感謝を胸に――みやま健二、20年目の“俺のみち”

2020.10.05

精悍なスタイルで勇壮に歌い上げる、みやま健二の「太鼓男祭り」が話題だ。みやまの記念すべき歌手デビュー20周年記念曲として8月19日に発売されたこの曲は、オリコンの演歌・歌謡シングルランキングで初登場6位（2020年8月31日付）を記録した。

再び息を吹き返した「歌手」という夢

みやま健二は、ずっと歌手になるのが夢だった。10代の頃に一度挑戦しようとしたこともあったが、厳しかった父親の猛反対もあり断念。さまざまな仕事を経験しながら、毎日を生きてきた。

しかし、歌手になるという夢を捨てたわけではなかった。

京都で作詞家の古賀けん氏と出会い、なんとしても「一生に一曲でも自分の歌がほしい」という夢をかなえたいと頼み込んだ。みやまのそれまでの人生がそのまま詞となり、そこに古賀氏の友人だった、作曲家であり歌手としても活躍する美樹克彦が曲をつけてくれることになった。

そうして完成した「男のみち」。人生の記念にとお願いした1曲。感動した。上京して、立派なスタジオでの初めてのレコーディングに臨んだ。もう、自分の中ではそれで十分満足していた、はずだった……。

――オリジナル曲「男のみち」を作っていただいた、その時の気持ちはいかがでしたか。

みやま　オリジナルで１曲でも自分の歌ができたことが本当に幸せで、僕自身はもうこれ以上のことはないという思いだったんです。でも、そのレコーディングの時に、美樹先生から「せっかくだしもったいないから歌手やってみない？」というまさかのお声がけをいただいて、その気になってしまいまして……。美樹先生は同郷で、ずっと憧れの人でしたので、美樹先生の曲でデビューさせていただけるならば、一度真剣に夢だった歌手に挑戦してみようと決意しました。

――当時のみやまさんは会社の経営者として、息子さんとともに二人三脚で仕事をこなしながらの歌手活動を行われていたんですよね。

みやま　息子と会社を作って、二人でがんばりながら歌手活動もしていたんですけど、ある時、息子が「お父さん、もう大丈夫だから」と会社を引き継いでくれました。そこからは息子に任せ歌手一本で、恵まれた環境で歌の道に没頭してきました。

――今回の新曲「太鼓男祭り」は、みやまさんのデビュー20周年記念シングルということですが、これまでの20年を振り返っていかがですか。

みやま　デビューして20年、振り返ってみると長いようで短い20年だったと思います。2012年に活動拠点を故郷の京都から大阪に移しまして、この８年間は今の事務所に所属させていただいて、ずっと充実した歌手活動をさせていただいてきました。子どもや5人いる孫たちも、今こうして歌手として頑張っているのを誇りに思うと言って応援してくれています。本当に感謝ばかりの毎日です。

――そして、20年の節目にレーベルもテイチクエンタテインメントに移籍され、第一弾シングルとなります。実在のお祭りを題材にした、威勢のいい祭り歌ですね。

みやま　四国三大祭りのひとつで、秋の豊作を祈って行われる愛媛県・新居浜の「太鼓祭り」を歌っています。絢爛豪華な祭りらしいですね。歌詞にあるとおり、「いつも帰ってこない息子たちでもこの時ばかりは戻ってくる」というお祭りらしいんでね、僕もその意気込みを実際にこの体で味わって、一緒に盛り上げたいと思っていたんですけど、今年はコロナ禍で中止になってしまいました。残念です。この曲が発売されて、すぐにSNSなどで新居浜の各団体さんからのリクエストや「この歌で頑張ってください」という温かいメッセージをとても多くいただきましてね。それから皆さんとお付き合いさせていただいているんですが、来年は本当に新居浜の祭りにうかがいたいですね。

――けんか祭りとしても日本三大祭のひとつだそうですね。「太鼓男祭り」の3番の歌詞には“男の見せ場に　飛び交う熱気　力をぶつける　かきくらべ”とあるように、激しいぶつかり合いなどもあったり……。

みやま　この祭りの最大の見どころは、山車の“かきくらべ”です。初めて詞をいただいて読んだ時、“かきくらべ”の意味がわからなくて調べました。太鼓台と呼ばれる山車みたいなものがあって、複数の太鼓台が一カ所に集まるのですが、「かき夫」と呼ばれる男たちがその太鼓台を持ち上げて、技を競い合うんです。持ち上げる時よりも下げる時にバランスが崩れることが多いようで、人が亡くなられたりすることもあるんだそうです。太鼓台同士でぶつかり合ったりもするらしいんですが、それがけんか祭りと言われる所以でもあるんでしょうね。