木川尚紀、待望のセカンドシングル「下手くそな生き方だけど」~僕そのまんまの生き方で、目の前の目標をひとつずつ~
2019年、「農家の息子、畑から獲れたて野菜のような新人歌手が生まれました!」というキャッチフレーズとともに、演歌界に現れた新星、木川尚紀。その確かな歌声と、曇りのないまっすぐな人柄に、多くのファンが惹きつけられた。
そんな彼が今回発表したのは、不器用にしか生きられない主人公を、昔話の「うさぎとかめ」にたとえて歌う「下手くそな生き方だけど」。うさぎのように器用に生きられなくても、かめのように一生懸命頑張ればいつかは強くなれるというメッセージは、生きづらさを感じている人々の背中をそっと押してくれるだろう。
「新曲はまさに僕そのまんま」
――新曲「下手くそな生き方だけど」をもらった時の第一印象を聞かせていただけますか?
木川 この曲をいただいた時はまず、「これはまさに自分だな」と思いました。僕自身、いろいろな場面でぎこちないところとか、うまく言えなかったりすることが多々あるんですよね。不器用というか、何をやるにしても、どうも素直にうまくいかないっていうか。そういう意味でも、「下手くそな生き方だけど」っていうタイトルが自分にすごく合ってるなと思いました。いつも一緒にいるマネージャーさんや、昔からいる友達にも、「今回こういう曲なんだよ」っていうことを伝えたら、「そのまんまだね」と言われました(笑)
――レコーディングはいかがでしたか?
木川 まずレコーディングが始まる前に、作詞の田久保真見先生に、「木川くん、生きてることがつらい時ってある?」って聞かれて、「あります」って答えたんです。そうしたら、「人間誰しも、生きてればつらくなることはあるけど、そんな人を元気づけられる歌を歌ってほしい。頑張って歌ってね」と言っていただきました。レコーディングは緊張しましたね。スタジオに入ったらミュージシャンの方がチューニングをしていて。その音を聴いたりしていると、「今から自分が歌う曲をレコーディングしてくださるんだ」っていう喜びと、「もししくじっちゃったらどうしよう・・・」ってドキドキしました。
――緊張のレコーディングだったんですね。それまではどういった練習をされましたか?
木川 前作(デビュー曲)の「泥だらけの勲章」をもう一度聴き直して、「自分はこういうふうに歌ってるんだな」と、歌い方を見直したりしました。でも、自分の声って、自分で聴くとよくわからなくなっちゃうんですよ。だから、自分が歌っている曲だけど、第三者の立場として歌を聴いて、「ここがちょっと伸びてないな」とか、逆に「練習しててここが伸びるようになったかな」と考えながら聴きました。知らない曲を初めて聴いた時の第一印象ってすごく重要だと思うんです。だから、自分の曲も”木川尚紀”という、ひとりの演歌歌手の曲として聴くっていうのを大事にしています。
新曲のためにダイエットを決行!
――そのほかにも、新曲を出すにあたって準備していたことなどはありますか?
木川 実はこの曲を出す前に、事務所から「痩せなかったら、新曲出さないよ」と、ダイエットを命じられまして、必死でダイエットをしました。少し前まで、ヤマト運輸で運送の仕事もやっていたんですが、その仕事で体重が自然と10キロぐらい落ちたのと、そこからは、運動と食事制限を中心にやって体重を落としました。運送の仕事をしていた時期を含めると、約1年ぐらいダイエットしていました。
――それはすごい! ダイエットの成功の秘訣はなんだったんでしょうか?
木川 どちらかというと結構自分に甘えちゃうタイプなんです。「今日はいいかな」とか、「ここまではやらなくていいかな」なんて思う時もあるんですけど、そこが自分のいけないところだなと思いなおして。それでもなかなか上手くいかないので、花岡先生の写真と、ディレクターさんの写真を印刷機で引き伸ばして、自分の歌を練習している部屋に貼りました。誘惑に負けそうになったら写真を見て、「あっ! すみません! やらなきゃ!」みたいな感じになるかなと思って(笑)
――それはかなり効きそうですね(笑)。食事などにも気をつけていたんですか?
