叶純子がデビュー40周年の宴を開催。山川豊や黒木じゅんなどに祝福され、「歌い続けられるかぎり歌の道まっしぐら」
叶純子が4月1日、東京・杉並区の座・高円寺2で「追悼・恩師 鈴木淳先生を偲んで 叶純子 デビュー40周年コンサート」を開催。多くのゲストが華を添えるなか、40周年を振り返る作品などを熱唱し、会場に詰めかけた満席のファンと濃密な時間を過ごした。
幼少の頃から歌が好きだった叶は、故郷・山口で美容師見習いをしながら、カラオケ喫茶で歌謡曲を歌うことに夢中になっていた。だが、歌手になれるなどとは夢にも思っていなかったという。ところが、ある日出場したカラオケ大会で優勝したことがきっかけとなり、作曲家の鈴木淳氏にスカウトされ上京を決意する。憧れの歌手だった八代亜紀のヒット曲を手がける鈴木氏からの「君は変わった声をしているね。今、黒木憲のデュエット相手を探している」という言葉に人生をかけた。
1981年、叶は1年間の厳しいレッスンののち、黒木憲&NANCYとして「粋な夜」でデビュー。翌1982年には叶純子として「酔いどれ涙酒」でソロデビューを果たした。
2013年の勝負曲「能登の雪夜叉」で登場した叶は、「35周年記念のコンサートもこのステージに立たせていただきました。コロナ禍の大変ななか、ようこそお越しくださいました。最後までいてくださいね」と観客に呼びかけると、デビュー曲「酔いどれ涙酒」、「おんなの夜明け」、「愛は腕の中」、そして昨年発売した新曲「あぁ・・・大阪」のカップリング曲「愛しき人生」などを披露した。
「40年はあっという間に時間が経っちゃった」。そう語る叶に、司会の青空キュートが「結婚でたとえると、40年はルビー婚。純子さん、結婚の予定は?」と話を振ると、「バツイチですが、結婚の予定はまったくございません。もう懲り懲り。ヒモ? ヒモもいりません。もうたくさんいますから」と観客を笑わせていた。
シンデレラストーリーのような歌手デビューだったが、じつは上京する際、叶には離婚した夫との間にひとり娘がいた。家族は上京に反対だったが、娘を姉夫婦に預けての決断だったのだ。鈴木氏からは「つらいことは口に出すな」と言われたが、上京してから3年間は涙、涙の毎日。故郷に残してきた娘のことを一瞬たりとも忘れたことはなかったという。
「君はプロの作曲家にスカウトされたんだ。俺を信じるんだ」と励ましてくれた恩師・鈴木淳氏は、昨年12月、虚血性心不全で亡くなってしまったが、先生の言葉を信じてよかった。今では娘との離れ離れだった生活も思い出のひとつとなった。
40周年記念コンサートの会場が決まったのは3カ月前だった。ドタバタと準備を進め、開催にこぎ着けたが、そんな叶の記念日を盛り上げようと、多くのゲストが駆けつけた。
なかでもサプライズゲストとして登場した黒木憲のご子息でもある黒木じゅんとは、デビュー曲「粋な夜」をデュエット。ステージ上のスクリーンには懐かしい写真も映し出され、観客を楽しませた。
また、所属した長良プロダクションの1年先輩にあたる山川豊も仕事先の宮城県から急ぎ祝福に駆けつけ、黒木憲の大ヒット曲「霧にむせぶ夜」を“黒木ジュニア”と一緒に披露し、豪華な組み合わせで観客を酔わせた。
「純ちゃんらしいよ。相変わらずやってますね。自分の40周年記念コンサートなのに、オープニングから滅茶苦茶じゃない?」と、山川は曲出しのミスがあったこと笑いに変えると、「夜中の2時頃、電話がかかってくるんですよ。しかも酔っ払ってるから何言っているのかわからないし、この前なんか『鳥羽一郎さんですか』だって」と、叶とのエピソードも。昔も今もずっと変わらない性格で、誰からも愛される存在だと叶を持ち上げた。
コンサートの後半は、恩師・鈴木淳氏を偲んだ。憧れの歌手・八代亜紀が歌った鈴木氏の大ヒット作品「なみだ恋」「ともしび」をバンド演奏で聴かせると、欧陽菲菲の「雨の御堂筋」、オリジナル曲「夢迷子-同床異夢-」、「酒場と云う名の船着場」などをハスキーボイスで響かせた。「夢迷子-同床異夢-」は秋元順子の「マディソン郡の恋」などを作詞・作曲した星桂三氏の作品。編曲は秋元氏をNHK紅白歌合戦に送り込んだ「愛のままで・・・」を作詞・作曲・編曲した花岡優平氏が手がけた。
「酒場と云う名の船着場」は兄弟子・沢木栁が1985年にリリースした恩師・鈴木氏の作曲作品だったが、「ずっといい歌だなと思っていた」叶が新曲「あぁ・・・大阪」のカップリング曲として収録。この話に、沢木も昨年再リリースを決め、競作という形で復活させた楽曲でもあった。
芸道60周年を迎えた北島三郎の全国公演に長年出演していた経験を持つ叶は、コンサート終盤、北島の大ヒット曲「風雪流れ旅」や、最新曲「あぁ・・・大阪」をもう一度披露するなどしてフィナーレを迎えた。
「あぁ・・・大阪」はシンガーソングライター・しいの乙吉の作品。東京生まれの女が惚れた男と大阪で暮らす甘い夢をみる物語で、叶の3年ぶりの新曲として、またソロ活動40周年の勝負曲として、昨年10月にリリースした。
昨年12月に亡くなった恩師・鈴木淳先生のためにも、ファンのためにもこれからも叶純子は歌の世界をまっしぐらに進む。歌い続けられるかぎり・・・。
なお、40周年記念コンサートには他にも沢木栁、今年40周年を迎える桂竜士、俳優と歌手の二足のわらじを履く三夏紳、シンガーソングライターのしいの乙吉、元SKD(東京松竹歌劇団)の松浪伽乃里らも出演した。花園直道が立ち上げたJPN dance 協会でトレーナーも務める松浪は今年65周年。踊りで叶のステージを祝った。
また、昨年テイチクへ移籍し、「許さないで…ねぇ」がロングヒット中の葉月みなみもステージに上がった。叶が今、イチオシの歌手としてステージに呼び込み、紹介したのだ。葉月のプロデューサーである岩尾三四郎氏が長く長良グループの顧問を務めていたことから、岩尾氏は叶のことはデビュー時から見守っていた。そうした縁もあり、叶は葉月のことを知り、その実力にも気づき将来を期待しているという。ステージで叶のファンに紹介された葉月は「叶先輩に倣ってこれからも頑張っていきます」と語っていた。