会を発足させ、詩吟教室を設立。家元・石原美風(いしはらびふう)として詩吟の普及に務める。
2022年10月21日、デビュー記念日に自身初の配信シングル「予感」をリリース。2023年5月、自らが作詞作曲した「五島椿」をリリース。同月、「五島市ふるさと大使」と「新上五島町観光物産大使」に就任した。2023年は10月24日に「ホテル 東京ガーデンパレス」でディナーショーを開催するほか、好評のカバーライブも実施予定。詳細は石原詢子公式ページをチェック。プライベートでは2020年7月から兄妹猫の「だいず」と「きなこ」を飼育。昨年末には新しい家族として「あずき」(だいず&きなこの妹猫)を迎え入れた。
石原詢子オフィシャルサイト
石原詢子「五島椿」特設サイト
公式YouTubeチャンネル「詢ちゃんねる」
オフィシャルブログ〜詢子のひとりごと~
石原詢子 公式Instagram
石原詢子 公式Twitter