木川 そうですね、今までは何でも食べていたんですが、まずはサラダから食べるようにしたりとか、鶏むね肉を買ってきて調理したりとか、野菜中心でなおかつ高タンパク低脂質なものを選んで食べるようにしていました。自分の体が商売道具だからというのはもちろんですが、いきなり倒れちゃったりしたら、それはそれで仕事ができなくなってしまうので、ダイエットと並行して体調管理や、体のメンテナンスをきちんとできるようになりたいと思いました。
育ててくれた祖母に「ありがとう」
――歌詞に、昔話の「うさぎとかめ」がキーワードとして出てきますが、木川さん自身はどちらに似ていると思いますか?
木川 亀ですね。うさぎはなんでも器用にトントンいくタイプだと思うんですけど、僕はひとつのものをクリアしないと、次に全然進めないタイプなんです。あっちをやりながらこっちっていうふうには、なかなかできないんですよ。なので、やっぱり目の前の目標をゆっくり、ひとつずつ確実にクリアしてくっていう意味では、この曲の通り、亀に似ているんだなと感じました。
――新曲「下手くそな生き方だけど」にはその昔話をばあちゃんに聞かせてもらったという場面もありますが、祖母との思い出はありますか?
木川 先日、祖母が入院した時に家の中の物を整理していたら、そこらじゅうから封筒がたくさん出てきて。「何だろうこれ?」と思って、封筒を開けて見たら祖母が書いた手紙が入っていたんです。それでよくよく考えてみると、僕は4歳の時に母が亡くなり、それからは父と祖父母に育ててもらっていたんですが、小さい頃は父が仕事でいない夜なんかもあったんです。そんな時、よく祖母が書いた手紙を読んで聞かせてくれたことを思い出しましたね。
――素敵な思い出ですね。印象的だったお手紙などはありますか?
木川 いちばん印象に残ってるのは、僕がデビューした時に祖母が書いてくれた手紙です。デビューのきっかけになった茨城県小美玉市での、「小美玉発!スター★なりきり歌謡ショー」のDVDを祖母が見て、それで僕に当てて手紙を書いてくれてたんですね。「ばぁ(祖母)は、尚紀のこうした姿を初めて見ました。ばぁはもう何も思い残すことはありません。尚紀は頑張ってください」という感じの言葉が書いてあって。今までは、口に出して「ありがとう」と言うのがなんとなく恥ずかしいというのがあったんですが、その時は素直に「ありがとう」って言えました。だから、やっぱりおばあちゃんが出てくるような曲を歌うと、より気持ちが入る気がしますね。
傷だらけの石ころが持つ輝き
――カップリング曲「石ころ純情」はどんな曲でしょうか?
木川 「下手くそな生き方だけど」とは、ガラリと印象が違う、リズム感のある曲ですよね。かっこいい人とかイケメンな人って、どこのクラスにもやっぱり1人か2人はいると思うんですけど、この曲の主人公はどちらかというとあまり目立たない存在。でも、そんな中でも、本当はかっこいい人には負けないくらいの輝きを持ってるんだっていう思いを、石ころに例えて歌っています。青春学園ドラマ風の曲になってます。
――”カッコいい男に なれなくても 心で俺は 勝負する”という歌詞など、とてもストレートにメッセージが伝わってくる曲ですよね。
木川 そうですね。それと、この曲もやっぱり最初のワンフレーズが、もう僕そのまんまなんですよ。”カッコいいスーツが 似合わなくて 鏡の前で 苦笑い”という歌詞もありますけど、本当にそうで。ジャケットの写真でスーツを着ることになって、家に持って帰って羽織ってみたんですが、思わずフフって笑っちゃったんですよね。「本当に似合ってんのかな、これ」って(笑)。かっこいいスーツが似合う男になりたいなぁなんて思ったりしました。
歌手として歌声を全国に届けたい
――ちなみに木川さんにとって”カッコいい男”というと、どんな方が思い浮かびますか?
木川 僕の中での”カッコいい男”というと、菅原文太さんと高倉健さん。めちゃくちゃ渋くてかっこいいですよね! 昔の映画のビデオテープが家にあって、父の影響でよく見ていたんですが、その中でも菅原文太さん『トラック野郎』シリーズや、高倉健さんの『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』などが好きでした。ビールを飲む姿だったり、ご飯を食べる姿だったり、そういう何気ない所作に男らしさがにじみ出ていて、すごく憧れましたね。
――おふたりとも、歳を重ねてからも本当にカッコいい俳優さんでしたよね。木川さん自身は、今後どうなっていきたいなど、目標はありますか?
木川 今まではヤマト運輸で全国に荷物を届けてましたけど、今度は歌手として自分の歌声を全国に届けていきたいです。そうして、たくさんの方に木川尚紀の歌を知ってもらい、カラオケで歌っていただきたい。そのためには、一つひとつ、きちんと目の前にある目標をクリアして、今できることを一生懸命やっていきたいなと思いますね。同時にテイチクサムライの活動も、ほかの先輩方にご迷惑をかけないよう頑張っていきたいです。それこそ自分がこれ以上太ったら、もうサムライじゃなくなっちゃいますから(笑)。歌手としてデビューしたから安心ってわけじゃなく、デビューしたからこそ、そこからまた大切なものを見つけていかないといけないと、改めて思っています。
(文=鳥嶋えみり)
2022年9月21日発売
木川尚紀「下手くそな生き方だけど」
器用に生きられず、葛藤を抱えながらも懸命に頑張る主人公。そんな時に思い出すのは、昔話をしてくれた祖母や、故郷にいる思い人”あの娘”の存在だった・・・。木川尚紀のセカンドシングル「下手くそな生き方だけど」は、生きづらさを感じるすべての人へ届ける応援歌だ。「主人公が故郷にいる”あの娘”を思い出して、頑張ろうと思う歌詞がありますが、僕は中学生の時に好きだった初恋の人を思い浮かべながら歌ってます。部活をしている時に時々見かける、テニス部の女の子でしたね」(木川)。カップリング曲は「石ころ純情」。着飾った宝石になれなくとも、傷だらけの石ころにこそ輝きがあるというメッセージが、エレキギターによる小気味よい伴走に乗せて歌われている。「『石ころバンザイ、バンザイ石ころバンザイ』という部分はリズムに乗って歌えましたし、みなさんが聴いた時にも盛り上がっていただけると思います」(木川)
Profile
木川尚紀(きがわ・なおき)
1997年11月17日、茨城県生まれ。4歳の時に母を亡くし、その後、父と祖父母の影響で演歌に興味を持つようになる。学生時代は野球部に所属し、部活一色の学生生活を送っていたが、高校を卒業後、親孝行をしたいという思いから、かねてより持っていた演歌歌手になる夢を叶えるため、地元のカラオケ大会などに出場。数々の好成績をおさめ、2016年と2019年には「小美玉発!スター★なりきり歌謡ショー」で優勝と準優勝を獲得した。同大会で、作詞・作曲家の花岡優平氏に出会い師事。2019年、「泥だらけの勲章」でデビューを果たす。テイチクレコード所属の若手演歌歌手たちによって結成された「テイチクサムライ」のメンバーとしても活動し、最近ではその確かな歌唱力と、親しみやすいキャラクターが認められ、NHKの音楽番組『新・BS日本のうた』に連続で出演した。「リフレッシュしたい時には、いつも地元の湖や海に、愛犬を連れて出かけたり、運動をしに行ったりしています!」(木川)